二十五A生目 反撃
アリシア・ミルドレクドは顔をまるで修羅が如く怒りで表情を釣り上げる。
「おかしい、おかしいっ! そんな力、妾のこの悪魔たる力を越えるなどありうるはずもない!」
「わたしだけだと思いますか?」
「何!?」
「やっぱり、戦い慣れていないね」
そしてここでアリシア・ミルドレクドの弱みが見えだした。
ミアが視線を向けると他の場での戦いも形成が変化しだしている。
泥臭く立ち回り1撃を大きな変化にしていた。
1番強いバンはまともに相手している。
対雑魚の打ち上げ攻撃は使わず着実に相手の突きを槌の振りで潰しつつ周りのカバーをしている。
力増強させる道具のひとつである赤い油を各々に投げていた。
ミアも先程受け取っていて身体にかかるとすぐに揮発していた。
そのかわり赤いオーラのようなものが立ち上がる。
実は一部の種油を抽出したもの。
複雑な効果は置いておいて行動力で肉体を強くしている状態を擬似的に外部から付与しているのだ。
これだけでもだいぶ立ち回りが変わってくる。
そういった他のニンゲンの動きを共有できていないしそのことそのものを知らない。
経験不足。
「わたしが倒れていた時に、全然追撃しにこなかった。攻撃も基本的に一辺倒だし、自身の能力の把握もしていない。普段から訓練している者なら、あり得ないことっ」
「生意気な!」
ミアも攻める以上無傷とはいかない。
たださっきよりも圧倒的に喰らい方が下がっていた。
アリシア・ミルドレクドは攻撃を食らって良く怯んでいた。
突きを振るうがミアが花光で受け跳ね上げる。
跳ね上がった刃を見逃さないように胴薙ぎしさらに武技として真上から桑を振り下ろすかのようにまっすぐ斬り落とす。
アリシア・ミルドレクドは斬り裂かれるたびに威力にえぐれノックバックした。
普通のニンゲンならば吹き飛ぶほどだろうが悪魔の力で重さと筋力が増しているらしい。
元々ガードに向いている武器ではないが防ぐのはまるでうまくいっていない。
心情的に崩れてしまって受けが疎かなのだ。
今ミアの発する殺意に飲み込まれているのはアリシアの方だ。
「ううっ!? 馬鹿な、そのような力、なかったではないか!」
「そうか、あなたはもう最大の力を使い切ってるんだ。手の内を全部見せているわけだ」
「何!?」
最初に一気呵成して倒すのは悠長な末に倒されるより良い。
しかしその先の展望がなければ今のアリシア・ミルドレクドのように追い詰められる。
能力以上にアリシアの動きにミアが慣れた……ということだ。
それはミアがちらりと視界におさめた3人もそうだ。
3人ズたちはもはやボロボロでなんどもポーションで治療した跡がある。
止血と生命力回復だけなんとかこなしている。
そして3人分の分身アリシアも思ったよりも汚れている。
あの汚れは傷の後に治ったものだ。
派手な破壊活動は出来ていないし1刺しあればそれだけで3人ズは吹っ飛び転げ回って避けまわる。
けれどもう1撃も深くは貰っていない。
突き振り払い薙いだところでスレスレなんとか避けてしまう。
そしてロッズの槍さばきにより避けるのを夢中で3人分身で叩いていると確実にゴズが短剣を脇腹にねじ込む。
さらにロッズの取れそうになったところで頭をウッズが放った炎の魔法なんかが焼く。
的確に嫌なところをねらっているため想定以上に戦えていた。
「ああ! 妾の髪を焦がすとは! 許せん!」
「ちょっと! 邪魔ぞ妾! そこは妾の……」
「ええい! 妾の立ち位置を用意せぬか! 妾の癖に邪魔ぞ!」
さらに最悪のコンビネーションである。
自分同士なのになんと自己勝手なのか。
逆に3人ズの息はピッタリでそういった隙を見つけては的確に刃をねじ込み魔法を叩き込む。
「どういうことだ……妾の、悪魔の力は無敵ではなかったのか!?」
「そんなもの、無敵でもなんでもない!」
ミアとアリシア・ミルドレクドの斬り合いは手数がまるで違うので足場の取り合いになる。
踏み込む位置に身体があれば剣を触れないし引く時に足が来たらそのまま斬られる。
さらにミアの柔軟流変二式により想像と違う斬り裂き範囲を持つ。
ミアは脇を突き刺しから避けて掠った分血が出る。
軽鎧を仕込んでいるのにこれほどの威力なので間違いなく強い。
痛みに顔をしかめながらも動きを止めなかった。
「回転……」
横腹に両手剣を巻きつけるように斬りつけ……
そのまま回って連続で切り裂いていく!
「ガアッ!?」
「竜巻斬り!!」
「グアアアアッ!!」
激しい竜巻の斬り上げによってアリシア・ミルドレクドは空を舞った。
さらにウッズがそれを見て目を光らせる。