四十三A生目 試行
イタ吉とハードな訓練をした。
偶にこうやって全身を追い込まないと出ない力がある。
全身ズタボロになり疲れながらふたりで水をあびる。
「はぁ〜……! 生き返る」
「今日は俺の勝ちだな……」
「うぇいうぇい」
「最後の差しが決まったな」
「途中まで運びが優勢だったんだけどなぁ」
「なんか読みがお前、未来読んでるレベルになってねえ?」
「そう?」
騒がしく水浴びし回復して傷を癒やす。
それにしてもイタ吉に負けたな……
いや訓練の勝ち負けだなんてどのタイミングで痛打が入るかどうかってものでの1本でしかないけれど。
意外と私は訓練の時みんなに負ける。
そのみんなから言わせれば『戦いになるとローズに勝てない』らしいが。
まあ全力でやっていいのと何してもいいは別だよね。
ただ訓練で負けは良くない。
また1つ反省点が生まれた。
なんというかイタ吉に私が読んでる前提で動かれるとあそこまで脆いものかと。
私より早い相手ってなかなかなく大体は巨体か強力さの押しつけでくる。
とするとこういう速度で私をボコボコにしてくるタイプの小柄な相手は希少だ。
1撃でダウンするかもしれない攻撃をたくさんはなってくる相手よりも連撃を放って私を削ってくる相手の方が厄介だ。
結局回復自体がダメージを受けている時にはしっかり働くことはない。
以外と回復系の条件って各々厳しい。
私がむりやり突破して使っていることもあるが。
絶え間ない攻めと守りはこちらの処理を手一杯にさせられる。
きつい連撃の中の緩急にもっと対応できないと。
そのためには……
などと考えながらイタ吉とトークして水飲んでわかれる。
スパーリングに15分。良い時間だった。
次はどこへ行こうか。
本当に自由なんだよなぁ。
今日は冒険者稼業ないし。
やはりそろそろ家でゴロゴロあったまりながらゲームでもしつつ過ごす計画をちゃんと進めるべく動くか?
ゲームというものはもちろんカードのあれそれもある。
しかし私が最終的に目指したいのは電子ゲームだ。
あれは膨大な技術と精密な電子制御がいる。
つまり地球の迷宮……言い換えて鋼鉄の迷宮に行くか!
私は久々に鋼鉄の迷宮管理室に来ていた。
なにせしばらくは新迷宮ラッシュってことで冒険者達が死ぬほど入っていたのだ。
元々荒野の迷宮探索に冒険者がたくさん来ていたのにここにきてさらに増えたのだ。
というか今でもニンゲンの冒険者がアノニマルースに溢れかえっている。
拠点をここに移す民間ギルドもかなりいるそうだ。
アノニマルースは今また飛躍的な向上を見せている。
それはともかく鋼鉄の迷宮。
探索中の冒険者団体が10でほとんどは手前側だね。
比較的落ち着いたといえる。
前はワラワラと冒険者たちが列をなして乗り込み手前を数で押し込んでそのまま中位や奥地まで行こうとしていたからね……
元々冒険しやすいように多重に別れている層で細かく強さが変わるように私がここから誘導はしていた。
ただああなると事故はおこるさというもので……
刺激を受けた奥の魔物たちがひっぱり出されてきちゃったんだよね。
下の強さはそれこそ冒険者なりたてでも倒せる程度だが上の強さはニンゲンの冒険者が束になったところでまとめて焼き払われるくらい強い。
もちろん5Xは除く。
ただこんな辺鄙な国の辺鄙な迷宮にいきなり5Xみたいな有名人はこない。
きても上級冒険者や名有りの冒険者くらいだ。
彼等が必死に食い止めている間に低レベルの冒険者達は一斉に逃げて事なきを得た。
そうこうあったため冒険者ギルドは探索方針を変更することになる。
この迷宮では未知の合金……軽量合金やコーティング加工金属などがどんどん見つかっている。
こんな失敗でフイにするにはあまりにもったいない。
ということで冒険者ギルドの方で侵入制限がかけられた。
入山記録じゃないが中へ入ることそのものに記録をとり入りすぎないよう配慮。
また狩り場や生活のための冒険にギルド側があちこち他に回す配慮をする。
ぶっちゃけココ荒野の迷宮もまだまだ手つかずだし近くには別の迷宮や表の世界に山々がある。
仕事はどれだけでも割り振れられた。
意外とやることあるんだよね。
まあそんな昨今の話はともかくとして。
私がやりにきたのは電子制御部品やらなんやらのゲームというものの作成だ。
「意志を汲み取ってもらうのって大変なんだよなあ」
ここの運営のために補助AIみたいなのは走らせてある。
ただあくまで私の補助だ。
AI質問欄に『なんかうまいぐあいに私の思うビデオゲーム作って』という書き込んだところでまったくもってできるはずもない。
色々試してみるか……