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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
成獣編 〜破壊からの再生は〜
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二百六生目 惨状

「やあっとひと段落ついたぞ!」


 そう言ったのはドカドカとテントに入り込んできたイタ吉。

 おそらく数日はずっと顔を見せていなかったはずだ。

 だが随分お疲れの様子。


「どうだ? 少しは元気になったか?」

「こっちはそろそろなんとかなるかも。そっちは?」

「ぶっちゃけローズが欠けると、ヤバすぎるほどに仕事が回らんことがわかっちまったぜ」


 イタ吉が苦労を思い浮かべてポリポリと体をかく。

 ストレスたまっていそうだ。


「遠くに行っていたやつらとの連絡手段すら封じられていたからな。めちゃくちゃキツかっただろうな、向こうに行ってたやつら」

「外界や……火山にいた魔物たちだね」


 冒険者ギルドで依頼を受けて採取やら討伐やらしていた彼らはやはり現状連絡も取れず置き去り状態だったようだ。

 もちろん不測の事態が起こればなかなか出迎えに行けないかもとは言ってあるが……

 私が何日も空魔法でワープが使えない事態はあまり想定してなかったからなぁ。

 おそらく向こうは大混乱しているだろう。


「イタ吉はその対処を?」

「ああ、とにかく使える奴ら片っ端から集めて迎えに行く仕事だ。脚に自慢があるやつらを先に出して情報伝達に向かわせた。

 問題がなければそのまま共に帰ってくるように伝えてあるし誰もすぐ帰って来るやつはいなかったら大丈夫だ。近い奴らはすでに迎え班や情報伝達係と共に群れに帰ってこれているよ」


 ドッカリとイタ吉が座り込んでそう語ってくれた。

 良かった遠征組も無事だったらしい。

 もちろん遠征までする魔物はそれ相応に強い。

 だが現地でしばらく滞在するとなると話が変わるからね。


「まあ、火山に走らせたやつは……ちょっとズルしたけれどな」

「ズル?」

「大したことじゃあないんだが、小さい魔物の街を経由する必要があったから、そのための通行証を、な」


 どこかバツが悪そうにイタ吉が見上げる。

 あ、もしやイタ吉が持っていた通行証を貸したな?

 悪知恵だなぁ。


「まあ、それも含めて助かったよ本当」

「まあな! 俺の機転もさすがだろ!」

「まあそのことを含めてあとで謝りにいかなきゃだけれども……」

「うん? バレてないのにどうして?」


 通行証は1つ。

 行きはたとえひとりでも帰りは遠征組を連れて行かなくちゃならない。


「遠征組の分の通行証、ないよね?」

「あっ!」


 そう、彼らは魔法で街を経由せずに直接向かわせた。

 帰りは間違いなく揉めるだろう。

 イタ吉もそのことに気づいてアチャーとしている。


 間違いなく帰りは身柄を拘束されてあれこれ聞かれるだろう。

 あそこの街はそこまで厳しくないからおそらく最悪森の方へ放り出されるだけで済むはずだ。

 どちらにせよ騒がせたことには謝らないとね。





 そんなこんなで幾日経過したか。

 はっきりととはわからないがしばらく寝て過ごした後……

 ついに私の治療が終わった。


「はい、これで完全におしまいよ」

「おつかれさま、ありがとう」


 私含めて色々書かれていた魔法陣がきれいに拭き取られる。

 体の方はばっちり動く。

 治療に回さなくて済むぶん行動力の回復がどんどん行われているのを感じる。

 "無尽蔵の活力"さまさまだ。


 テントから出れば治療が終わったと聞きつけたみんなが待っていた。

 群れの魔物たちから普段のメンバーまで。

 アヅキはないていた。


 ひととおり挨拶を終えて人だかりならぬ魔物だかりを抜ける。

 声をこっそりかけていたいつものみんなと共に。

 イタ吉、たぬ吉、アヅキ、ユウレン、カムラさん。

 インカ、ハック、ドラーグ、ジャグナー。


 足を運んだ先は……

 少年ことダカシによる爪痕。

 爆発地点だ。


 現地に着けばすぐに異常さに気づく。

 爆発で吹き飛んだものを協力して片している最中だったので邪魔しないように進んだ。

 ただ目に見えるそれは……


「この範囲が全部……」

「1発の魔法で吹き飛んだんでしょうね」


 ユウレンの言うとおりただひとつの魔法。

 それで『見通しの良すぎる』光景がひろがっていた。

 もとは多くのテントがあった住宅街中央付近。


 遠く、おそらく半径だけでキロメートルがいる距離が何もなくなっていた。

 中央付近が特に強く地面がえぐれその周りは地表の上をすべて吹き飛ばしたらしい。

 だがその芯にあたる部分は異常さを際立たせていた。


「何度来てもひどいものですね、これは」

「頑張ったのになあ……」


 アヅキやドラーグがそうやって愚痴をこぼすなか中央の芯に近づく。

 そこだけきれいに地面が残っていた。

 私はダカシが魔法を使う瞬間の光景を思い出す。


 そう確かに何らかの結界を張って身を守っていた。

 これだけの破壊力を持つ魔法から守れる結界もとんでもない能力だろう。

 ただレベルが高いだけじゃあなくて色々規格外だ、ダカシは。


 だけれどもユウレンは、正確にはユウレンが聞いたカムラさんはこれらを軍用魔法と言っていた。

 つまりは人間たちはいまやこのレベルの魔法でドンパチしていると。

 世界大戦があったらさぞかしにぎやかな事になりそうだ……


 森の迷宮で戦った冒険者たちがいかに清く正しく正々堂々とそしてレベルが低いか良くわかった。

 あれで油断していたのかもしれない。

 この世界、上と下の差がエグいほどあるんだなあ。


 ニンゲンたちへの脅威警戒度を引き上げる必要がある。

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