九百九十三生目 宴会
エイナや-VVから必要な情報をあれこれ引き出した。
元領主についてはかなりのデータがあるもののどこで何が役立つかわからない以上大事にしておくべきだろうか。
その後は……普通に楽しんだ。
なんやかんやとここで当たり前のように楽しむ機会はなかなかなかったので楽しめた。
VVは裏に引っ込みエイナもつきっきりだ。
監視の目なく楽しめるのはいいことである。
その日1日たっぷり楽しんだあと私達は最後のお疲れ会としてホテルの会場を借りた。
「「かんぱーい!」」
そして宴会だ!
みんなは楽しみに楽しんで最後まで楽しんで終わることとなった。
ダンみたいに一部心に傷を負ったものはいたものの。
「お疲れー」
「はぁー、今回はつかれたのう」
「アカネ! それにキュウビ博士!」
キュウビ博士は腰に手をやっている。
アカネは酒を飲み飽きたのか果実水を飲んでいた。
「だいぶ楽しませてもらったから、これでダカシに自慢出来る!」
「お手柔らかにね……」
「きょうだい仲良くするんじゃぞ、唯一の肉親なのじゃから」
「言われなくてもわかってるって! ダカシがもうちょっとしゃきっとすればいいのよ。ああみえても、魔王から世界を守ったひとりなんだから……」
それを語るアカネの顔はどことなく自慢げで。
それを自覚したのか慌てて果実水を飲みごまかす。
なんともどことなくきょうだい愛があっていいようだ。
「あ、そうだキュウビ博士。新しい開発の話で少ししたいことがあって」
「ん? なんじゃ藪から棒に。」
それからエイナが作り上げたインターネット無線環境や私が思い出せた範囲の通信環境についてはなしていく。
最初はよくわかってなさそうだが進めるうちに何かピンときたらしい。
キュウビ博士は次々質問を繰り出してきてアカネが呆れてどこかにいってしまう。
そしてひととおり話すと博士は深くうなずいた。
「なあるほどなあ……発想がいい。そういう利用方法があったか。何、やろうと思えばできなくもないとは、考えてあったのじゃが、整理するほど興味がわかなくてのう」
「正直、全く未知の分野ですしねえ」
「ま、あるものではあった。やれることが増すというのがわかるのなら、予算も引っ張ってこれよう。ワシの発明で似たようなやつを繋げていくだけじゃな。だとすればまず……」
そのあとぶつぶつとひとりごとを話しながらキュウビ博士はどこかへ歩み続ける。
どうやら考え始めたらとまらなくなったようだ。
ダンのところはインカ兄さんがたむろって慰めていた。
今回のことはダンの巨体に深い傷を負わせた。
それは酒では癒せないタイプのものだ。なぜなら酒の失敗だから。
なので運ばれてきた料理をこれでもかと口に入れていた。
「くっそーー金ってこええ、酒ってこええ、それに人ってこええなあ……」
「ほらほら、酒は飲まれるなってやつだ。敵とおなじだ。倒されるまで立ち向かっちゃだめなんだよ、倒しきれるまでが戦いなんだ」
「なんかふけーのかあせーのかよくわからん言葉だなあ……まあいい、とにかく今回は、あんたのきょうだいに助けられたぜ。借りっぱなしばかりで、なかなか返す機会がないがな……」
「ソレは俺もだ。妹は、いつも驚かせてくれるしな……それになぜか、今弟になっているし。初めて見た時は驚いたと言うより、また何かやらかしたなっておもったよ」
「ひどい言い草だな! まあ気持ちはわかるぜ。そもそも見た目別人だもんな。纏ってる雰囲気が同じだから、なんとかわかったけどよ」
「ああ、それ分かる。なんでかな? 妹は独特な雰囲気纏っているよな。きょうだいだからわかるものかと思っていたけれど」
「俺もわかるぜ。気づいたら背後にいそうな気配というかさ……」
なんだか私を肴に話が盛り上がっている。
ほっとこうあれは。
食事は満足できるものだった。
やっぱこの大陸えげつないほどに野菜のうまみが強い。
朱の大陸はもっとアクとかで調理に苦戦したのを上手にやれば食べられる感覚だった。
こんにゃくやごぼうのうまいと人参やレタスのうまいは全然違うのだ。
種類なのでそこに差はない。
ただやはりこの大陸の野菜はおいしい。
「くったくった」
「なんだか今回は、遊んでいただけでしたね……」
「こういう日も偶にはいいんじゃない?」
「忙しそうなのもいたけどねえ」
「妹はいつもそうだからなぁ……」
「わかる、そうだよな!」
「ワシは正直疲れたわい。開発機材から元気を補充せんと……」
「明日からまた、仕事ですね」
「みんなで、また遊びに来ようね」
口々にそう話しつつR.A.C.2から離れた位置に立っていく。
エイナたち従業員が何人も遠巻きに揃ってこちらを見て。
深々とした礼の中私達はワープしていった。




