七A生目 採取
魔力念力で運んだ3人に通行人たちがギョッとしてその影響で男の子も気づきギョッとして。
そうこうアリはしたけれど無事冒険者ギルドまでついた。
シドニーさんには先程別れたばかりで驚かれたが事情を話すとその目を少しだけつむり首をふった。
「わかりました……それならば、私達にまかせてもらいましょう」
シドニーさんはさっそく3人を起こすと軽く現状を説明し彼らに選択を突きつけた。
「さて。哀れな貴様らには2つの選択肢が残されている。1つは犯罪労役に就くこと。もっとも苦しいとされる労働現場で採掘だの建築だのを行い、それに対してたいした保証もなく使い捨てられる」
シドニーさんの話を聞く内に彼らは顔面蒼白といった具合に元々悪かっただろう体がさらに悪化していくようにも見えた。
どうやら彼らも送られる可能性があるところについて少しは知っているらしい。
私は知らない。
「いつ毒ガスが出て、崩落してしまうかわからない現場での作業……果たしてまともな環境は私も知らない。なぜなら、生きて帰って伝えてきた情報がほとんどないからな。話すのは、それらを遠くから指示をとばしていたものたちだけだ」
「お、おねがいします……! それだねは……」
「フム。しかしプラン2はさらに厳しくもあるぞ」
彼ら3人はこれ以上の苦しみが存在するのかと想像しまた倒れてしまいそうになっている。
ちなみに彼らは私の顔を見たことはないので今普通に近くに座っているが気にされていない。
シドニーがむしろいつの間にか気絶させられた相手だと信じ込んでいる。
「お願いします、おねがいします! うちら、普通に働いていたのに、いきなりなにもかも取り上げられただけで、それで食うに困ってぇ……!!」
「だからと言って、子どもから奪っていい道理にはならん。わかるな?」
「ひいぃぃ!!」
「では2つ目だ。貴様らがあの子に誠心誠意謝罪するのならば、ここで働き、奉仕活動をしてもらう。衣食住はついてくる。当然、他人を金欲しさに襲わない教養もな。体は張ってもらうし、とんでもなく疲れることもある。そこに嘘はつかん。どうする?」
「そ、それって……」
3人は互いに顔を見合わせる。
なにせここが冒険者ギルドなのはもう知っていること。
つまり冒険者になれということだ。
彼らも市民だ。
冒険者のことは恐くなんなら嫌な感情すら抱いているだろう。
暴力の側面を持つものに自分がなることを想像すらしないことはそこまでめずらしくもなんともない。
なので彼らが職をなくし心に傷をついた段階でこういったアクティブな選択は取れなくなる。
それに現実的な話冒険者は体や道具という資本が大事な生き方だ。
先立つものを奪われたら視野狭窄にもなるしリスクは避けたくなる。
そもそも……そんな風に働いてどうなるのか。
彼らの無気力は理不尽な権力による押収からきている。
果たして今度は奪われない保証はどこにあるのか。
そして誰がそれを守ってくれるのか。
彼等が顔をうつむけ苦しげな表情をしたのはそのためだった。
「俺たち……きっと目をつけられてる……俺たちを囲ったら、きっとここも目をつけられる……」
「もう嫌なんだよ……失うのは……」
「フム、やはり貴様らは冒険者というものを知らないと見えるな。冒険者というものは、集団で自由をうたう者たちなのだ。私達の動きは、ある意味政治と対立するものだ。暴走しやすい権利者たちと対立し、監視し、弱者を保護する。そして手に職も渡す。国がやらないのだからな、代わりにやるのが我々だ。わかるかね? 我々は現領主の不当な行いを糾弾し、跳ね除けるためにある」
「は……?」
「どういう……」
「つまり、冒険者ギルドは権力の不正弾圧を許さんのだよ。我々は、生きている限り平等で、自由である! それこそが、我々の掲げるものなのだよ奪われないように立ち上がれるものは、歓迎しよう」
基本的人権。
それはこの世界で未だまだない概念ながらこの世界に来た異世界人たちがこぞって持ち込んだもの。
冒険者ギルドを立ち上げた者の掲げた自由であり全てに在らねばならぬもの。
世界は冷酷で残酷な面もあるからこそそういった大きな旗がいる。
いまだその言葉は宣言されてなくても冒険者たちが掲げるのは間違いなくそれだ。
シドニーさんはあくまで何も表情を変えない。
だからこそ当たり前のことを淡々と言っているとわかる。
3人はそこに何を見出したのだろう。
「ここで……働かせてください」
3人ともそう言うのに時間はかからなかった。
そのあとは彼らに水や食料を渡された後最初の仕事でして先輩についていかされた。
薬草採取だろうな。




