四十一A生目 鈴薯
これでも当初はミッカイモならぬゴミイモだのイモモドキだの散々言われていた。
収穫がはやくても食べられなくては意味がない。
ちなみに現在も芋の親戚としては味が悪い。
ただ香りつけや味付けでなんとかなる方向に発展させられた。
小石より小さく価値のない芋の名を返上。
そして大半の魔物がいう味とは食感、嗅覚、喉通り、見た目、毒性、その他諸々。
味覚も私みたいにないわけではないがニンゲンのそれとはかなり違ったりほぼなかったりそれぞれ。
ミッカイモはベースから無限に加工できることとその値段から爆発的にアノニマルース内で広まった。
ただニンゲンたちは全然広まらないが。
ニンゲンたちは素直に米やパン食あるしジャガイモもあるところに食い込む可能性が低すぎた。
しかも味蕾に対しての信用度が高い。
その割に嗅覚は信頼度が悪いのでミッカイモの加工した時に生じる様々なかおりをそこまで楽しめない。
ちなみに生食できるのはアンデッド系あたりに限る。
「今日は1日晴天か……」
私は家の中に設置されている試作型の映像出力機をいじる。
R.A.C.2にあった出力機が業務用で進んでいる文明のものだがこちらも負けていない。
そこを参考にして作り上げた個人用モニターである。
機械を動作すると映像が空中ではなく直接的に薄い板の上に絵が浮き出す。
まあ放送出力側がまだ対応していなくて白黒なんだけれど。
そしてチャンネル切り替えなんて機能はない。
アノニマルース全域に届いている電波によりお知らせされるのはアノニマルース各地の天候。
エリアによりまるで天気が違う人工天気……魔物たちにより作られているから魔工天気? は事前に予報士たちがチェックしてある。
完璧に予測はできないがかなりの高精度だ。
チェックしておかないととんでも天気に見舞われることがある。
灼熱エリアでも今日は炎天と書かれていたら土地が燃えているので一般的に危険。
雪原エリアでひょう嵐と書かれていたら氷の礫が弾丸として飛び交う。
なんでそんな天候になるのかといえば快適な環境は魔物によって違うというのと必要とされる天候は激しくてもあるというものだ。
すべてを壊していくハリケーン系の天候が地球のときはよくあったがアレがないと水不足やら育ちにくい樹木やらが。
魔物はより顕著に出るわけだ。
この平常エリアでも植物や建物の関係で風が吹きすさんだり雨が降ったりする。
お出かけに最適な天候が示されるマークが白黒で書かれているので今日は大丈夫だ。
「それ便利だよねぇ」
「今のところ、試合放送とか、たまにニュースが流れる程度だけどね」
周知したい話があると定時放送で流れる。
ラジオみたいな機能で音を流すだけのものもある。
というよりそっちが今のメイン。
広間の業務用映像出力のでみんなが見られる立体映像のもある。
この世界空中立体映像のほうが技術的には低いんだよね……
魔法学的にはわかるんだけれどどうしても前世感覚的には不可思議になる。
「なんというか……凄い色々考えているよね。私も利用してみようかな……?」
「何をするの? 番組?」
「うーん、ああほら、前試験的に何回か、音声を全域に向けて発信し続けるものやってたよね」
ああーやってた……らしい。
私が外にいて知らないんだよね。
実はそういう理由でイベントをのがした経験たくさんあります。
ただ話を聞くにラジオ放送での番組雛形みたいに感じた。
一方的に伝えたい雑談を話して1時間程度で締めくくるというもの。
音楽とかも流せるようになれば? みたいな話も出ていたはず。
「噂には」
「ああいう場で、医療の情報をコンパクトに伝えられたら……いや、でも私がやると、専門的になりすぎちゃうかな……」
「何匹かでやればいいよ。ホルヴィロスはメインで、台本を書くひと、ゲストに誰か呼んで、スタッフも囲えば」
「んー……つまり……ああ、なるほど。他者の視点と他者の補助を受けるわけだ」
ホルヴィロスは普段のアレとは違ってとても地頭がいい。
自力で答えにたどり着いたようだ。
ホルヴィロスは深く何度もうなずいている。
「どうかな?」
「なるほど……ちょっとまとめてみるよ!」
「はーい、じゃあ私はでかけてくるね!」
身を整えてそのままでかけの挨拶。
ホルヴィロスがニコニコして送り出してくれた。
ポカポカ良い陽気。
なお本来の季節天候は考えないものとする。
気温自動調整の魔法陣がアノニマルースにはあるがすごく楽だ……
「ほい、ほい、ほい!」
「あ、クオーツ」
そしてすれ違うのは私のゴーレムの一体であるクオーツ。
なぜか固定したたくさんの書類を運んでいた。
いやあの本は……教材かな?