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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
命は平等されど公平であらずんば
2121/2401

二十九A生目 裕福

 アリシア・ミルドレクドというニンゲンの半生は後に見つかった資料と聞き込みそれに日記から判明している。

 それは彼女がまだアリシア・ドルノネードだったころの話。


 アリシアはドルノネード家の長女として生まれた。

 幼い頃は天真爛漫で同時に意欲的に学ぼうとする姿勢があった。

 わがままでなんでも根掘り葉掘り聞いてくるというのも小さい子ならかわいらしいものだ。


 彼女はあまり両親に会ったことはない。

 というより兄弟もあまり会ってはいないが。

 一応幼い頃に会っていたらしいが記憶に薄くそれよりも乳母が常に側へいたためこちらを親だと思っていたほどだ。


 これが一般人なら悲劇だが大きな権力を持つ一家にとってはむしろ裕福な象徴だった。

 寂しくなれば誰だって抱きしめてくれるし飢えた記憶なんてない。

 ただはしゃぎすぎて服を破りしこたま怒られたのは強い思い出らしい。


 そんなどこにでもいる家庭だがちつからか……そう正確には領主であり父であるハーリーの失踪から変化が起きた。

 まず心の支えであった自身の周囲にいた多くの者たちが解雇にあった。

 それは乳母も同じだ。


 そして教育方針も変わった。

 彼女の時間は削られやがて詰め込みの激務がはじまる。

 それはまるでしごきというより拷問だと当時の記録に記されている。


 そのさなか息抜きに迷い込んだ仔犬みたいなのをかわいがっていたらしい。

 真っ白でふわふわだっとかかれているからおそらくは誰かがこっそり屋敷に忍び込ませたのだ。

 ちなみに翠の大陸に犬はいないがミヌガレットという犬に似てるけど有袋類の獣がいるのでおそらくはそいつ。


 彼女はよく隠れて唯一の癒やしにしていた。


 本人の記憶により鮮明なのは武術の稽古。

 稽古そのものは上に立つものとして珍しくない。

 しかし珍しくひとりで呼び出された彼女はしっかりした刃を持たされた。


 言われた通り目の前の小箱の穴に勢いよく挿し込むとナイフが跳ねて怖かった……と書かれていた。

 付き添いの男兵がナイフを抜いて箱の囲いを取ると。

 

 白い仔ミヌガレットが息絶えていた。

 いや少なくともアリシアはそう思い日記に記していた。

 もしかしたら絶命までに苦しんでいた可能性もあるが……


 最終的に死んだ。

 そして墓に埋めることすら許されずどこかにやられた。


 彼女はこのあたりからおかしくなりそして怒りを表すようになる。

 そして何度も兵たちは囁いていく。

 悪いのは全て外だ民たちだと。


 最初に殺したのはそんな相手。

 しかし次々に殺す相手は大きくなっていく。

 そしてやがては自身の手ではなく誰かに指を向けるだけで……人がひとり死んだ。


 何段階にもそしてよりいやらしく。

 より綿密に計画されて行われていた。

 多数の記録をたどるに彼女は被害者として加害者に成長したのだ。


 それはもはや悪事を悪と思わぬ邪悪。

 そんな凶悪なニンゲンに。







 時は現代に戻る。

 アリシア・ミルドレクドは全身を痛みに震わせながら立ち上がる。

 そして……また5つに分裂した。


「「お前一匹程度、これでぇ!!」」 

 確かに5人ものアリシアに襲われるのは危険だろう。

 だから私は後ろへステップしつつためておいた魔法を使う。


「"チャージボルト"そして"エレキファング"を発射!」


 私の全身に電気をまとって効果を高め。

 職アーチラリの発射! を使って範囲拡大。

 相手に噛みつくための電撃の牙は私の口から更に拡大され……


 5人のアリシアをまるまる楽に飲み込む雷撃の大顎へと変化する。


「「あっ!?」」


 慌てていてももう遅い。

 5人の突き(エフェクト)ごと雷撃が飲み込んだ。

 最近さらに威力を増すことが出来ている1撃で光が飲まれ影になりそれすら消し飛ばされていく……


「ガアアアアアアーー……!!」


 消えていく。

 野望も惰性も傲慢も。

 理想も憤怒も。


 大きく吹き飛んだ音と共に床に転がったのはひとり。

 分裂体も消えついでに屋敷の一部も吹き飛びあるのは変身すら解けたアリシア・ミルドレクドただひとりだった。


「っガハッ! フウッ、ハアッ、ハァッ」


 息はなんとかしているがたえだえでまともに動ける気力はなさそうだ。

 そもそも痺れているだろうし。

 私はアリシアに近づきその目を見る。


 そしてにおいを。

 淀んだ瞳。この期に及んでなお怒りや憎しみでないまぜのにおい。

 このひとりの性格を定めるほどの洗脳はまるで降り積もったヘドロだと感じた。


 命というものにまるで興味がない。

 それは自分自身の命についてもだ。

 だからこそ怯まず何も顧みずここまできてしまった。


「妾の力が……そんな……っ! 殺すぞ……!」


「キミには、少し反省してもらおう」


 私はこのままではいけないと少し力を使ってみることにした。

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