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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
命は平等されど公平であらずんば
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十五A生目 検証

 バンが何度か壁を槌で殴りつけるがまるで衝撃がない。

 頭をかいて立ち止まった。


「なんだぁ? 錯乱したか?」


「いや、違う違う。こういう時、壁抜けれたほうがやっぱ楽なんだけどさあ、空間がネジ曲がっているせいで、力押しは出来なくなってるなって。それに隠し扉とかが壁の向こうだと、手出しが出来ないからさあ」


 バンの言うことはあたりだ。

 でたらめな空間拡張で人工迷宮化した時壁や天井や柱にそれらの魔法が複合的にかかっている。

 そうした結果空間断絶とも言える絶対保護がかかってしまった。


 空間断絶ということは彼女がいくら壁を殴ってもそもそも空間的に届いていないことになってしまう。

 概念的に空振りしているのだ。

 しかし……


「あれ、それだと扉を蹴破れるって変じゃないかな?」


「おお!? ……本当だな、なんでだろう」


「正解、正解教えてくれ、まだここの書類漁るのは時間かかる。ああ! これゴミじゃねえか!」


『……そうですけれど』


 そうミアの言う通り。

 この空間断絶はルールがあり扉は平気だ。

 ではなにかというと。


『扉や出入りできるもの、動くもの、そういった限定的に必要なものは、空間断絶されていないからさわれるし、壊せるよ。実は』


「かくかくしかじかだそうです」


「お! ということは隠してあるところは干渉できるわけか。秘密通路とかあるだろうなー、よく探さないと!」


「それもいいけどこっちも手伝ってくれー!」


 バンが壁を探し回っているがそれよりも目の前にあちこち隠された品々のほうが大事だったりもする。

 めんどくさいのもあって任せてるんだろうけど。

 束ねた書類関係は無造作に支給された亜空間拡張されている袋に突っ込んでいく。


 ロッズが棚の中の隠し部屋にあった粒宝石を見つけつつ素早く袋に突っ込む。


「ここらでちゃんと稼げるかは、つまり俺たちに正当な資金が払えるかの正当な証拠になる。逃すなよ、ペン1本、紙1枚!」


「「おうよ!」」


 そして差し押さえこそがやらねばならぬこと。

 無いものからはとれないからね。

 不当な稼ぎは全部一旦おさえてから再分配される。


 というか不当な税の押収とかばっかやっているのでなければおかしいのだが。

 ないならないで隠している痕跡を追うこととなる。

 数字が示している以上必ずあるのだから。


 というわけで差し押さえの作業はとても大事。

 みんな自分の取り分を取り返そうと必死だ。

 あのミアだって働いた分の稼ぎが消えそうと必死である。


 というかミアは村の出身。

 自分の畑でとれたり家でこしらえたものがどれだけ大事なたくわえで……それが消えたら大変なのかをわかっている。

 金銭に変わろうとそりゃあ必死だ。






 ただ捜索して1時間以上経過したあたりから様子が変わってきた。

 私の視界では変化がないが聴覚のほうが音をとらえた。


「この……地響きみたいな音って……」


「何か来るぞ! 構えろかまえろー!」


 バンの号令で全員武器を構える。 すると扉を壊すように入ってきた人間大の何か。

 ミアの目で捉えたそれは……


「ゴーレム!」


 ロッズが叫ぶ。

 重たい木の身体を持つもの。

 ゴーレムだった。


 一瞬ひやりとした。

 人形達のことが脳裏をよぎったからだ。

 しかし"観察"したところただのゴーレム。


 顔もなくただ大きいだけの不出来みたいな見た目はでくのぼう。

 人形たちに感じられた共通の美意識はそこにない。

 ほんのちょっと安心する。


 しかし相対した現場は違う。


「お、大きい!」


「これはマズイぞ、みんな!」


「ロッズ知っているのか?」


「ああ、安い石製じゃなくて高額な木製だ。頑丈さが比じゃない。練習用の鉄剣じゃあ、傷すらつかないだろうな……」


 この大陸では木の方が卑金属より強い。

 卑金属が弱くなっててその分の価値が木に行っているとも言えるが。

 そして目の前のゴーレムは純木製。


 ミアたちを発見し警告すらなくその大腕を振るう。


「散れ!」


 バンの号令と共に全員その場から離れる。

 幸い空間は拡張されて広くされている。

 ゴーレムの初撃は床のほこりを巻き上げるだけで済んだ。


「い、勢いだけなら床に穴があくかと思ったんだがな……!」


「床も、実質壁と同じなんでしょーね!」


 そしてバンはすぐさま足を踏みかえて攻めに転じる。

 ゴーレムはどうも私が作ったノーツたちに比べ判断が遅いらしくうでを振り下ろしたまま。

 引くよりも先にバンの槌が届く。


「カァっ!? やっぱかったい! わかってたけどさ! これで……」


「サンキュ、理論の方はオーケーだ」


 バンの槌は当たったのに弾かれる。

 ひしゃげてしまいそうだが……むしろロッズたちはニヤリとした。

 その手には鍵のようなマークのアクセサリを握って。

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