二十A生目 士気
兵士たちにゴズの短剣がきらめく。
……いきなり5つに分裂し様々な方向から襲った刃が。
「多いっがはっ!?」
「全部実体なのに、その薄い防具で防げるわけねえだろ」
そして1つに戻る。
武技の1つだろう。
ウッズは長棒を杖として機能させ短く唱える。
すると杖が炎を吹いて兵たちを巻き込む。
煽られ怯んで腰を下げる。
そこにながれるように腰へ長棒を流れるように突く。
そのまま崩れた動きを狙って長棒を回すように当てていく。
最後顎に弾き飛ばし倒した。
「フゥッ……!」
「カハッ……!」
1体1体確実に仕留めていくその姿は先程とは打って変わって仕事人のごとく。
どうやら修羅場をくぐって多少変わったらしい。
とにかく動きの立ち回りが改善されている。
「貴様ら……なぜそれほどの力を持ちながら、このような狼藉を!?」
「ああ!? 決まってるだろ、俺らは仕事したのに、そっちは支払いを拒否した」
ロッズが槍を構え足を踏み込み兵へと向かって啖呵を切る。
「お前らはやりすぎたんだよ! なんでもかんでも奪いやがって、許されると思うなよ!」
「何を無礼な!」
「貴様ら民草など、我々の威光に縋るだけの生き物だろうが!」
「貴様らから糧を得るのは正当だ!」
「フン、やっぱ口で言ったところで、か」
ミアは息を整え深く息をする。
かれらが騒いでいる間に精神統一しなおしたらしい。
「あの街の惨状を……苦しんでいる多くの人々を見てそう思えるのなら、あなたたちはもう、権利を持つべき立場じゃない……!」
ミア視点だからどこまでの顔をしているかはわからないが……
声に圧が感じられた。
そしてミアを見た彼等がぎょっとした顔をするのも。
もうこうなれば戦いは止まらない。
バンにはたくさんの数が集まって動きを止めようとして……
「そんなスキだらけで!」
「「ぐああ!!」」
ミアがバッサリバッサリと切り裂いていく。
ゴズたち3人ズがちょうど対3人ずつ向かい合う。
「くそっ、当然のように俺たち以上につええやつら集めやがって!」
「だけど俺らはよ、今回燃えてるからよお!」
「いつもなら逃げてるが、やるぜてめえら!」
「「オオッ!!」」
「こいつら、命知らずか!?」
こちらの3人は士気が違う。
ギルド副長シドニーが全体指揮をして理由もわかりやすく明確。
悪いことを言うようだが悪者をぶっ飛ばす以上にわかりやすい答えはない。
向こうは結局消極的防御行動だ。
やりたくもない防衛戦を強いられている。
その時点で差は明確だった。
ゴズは敵の片手剣を接近して掻い潜り短剣で兵の鎧隙間を縫い切っていく。
音の出ない装備のため軽防具なのがここでわざわいする。
そんなゴズを背中から刺そうとする兵をロッズが槍を合わせ剣と鍔迫り合い。
「って思ったか?」
「なっ!?」
スルリと槍が剣から動く。
そう……その長さは柄。
剣と槍と鍔迫り合いは……リーチの差で成立しない。
ギリギリ兵が剣と顔を引いて槍の穂先を回避する。
顔から血がぷつりと溢れた。
そして一拍遅れは致命的に流れを別に寄せられる。
ゴズが改めて襲われた兵へ向かって最速の短剣突き。
光により容赦ない1発が入りたたらを踏んだところに槍の振り下ろし。
斬り裂いた連撃でひとり倒せば他の兵たちが連携を乱されてとっさの判断が守ることしかできない。
そこに対するはウッズ。
今度はしっかりためた魔法の力を発揮する。
水が波のようにうねり一気に襲いかかった。
「「ウワアァッ!?」」
「……あぁ、あ? 俺たちは平気なのか」
「魔法だからな、指定して除外した」
範囲の魔法は味方を指定して除外するか敵を指定して攻撃する。
他は影響を受けなくするのだ。
私はよくやる。
ということで大波に攫われたのは敵兵士のみだ。
悲鳴をあげるまえに敵対水魔力をたらふく飲まされるのはとんでもない苦痛だろう。
即効性の毒みたいなものだ。
しかもそのまま全身を打ち据えつつそこらのものにぶつかっていく。
追加で大きな打撃も与えられ水がはけたあと彼らは息も絶え絶えだった。
そして……5人の目は暗闇に輝く。
「撤退、撤退ー!」
「「オラーッ!!」」
全員の叫びとともに今度は兵の残党を追う。
そういう戦いになった。
なぜなら兵士たちが倒れるわけにもいかず一斉にバラバラに逃げ出したからだ。
冒険者たち5人は一斉に追いかけだした。
扉の奥にあちこち逃げ出した先。
散々振り回されるがなかなか捕まらない。
ただ結果的に同じ方向へと逃げているのが私達地図班で判明。
徐々に指示を出して追い詰めていく。
やがて1室にたどり着いた時にはもはやポーションをがぶ飲みしながら息をきらしていた。