十九A生目 連携
ひとりダウン。
ミアからの目では全員の数は不明。
少なくともニンゲンの片手指よりは多い。
そしてこんなところ守っているメンツだ。
どう考えても強豪だろう。
「立て直せ! やつらを分離しろ!」
そう叫ぶ敵側と。
「巻き込め! とにかく個別に叩き、乱戦するんだ!」
と叫ぶバン。
ふたつの部隊の思惑が走る。
場の状態を知り尽くしている相手側のほうが動きは優勢だ。
「やあぁ!!」
「な、なんだ!?」
というわけでこういう時に輝くのは個の力。
ミアが地面に両手剣を叩きつければ勢いよくツタが伸びだす。
足を引っ張られ兵たちはバランスを崩した。
だが全員ではなく狙いを察した何名かは片手剣を足元に刺す。
つっかえ棒のようにしてツタを受けた。
どうしても数を増やした分1撃の威力は下がる。
「今っ!」
「ぬおおっ!!」
ロッズがさけびながら槍を振るう。
倒れた相手への容赦ないジャンプ刺し。
「ぐがっ!」
武技らしく着地時に光が波打って地面に走った。
たぶんトドメをさすのに便利な武技なんだろう。
他の倒れたものもみんなが寄ってたかって殴っている。
「まだだ!」
ただ兵たちはそれなりに数がいる。
ミアもいつの間にやらふたりの兵士に囲まれていた。
片方の剣を受ければもう片方に斬りかかられる。
それがわかっているせいでミアからは動けない。
まとめて払えるような甘い距離管理はしてくれないらしい。
ジリッ……と足をにじり詰められたミアは両手剣を下げるように構える。
「こういう時は……」
「ハァッ!」
兵士がほぼ同時に斬り掛かってくる。
ただこれならミアはやりようがある。
ミアは確かにただの村人だった者で攻防の経験なんてまだほとんどない。
けれどこの日のために訓練してきたのだ。
闘技場でも戦闘を重ねて。
私が試した動きが彼女の中にある。
「そこだぁ!!」
「なっ!?」
一瞬下がってからの回転。
そのまま竜巻を巻き起こす武技を放つ。
とっさの判断で隙の大きいものを放った。
「「ぐわぁっ!!」」
ミアはちゃんと踏み込んで巻き込んでいく。
光の渦は思ったより範囲が広くさらに引き込む力がある。
狭い空間ではこれ以上なく効果的だ。
「アイツに近づくな! 魔法、放て!」
「おっと、守らせてもらおうか!」
当然スキが大きく引き込むということは魔法も食ってしまうということ。
ロッズがかわりに前へ飛び出し槍を前へ突き出す。
鋭い槍の突きは勢いよく前へ光が飛び魔法たちとぶつかって散っていく。
残った風や闇の玉はロッズが仁王立ちし食らう。
「ろ、ロッズ!?」
「ふぅ……! 大丈夫だ!」
しかし立っている。
ロッズの周囲に頑丈そうな守りの光壁がはられていた。
すぐに消えたがロッズが多少傷が入る程度で防げたのは間違いなく今のスキルのおかげだろう。
「い、今のは?」
「やっと最近覚えたんだ。一瞬だが、誰かを守る壁を生み出せる。チームを組む以上、今までやってこなかったことも、しなくちゃなと。まあ欠点は……自分だけを守る時に、力を発揮しないことなんだが」
かなり変わった守りなのは言うまでもない。
ミアがロッズに駆け寄るが大した傷がないのをチェックし再度武器を構える。
こういったスキルを覚える気になったということは……戦いの中で役割というものをもっと深めて行きたかったのだろう。
はっきりと誰かと組んで行きたいと意識をしたのは間違いない。
その間もバンたちは戦っている。
「どっせーい!」
「んな無理やり……バカなッ!!」
バンの戦い方は相変わらず豪快だ。
相手のことを一切考慮することなく最も効率よく破壊するよう打ち込むフルスイング。
凄まじく重心が整い重いハンマーは込めた力以上に勢いを増し兵をホームランしていく。
「うおおおやべぇっ!?」
「ちょこまかと!」
「しぬしぬしぬ!」
「逃げるなゴラ!」
そしてゴズとウッズは十人くらいに追われていた。
あそこまで敵を引き付け逃げ続けるのならもはや才能でいいと思う。
本人たちは背中から飛んでくるナイフや矢や剣に涙目で避けているが……まあ避けられているしヨシ。
とはいえこのままだと間違いなく背中からぐっさりいくので見たミアとロッズは素早く横から駆け寄る。
「ローズさんはこういう時……必ず助けてくれる!」
ミアが両手剣フラワーで剣圧で広く吹き飛ばす。
ロッズは必死に追いつき連撃を突き刺していく。
兵士たちは横っぱらの突撃に対応しきれてはなかった。
「くあぁっ!?」
「どうした! その程度か!」
「それ反転」
「バカが、素直に追ってきやがってよ!」
そしてゴズとウッズは即反転。
隊列の崩れた兵士たちを襲った!