十三A生目 罠師
スタンスライムは普通の魔物の中に感電能力の高い魔物。
魔物として電気のある環境に暮らしているがその欠片からは電撃の力がこもっている。
なにがいいかってリチャージできるのだ。
雷の力イコール電気とわかれば後は簡単。
普段は安全用に広めに柔軟なジェルで覆いそして容器につめておく。
使う時はぶん投げる。
実はこれ元々失敗品だ。
キュウビ博士と話をききつつできたはいいものの……
使い捨て。威力が低い。量産が少し難しい。
本来やりたかった『雷撃魔法の汎用使用』だの『新たなる電池』だのに関しては頓挫していた。
そう弱点は電撃を逃がす力のある鎧の上からだと大した効果が見込めない。
必ず相手の生命力削ってそのあと急所に当てる必要が出てくる。
防犯グッズとしてもダメダメなので倉庫行きになったわけだが……
まさか引っ張り出して量産することとなるとは。
前のときと違って新たにやれそうな作り方も増えたのでよかった。
雷撃は自動的に相手の身体が麻痺し気絶させるまでを判定させる。
そうこれは医療自動診断魔法の雛形だ。
逆の使い方をするはめになるとは思わなかったが。
そして医療自動診断らしく相手の生命を奪わないようにされている。
そこらへんの仕組みを込めるのは結構楽しかった。
安全策は何重にも仕込んでおいて間違いはない。
さて戦闘は結構有利で進んでいる。
それもそうだ。
人数が違うし。
ただ誰かが斬られるたびに鉄剣が木剣による削られおられていく。
光を纏っていれば武器耐久力減少は少しは防げるが……
武装がそのまま強さに引き立てられやすいニンゲンは武装の力がたりなさすぎたらそれも武器への圧力になってしまう。
結局壊れやすいというわけだ。
そして武装がなければ一気に戦力が落ちる。
「おーい! もう折れちまったぞ! どうすりゃいいんだこれ!」
「想定通りです! はいどうぞ替え!」
後方から新たな鉄剣が渡される。
それを受け取り再度前に出た。
休む暇なんてない。
「わたしの、攻撃も、前よりは……!」
ミアは大きな鉄剣を振るい武技で一瞬でX字に剣を振るう。
強く残る光が見た目にも美しい。
敵兵士が斬撃の威力に押され転んだところにスタンスライムをぶつけていく。
少しずつだが数を減らしていた。
大局的にはそこまで大きく負けることはなく多少の怪我程度で抑えられている。
まさしく誰もがわかる時間稼ぎだ。
兵の総数もきいていた数よりだいぶ少ない。
兵舎からすでに領主館内に詰めているとみていいだろう。
ものの十数分で広場での戦いはカタがついてしまった。
「終わった! こいつら縛り上げるぞ!」
「予想していたよりも、損耗が大きいかもなあ……」
「まあ、中なら武器開放やあれこれ、使っても問題ないんだろ? それならなんとかなる」
「予想通りなら……だからねー!」
ゴズたちが調子づきそうな時にバンが手をたたきながら締める。
実際この先からこそが危険だ。
偵察通りの状況にしてあるはずだから。
魔力がうずまきすぎて扉からまるで悪臭のように漏れ出している。
斥候班がチェックし罠が仕掛けられていないのを確認。
その上で鍵をあけた。
「行けるぞ!」
「了解! A班行け!」
「わかりました!」
「「へいへい!」」
A班……それはミアとゴズ、ウッズ、ロッズそしてバンの5人。
彼らが先に突入する手はずになっていた。
なんやかんや私がいない間にも確かな信頼が冒険者たちの間にも生まれていたのだ。
私は"以心伝心"の力でミアと一部感覚共有する。
「あ、見えてますか? 聞こえてます?」
「問題ないよー」
ニンゲン相手に嗅覚をつないでも意味が薄いので見て聴くことに。
ミアから見た景色は廊下。
そういきなり廊下なのだ。
「予想通り、中はメチャクチャだな。砦ということを差し置いてもこれは……」
「迷宮化してあるとはなあ。人工迷宮なんて、金いくらかけたんだか」
「空間拡張系の魔法を複雑に展開したことで、本来そのまま広がるはずの空間が、入り乱れてどうこう……だったな」
ゴズは短剣を手癖で回しながら語る。
だいたいそのとおりだ。
普通はやるもんじゃないが……やれないこともない。
人工迷宮。
それはまさしく難攻不落の要塞だ。
ウッズは長棒を警戒するように構えつつ前へ出る。
ロッズは槍を振り回さず使えるように持ち手を変えた。
そのまま罠がないかチェックしながら廊下を駆けた。
近くの扉近くにみんなが転がり込む。
罠をチェックして……
「……あるなこりゃ」
「あり……ますかね?」
『そこ、罠あるけど解除できそう?』
ゴズとミアと私が罠について話す。
さてはてしっかり仕掛けられてるなあ……