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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
狂った境界と踊る神々そして大きな賭け後編
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九百八十四生目 沈黙

 2列目に入ってから引いた牌。

 これはさきほどユナが求めていた牌だ。

 まさかここで来るとは……


 どうやら私も勝つための泥臭い1撃は運が来るらしい。

 M牌の8。

 ユナに目線を送りこれをだす。


「それを受け取ります。ポン!」


 表にひっくり返された3枚の同じM牌の8が揃う。

 これでユナは聴牌に入った。


「へぇ、点は低そうだけれど!? こっからどうしてくれるのかなー?」


「他人のことを心配するより、自分のことを心配したほうが良いですよVV様!」


「大丈夫、今、振り込むなんてことはしないさー!」


 ガンガンと進んでいく。

 3列目に進むことでもはやみんな必死だ。

 1つの動きも見逃せない……そんな顔をしている。


 互いに煽りながらもゲームが進んでいく。

 ユナが1つ牌をとって顔色がかわった。


『これは……』


『どうしたの?』


『8Mが来ました』


 うそここで4枚目!?

 同じ牌が4枚揃えることも1つ大きな手だ。

 詳しいことはともかくカンとすることで4枚集められる鳴きになる。


 点があがる他もう1回牌を引ける。

 大きなチャンスであり同時に賭けでもある。

 実はリスクもあってランダムで1つ他の牌がドラになる。


 他人が持っているのがドラになったら大赤字になるかもしれない。


『やるかどうかは、任せるよ』


『わかりました……正直いってわたくしめたちが生き残れているのは偶然です。VVやエイナさんたちはいつツモるかわかりませんから。これを何度も繰り返すのはあまりに線が細い。今飛び込む勇気が必要かもしれません。それに……』


「おーい! そろそろやってくれないと困るよー!」


 VVから催促が入る。

 しかしユナは掴んだ牌に力を込めるのみで顔はかわらない。

 そうその顔は……


「こっちのほうが、楽しいですよね」


 そう念話ではなく発言した。

 あの笑顔で。


 凄まじく強い意志は時折運命すら捻じ曲げると言う。

 ユナは牌をひっくり返して見せて牌を他の8Mと合流させる。

 堂々と宣言する。


「カン!!」


「カン!?」


 ユナの宣言に驚いたのはVV。

 なにせ大きくこれで物事がうごく。

 そしてユナは1つ牌をとる。


 この取るところの牌を嶺上(リンシャン)牌と呼ぶ。


「さあ……来い!」


「まさか……嶺上開花(リンシャンカイホウ)狙いですか?」


「うっそ、あんな漫画みたいな技狙いだなんてそんなはず!」


 ユナは慎重に牌をめくる。

 この1つで大きく変わってくる。


「次がある、と戦っていて、なくって後悔はしたくないんです。だから……これに賭けています!」


 ユナが見た牌はなんなのか。

 目をつむりさっきまでの殺気がなりをひそめる。

 そして牌を並べた。


「まさか……」


 VVが声にならない悲鳴じみた言葉をつぶやく。

 きっとこの短時間でいくつもの思考が巡っているんだろう。

 顔色があからさまに悪くなっていた。


「これでトドメです!!」


 ユナが手牌をひっくり返す。


嶺上開花(リンシャンカイホウ)っ!」


 ドンッとひっくり返された牌たちはきれいに揃っていた。

 1と9と字牌のない役断么九(タンヤオ)

 カンからの牌で揃う嶺上開花(リンシャンカイホウ)


 そしてドラが1つ。

 合計たったの3翻。

 しかしエイナは難しい顔をして計算する。


「こ、この戦いは絶対に負けない……そうだよね?」


「これ、は……」


「いくつも予防線をはって、その上で仕方なくとも引き込んだ場で、まさかさあ、このアタシが本気で挑んだ場でさあ、まさか負けるなんてないよね……!」


 今思い返すとそうかなといったことがいくつもある。

 本来やれたらいいなというプランが懐柔プラン。

 懐柔が破綻するのも見越して酒を強力なものたちを多く配置しておく。


 エイナをずっとそばにつけたのは単純接触効果を狙ってのもの。

 VVという初見の相手に懐柔されづらくともエイナという数日過ごした相手なら話は別。

 それに酔わせればどうとでもできる自信もあったのだろう。


 まあ私の悪運はそこそこあるので全て裏目を引いていたんですが。

 そして今勝負という絶対的VVとエイナ有利の盤面でお膳立てさせられた環境で。

 まだ次があるからいつでも勝ちにいけるという慢心さを呼び寄せる場で。


「30符3翻……5800点……です。ツモ和了りなので、6000点……」


「そ、それじゃあ……」


VV  35600

エイナ10400

ユナ 38400

ローズ12600


 嶺上開花の勝算はあった。

 河は3列目に入っててその河に足りない牌がない。

 さらにイカサマ探知していたときに手牌にもないのをユナは見ていたはず。

 ならばリンシャン牌にあってもおかしくないのだ。


 場が一瞬の沈黙が支配した。

 このあと起こることを呼び出すかのような。

 そんな待ちの時。

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