四十四A生目 筐体
色々試してみてわかったことは意外と条件はクリアしているということ。
この迷宮は生きている魔物達が全員といっていいレベルで機械……無機物生命体だ。
生態系を築き擬似的な魂みたいなものを宿しているあたり生命体でいい。
特徴として生物のように繁殖しながら肉体に精神が……魂が依存していないことが特徴である。
じゃあどこにあるのか。
巨大なネットワーククラウドサーバーだ。
そうネットワークが存在する。
常時接続状態で稼働しつづけている。
たくさんの魂がクラウドサーバーに保存されそこから肉体を操るという不思議な形態になる。
争いに破れて肉体が破壊されたあとに新たな身体を得て復活するんだよねえ。
ちなみに無機物生命体を生む工程は有機物と似てて復活は復活工場みたいなものがある。
そこは置いといて。
つまるところインターネットみたいなものを繋げられるほどに技術的インフレを起こしている。
ただ有機物生命体のような文化のいくつか……音楽とか家とかが未発達。
必要を求められて適応進化する道筋が違うんだろう。
だが私達にはそこが有用だ。
彼らの電子パーツ1つ貴金属1つが未知の宝になる。
なお機械に疎い者たちしかいないためそういう真価に気づくのはまだ先。
普通に戦っていたら細かな電子部品はこわれちゃうんだもの。
まとめてスクラップとして扱われがちだ。
あと冒険者たちはここでは結構狩りをする。
普通の冒険者たちは相手の命を奪う狩りはそこまでせず撃退を主軸に置いている。
生態保護のためだ。
しかし機械たちは生態が復活前提なため生態もなにも保護しなくてもむしろ油断すると増えすぎる。
なのでしょっちゅう冒険者ギルドは討伐して全身の持ち帰りを推薦していた。
ウサギ型無機物生命体タスクとか虫の群れみたいな無機物生命体バグあたりはしょっちゅう大発生する。
テツハリと呼ばれている序盤エリアにいる数は少ないが強い群れを生むのが私と同じホエハリ一族の派生型だ。
彼らの部品は今もせっせと作られている。
生態部品や魔導部品は結構あるものの純粋な電子部品も少なくない。
今回はそこにようがある。
タッチパネルを操作して必要そうな部品を取り寄せる。
今目の前で補助AIが仮組みを仮想世界でやっていてくれるのだ。
私が思いつきてあれこれするものの中から最適を探してくれている。
AIの特徴というか利点は膨大な試行回数。
今私が求める方向性を打ち出し出来そうな組み合わせをバンバン試している。
ええと詳細を見るに10分間に65535回やっている。
さらに試行のやり方を学習することで加速アップデートを測っているようだ。
メチャクチャ優秀だなあ……
ただAIの難点というか見るからに意味ないだろみたいな組み方も全部やるので回数の割に進まなかったりする。
私は私で人力で最適な組み合わせを見つけないとね。
こっちは経験をもとにして頭の中でまずそれなりに考える。
それを手元の出来る範囲でただしい組み合わせの再現をしていく。
仮想ならばどれだけでも失敗できる。
私が目指しているのは……記録して出力するというシステムだ。
ハードウェアの部分。
キュウビ博士は忙しいだろうしそもそもこういう趣味に巻き込む気はない。
これは私の趣味なのだ。
じっくりやっていこう。
「できた……」
いやできちゃったよ。
完成は無理でしょ(わら)ぐらいの勢いで始めたのに……
どうやら今の鋼鉄の迷宮と私の余暇パワーは凄まじかったらしい。
とはいっても出来たのはでっかい筐体である。
中身……ソフトウェアは無いので現状繊細な箱。
ソフトウェア開発とかはまずパーソナルコンピュータの開発がいるんだよなあ……
でもこの1箱が出来たということは夢のマシーンパーソナルコンピュータの誕生も近い。
そもそも私が迷宮管理に使っているハイテク品という参考はあるんだ。
魔法的な導線も参考に見れる。
私の思い出し前世とこの世界の代物って結構差があるからその差をどう埋めるかは結構だいじな課題。
意外とこの絶妙な差異が大きいんだよねえ。
だからこそ筐体できただけで奇跡を感じれたし。
「じゃあ、あとの試作、それにパソコン機能の開発、よろしくね」
モニタにGoodByeと表示され消える。
あとはこれで大丈夫と。
さてあとはどうするかな……
外に出れば夕方。
アノニマルースの町並みに沈む景色は美しいなあ。
そう計算して作っているらしいけれど。
たまたま通りがかったのは立派な豪邸……いやむしろ神殿。
ここはとある神の住まいだ。
いや本当にリゾート地感覚で住んでる。
私が中に入りちらっと見てみたらしっかりと犬のような神……ナブシウがいた。