一A生目 医療
Aは一千ってわざわざ書くと数字の動きがゆるくなるための処置です
ホルヴィロスとああでもないこうでもないと話し合う。
するとさらにひとりが外から来た。
私のゴーレムであるクオーツ。
全身が美しい宝石でできているような姿でニンゲンこどもぐらいのサイズのゴーレム。
メチャクチャ今日もかわいらしい姿だ。
「こんばんは、ローズ様、ホルヴィロスさん。一体そんなに話し合われてどうしたのですか? わたくしは普段通りの時間に来ただけですが」
「ああ、ちょうどいいや。実は今悩んでてね――」
そのままホルヴィロスが経緯を解説する。
するとどんどんと目が遠くを見出した。
クオーツはそういう点がわかりやすい。
「――とまあ、どうかなあ?」
「ワー、トッテモステキダトオモイマスー、イイトオモイマスー」
「うん、難しかったからそうなるよね……」
「そ、そうですよ! お医者様の話は難しいんです! 魔法も最近覚えだしたのに、医療なんて遠い世界の話されてもわかりませんよー」
「ごめんごめん」
ホルヴィロスがテヘペロ顔で謝る。
これでも普段は神聖なくらいなのに私の前だとおかしいんだよねこの神……
ちなみにシュイソマティス……シュイという居候の子はすでに活動的になり外で遊んでいる。
ホルヴィロスが細かく見ているから平気だ。
こういう会話しているときに平気で首突っ込んでわからないのに荒らし回るのでむしろ外にいないと困ったりもする。
ふむ……わからない、かあ……
「……ああでもそうか! わかりづらいのか……だったら、考え方を変えよう」
「考え方を? ローズには何か閃きがあるんだね?」
「うん。発想の逆転と言うか……これなら1つにまとめられるかも。あくまで1つの魔法、1つの道具として扱えるのなら……それに、思いついた範囲なら、既存の魔法を応用するものだから」
今ざっくり考えたものを板に書き写していく。
ここの部屋には黒板みたいなものがありホワイトボードとして使っている。
いわゆる魔法石筆だ。
「ふむふむ……医療サポート魔法?」
「うん。私は……というか特にホルヴィロスは医療知識があって、常にそのことを考えてもいるから何かただしくて何が間違っているかまあまあ判断つくけれど、逆に専門以外は医療は『わからない』だけじゃあ、命にかかわるから危ないよね?」
「まあ、そうですよねえ。わたくしはほら、ゴーレムなので、医療ではなく工学になりますけれど」
「まあね。でも他人にやるのに困るかもしれないから、覚えておいてそんはないけれど」
「ああ、それはそうですね!」
「例えばの話なんだけれど、ずっと昔の剣士はね、傷を治すには剣に薬を塗ると治ると信じられていたんだ」
「えっ」
「ああ……」
クオーツは驚いて絶句しているがホルヴィロス察したらしい。
目で続きをうながされた。
「それで当然剣に薬を塗っても良くなるわけないけれど……実は、理由があるんだ。その『薬』と呼ばれるものがとても質が悪く、なんと傷に塗ると悪化してしまうんだよ。だから何も塗らないほうが傷口に良かった、というとんでも状況でね」
「えっ、えっー、薬、薬なんですよね? 毒じゃなくて?」
「知識がなければ薬も毒になるし、そしてただしい知識がないゆえに変な思い込みがはじまる……まあ、典型的な民間医療のオカルトの始まりだよね」
ホルヴィロスが締めてくれる。
その間にも私はとげなしイバラでカツカツと書き進めていく。
「そう! つまり現在の急務は、何をどうしたらいいのか、これは大丈夫なのか、判断出来る力!」
そして大きく自動学習医療補助魔法と書き丸で囲む。
「それはもしかして、看るヒトを作るってことなのかい!?」
「そう! そして看るだけなら、肉体はいらない。相手の正体を見抜く能力や、状態を正確にはかる能力はあるんだ。だったら、それを応用しなおかつ回復の魔法の1つとして使う……!」
私は思いつく限りいくつものとげなしイバラで石筆を持ち書き連ねていく。
とりあえず最初は閃きを形にしよう。
穴を埋めてまとめて整理し使いやすく直していく作業は後だ。
「え、えっとつまり、これはどうなるのですか?」
「なんと、医療と聞いて空を見上げていく顔をするクオーツも、正確な対処が知れるようになる。そう、あくまで『そうじゃないか』がわかる魔法であって、やるかどうか本人の技量、特に医者とかにかかる……!」
「精密な検査はやはりプロにまかせてよ。それよりも、これなら痛くないからとかいって、由来のしれない液体を塗りたくって医者にかかるのだけ避けれれば、なんとかなる」
ホルヴィロスは苦い顔で言っているので多分なにかあったんだな……
そんな目にはあいたくないので私としてもこの魔法を完成させる意義はありそうだ。




