十六A生目 木人
鍵のような見た目のアクセサリ。
シンプルなデザインで実際の溝がないため鍵としては使いようがない。
だが勝利の鍵にはなる。
「これで発動しなかったら恨むぞ、ローズさんよ!」
「大丈夫、ロースさんの作ったものなら!」
皆同じ動きで鍵を前に突き出しひねる。
動きのキーコードだ。
より正確なイメージがより正確な魔法行使につながる。
「「抜剣!」」
シンプルな言葉で剣が亜空間から抜かれる。
それは木で出来た刃。
ミア以外統一した見た目と違う形状の武装。
私がアノ時その場でこしらえた代物ではない。
正式に木の素材を私が持ち込みサイクロプスたちの鍛冶師に打ってもらった品。
とても珍しい素材で出来たそれらはたのしく打ってもらえた。
まさしく一級の品。
斬木シリーズ。
刃に木がそして芯に混ぜ込むように火山の迷宮で取れ鍛えた鉄鋼を。
今までにない斬新な大陸を超えた刃が現れた。
なにより揃った見た目がキレイだ。
赤いラインが映えるようになっていて木製品なのに重厚な見た目の仕上がりになっている。
「最初もらった時は、こんな鉄とか混ぜた武器でいけるのかと思ったが……」
「ゴズたちは試し切りしたもんな。あとは……実践で試すのみだぜ!」
ゴズが短剣を回しウッズは長棒をキレイに回し構える。
先程まで持っていた鉄武器たちは入れ替わるように消えていた。
これが鍵アクセサリーによる入れ替えの効果。
彼らの装備は本気のものに入れ替わった!
「いくぜ!」
ゴーレムはこちらの動きを待っているわけではなく腕をひいたあと適当に直進している。
簡単な思考しか組んでいないのか敵に近づいて殴るしかしなさそうだ。
そんな相手ではゴズの駆ける俊敏さに勝てるはずもない。
短剣の活かした素早さで叩きつけてくる腕の部分に向かって数度斬り付ける。
すると。
「おお!」
「わかってはいたが、まるで問題なしだな!」
「うし、これならいけるぜ!」
3人ズが見たのはサクサクと切り裂かれた木の腕。
刃がくい止まることなく肉のように裂けた。
これだけでも性能の良さがよくわかるものだ。
ゴズ狙いになったゴーレムが暴れるように腕を振るう。
それを下がりつつ避けウッズが位置をかわった。
「ウスノロ、そんなの食らうかい!」
「こうして……こう!」
ウッズが棒を床につけてから相手の腕振り回しを受ける。
するとシンプルゆえに頑丈な作りになっている棒は支えとなる。
光と共に腕へ刺さるかのごとく止まり……力の方向をズラして逃がす。
すると押し込もうと単純思考していたゴーレムは僅かな時間で起こったことに対応をしきれずたたらを踏む。
人間大のサイズということはバランスが良くないということ。
完全に崩れたところにロッズの魔法が放たれる。
「練習どおり……だな!」
足元から石槍が飛び出る。
威力はそうでもないが勢いが大きい。
踏まみこんだところに発動して足回りが崩れる。
こうなると巨体を支えきれず倒れてしまうのだ。
「よっしゃー! だったらここから、決めるぅ!」
バンが重く木槌を地面が擦りそうな勢いで低く振り……
凄まじい光と共に床上へ爆ぜる。
するとちょうど身体へかち上げのようにぶち当たるのだ!
キレイに当たった槌はゴーレムを不格好に空へと打ち上げる。
光がついているからあれは武技による効果だ。
空中にとどまったところで身体に光の跡を残しながら飛び上がる影。
「はあぁ……!」
ミアが両手で構える大きな刃。
アレだけは変わらず花をたたえている。
「フラワー、力を!!」
大上段に振り抜く。
武技による輝きがあたりに散りまるで花を咲かせるかのように光って。
斬撃と共に着地したミアの背後で轟音が響き大きな切り裂き跡とともに爆発。
そのまま地面へと叩きつけられた。
「なかなか頑丈だな!」
しかし地面に叩きつけられグチャグチャの一部砕け散りながらも動く。
むしろ痛覚などないため動ける部位をすぐに動かし周囲の相手を払うように暴れ出した。
「あと少しっ!」
ミアは剣を構え直しその暴れているところに突っ込む。
ゴズとウッズも頷いて続いた。
ロッズは槍を長く持って構え……
バンは隙を探すかのように槌を両手で構え待った。
「おらっ、おら!」
「くそっ、大人しくしろってんだ!」
3人は取り囲んで殴れるところから殴っていく。
剣や棒でそう簡単に両断や貫通はできない。
それでももがく腕や足に弾き飛ばされても少しずつ削れていく。
耐久力はあとわずか。
槍が少し距離をとりながら瞬間的に突き出して。
わずかにゴーレムの動きが狂う。
「今!」
バンの殺気が形となって膨れ上がる!