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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
成獣編 〜破壊からの再生は〜
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二百五生目 融合

 インカのトランスはガウハリだった。

 一方ハックのトランスはケンハリマだ。

 ぶっちゃけ言えば私と同じ……なんだけれど。


 なんだろう、エロい。

 猫のしなやかで細長い身のこなしを艶めかしいと表現することがあるが、それと同じだ。

 インカが剛ならハックは柔と言った雰囲気を感じる。


 子どもが大人になったというか、普通は削ぎ落とされるものが生きたまま成長して混ざり合っているという……

 おかしい、私と同種族なのにちんまりとした私と雰囲気が違う!

 いやまあ、ニンゲンでも個体差はすごくあるからそういうものなのだろうけれど。


 額の3つ目はウインクすればキュート。

 身体つきは私よりも大きくなんとなくふにふにとしたくなる。

 それでもしっかりとした強さを感じて総じて艶めかしい。


 なんだろう、ふたりともトランスしてオトナになったような。

 仔どもだとどこかでずっと思っていたふたりがいつの間にやらオトナになっていたそんな奇妙な感覚。

 重い鉄球のような尾先のインカとすっとふんわりしているハックで2つの違いが良く現れている。


「おめでとう! ついにトランスできたんだね!」

「ああ! これからはもっと活躍出来るさ!」

「僕たちもお姉ちゃんを支えるだけで過ごす気はないからね!」


 うーん声もしぶくなっちゃって。

 いやまあインカはしぶくなったけれどハックはなんかむしろ艶が増してオトナだけれども高音って感覚だけれども。


 ……うん?

 あれって……


「インカ、ハック、その受信機が……」

「あれ?」

「本当だ、身体とひとつになっている?」


 身につけていた受信機ことリングがそれぞれの肉体の一部に変わっているようだった。

 とはいってもふたりとも雰囲気が違う。

 これは私がホリハリーに"進化"したさいに首に巻いていたスカーフが体の一部としてマントになったのと同じなのか。


 でも少年ことダカシは"進化"しても服は別としてあった。

 こういうのは個別で違ったりするんだろうか。


 インカは左脚にあったリングがねじれバネのように渦巻いている。

 端と端がよく見ると肉体と一体化していて全体としては力強さを感じる。

 ハックは尾のリングが先っぽで大きくなりイヤリングのように刺さっているように見える。

 ただあれは一体化しているのだろう。


「へぇ〜、これってまるで爪先みたいだね」

「愛着がわくな」

「僕もトランスしたらああなるのでしょうか……?」


 たぬ吉が疑問を口にするがさすがにそこまではわからない。

 というか変形しちゃって機能が果たせるか不安だったが大丈夫な様子。

 案外頑丈な作りなのかも。


「ようし、ユウレンちゃんに見せてこよっと!」

「俺は狩りに備えようかなー」

「じゃあ僕はここを担当しますね」

「はーいまたねー、たぬ吉もありがとう」


 トランスしたふたりがテントから出ていくと外がざわついていた。

 まあそこそこ顔の知れたふたりがテントに入っていって出てきたら姿変わっていたらざわつくよね。

 私は私でたぬ吉と色々と話してすごした。


 たぬ吉は全体的なサポートという一見地味ながらすべてのサブリーダーと書くと裏の支配者にも思えるポジションだ。

 そんなのたぬ吉自身は思っていなさそうだが。

 自由に動いてほしいし役職の重責を悟られてガチガチに緊張されても困るしね。


「――という感じであのふたりは仲良くしてましたよ」

「へー、意外! 種族を越えた恋、みたいな?」

「僕はそこまでは詳しくわからないんですけどね」


 たぬ吉はなんの気なしに世間話をしているつもりだろうがそこも彼しかなかなか気づけなかったりする所。

 この群れに住む細かな魔物相関図を正確に頭の中に描ける者がいるとしたらそれはたぬ吉のみだろう。


 受信機のおかげてぐんぐんとかしこさが上がっているせいかたぬ吉の記憶力も冴えてきている。

 たぬ吉と雑談するだけでも群れ全体を把握できそうだ。


「ねえ、たぬ吉から見てこの群れの今って、群れとしてまとまっていると思う? まだ自信はないんだけれど……」

「そうですね……難しいところです。まとまっているとも言えるし、バラバラであるともいえます。

 ただそれが良し悪しどちらにも影響を与えてるように見えますね。まだまだこれからでしょうね。

 ただ……あの戦いが終わっても誰もこの群れを抜けていないのは、1つの答えな気がします」


 そうだったのか。

 さすがにあれほど激しい戦いに吹き飛ばす魔法ですでにこの土地を捨てた者がいると思っていたが……

 みんなそれぞれの思惑はあるのだろうけれど期待されているなあ。


 楽しいたぬ吉との雑談を繰り返し動けない私の代わりにあちこち群れ内を走り回るみんなの話を聴く。

 もちろん走り回っているのはたぬ吉も含まれているのだろう。

 今私にできることはこうして群れ内のことを把握することだ。


 人的被害ならぬ、魔物被害は少ないが物的被害が大きすぎる。

 些細な不満や不安が今はかんたんに火種になってしまいかねない。

 これまで以上に慎重にやらないと。


 その後風の運んだ便りでトランスしたハックをユウレンが見て絶叫したあと倒れたと聞いたがそれはまた別の話……

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