二十八A生目 英傑
アリシア・ミルドレクドが剣を投げつける。
それは暴挙にも等しいが同時にクライブくんとミアに直近の危険がいきなり迫ったことを表す。
「「きゃあああっ!!」」
悲鳴とも叫びとも区別がつかないその声をあげながらもふたりは動いた。
クライブくんは避けようと必死に倒れ込みミアは両手剣フラワーを突きだす。
ほんの僅かでもこの剛力で放たれたシュートから逃れるために。
その景色が私が見えた最後だ。
なぜなら……
「あ?」
アリシア・ミルドレクドは感嘆符を漏らす。
それは不可解な出来事と言うしかないからだ。
剣が……空中で止まっている。
それはまるで時が停止した世界。
しかし瞬きはおこなわれさらに仕込みは終わっている。
私は、地面へと着地した。
「隙だらけだよ」
剣ゼロエネミー振り払い残心。
驚くアリシア・ミルドレクドの身体にいくつもの線が走った。
パッと赤い花が咲くように傷口として血が吹き出る。
「ああああっー!?」
「ローズさん!!」
私は魔力を固めて慣性を止めていた細剣を持ってささっと亜空間にしまいこんだ。
これで相手は武器なしである。
「ごめん、ここを最後にしたから、遅れたよ」
「さいご……ということは」
「うん、他のところは窮地を脱したよ」
私はここに来るまでにミアたちが1番持つだろうなと想定し予想通り持ちこたえてくれた。
まず騎士団長のところに向かったがその時点でふたり胴体が泣き別れしている。
どれだけ戦いが苛烈だったかよくわかる。
切り口がきれいだったのが幸いし即治せたものの本人たちはトラウマ確定だろうなあ。
もはやその時点で私は姿を偽り隠すのをやめた。
まあ命より大事な秘密ではないからね。
私は魔物として騎士団長をぶちのめした後もう駆け回って各悪魔の力による変身個体を撃破していった。
正直体力に任せた猛攻してくるだけなので同じ出力になる神力を開放して殴れば語ることもない。
木のゴーレムに囲まれたチームだけは後方に結界設置だけにした。
あくまで私がやりすぎてはいけない。
経験泥棒になるつもりはないのだ。
それに時間かかるし。
そして今ここにきた。
「もし、地図を作っていなかったらこんな動きは出来なかった……みんなの報告が正確でたすかるよ」
「それは、どうもです……って! そうだ、みんなは!? バンさんや、男たちは!?」
「それなら」
私は目線を向こうへ。
みんなもつられて見ると階段からほうほうのていで這い出してきた影たちが。
3人ズにバンたちだ。
確かに彼らは命からがらな状態だが生きている。
なかなかやばかったが彼らだって無策ではなかった。
すごい単純だが……突撃の瞬間に煙玉を四方八方からぶつけたらしい。
それで地下室は今やむせるほどの煙だらけ。
雑に吹き飛ばされたもののアリシア・ミルドレクドも嫌がり早々に追撃しにいこうとする。
ガードの上から身体を打ち据えられた4人は生きていてなんとか階段から抜けてきた……ということだ。
それを解説したらミアは大きく息をはいて座り込んだ。
「良かった……助かったんだ」
「本当は事前調査で、変身について仕入れられていればよかったんだけどね。まさかこんな不測の事態が起こるとは……」
「アァ、アアアァ!!」
そうこうしている間にもアリシア・ミルドレクドの肉体が再生していく。
私は剣ゼロエネミーを軽く振って向き合った。
後は対決するのみ。
傷が治ったとはいえもはや彼女はボロボロだろう。
生命力の治りも悪い。
わざわざ待ってやるつもりもなし。
「見ててね」
「えっ」
「お前は、一体!?」
私は剣ゼロエネミーを放り投げ空中に浮かせる。
そして骨格を変え服装を変えていく。
4つの足を持つ……ニーダレスに。
「私はローズオーラ、行くよ!」
私はイバラを伸ばして迫る。
相手は突きを繰り出してくるが1発目ならともかくミアが何回も見ているのを通して見たことが有る。
既に正体の割れた動きは速くてもこわくない。
剣を踏み込んで全部避けていく。
「嘘っ!?」
イバラも当然かすりもしていない。
突きを放っていたアリシア・ミルドレクドは避けることはできない。
連続で音速ではたきつつ1本は足を絡め取る。
そうして引っ張り上げると気を取られていたアリシアは体勢を崩して倒れ込む。
剣ゼロエネミーが大きく重くなり高くから落ちていく。
「っ!?」
「さすがに避けるか」
全身を使って跳ねるようにしてから剣の切っ先を避けられた。
地面を串刺しにしたゼロエネミーはともかく私自身が追撃に走る。
追撃で深く後ろ足で蹴り飛ばすと浮いたので"四足乱舞"して暴れるように蹴り込んだ!




