九百六十五生目 民主
私が最初にいた領地の領主一族側の情報が明るみに出て。
後で本当にどうにかしないとなと思いつつ疑問を同好会の面々にぶつける。
「……それにしても、なんでそんなうそをついたんだろう。蒸発と、時期のずらしを」
「事情はいくつかあるようです。まず蒸発に関しましては、やはり、
醜聞を避けるためです。単なる領主ならば、心配の方が勝つでしょうが……」
「ああ……色にまみれて非合法なことに手を出していたもんね、そこらへんのこと、どれが原因かわからないけれど、どれであれそのタイミングで消えたら良い噂はたたない……」
「ええ、ですので領主はしばらくの間床に伏せ、その後亡くなったと公表しております。まあそれでも、やはり多少は醜聞の噂はありましたが……」
「それもそうかぁ、多分そのタイミングなら、無茶な色狂いで病をもらったとか、そういうとられかたはするもんね」
実際対策のしていない夜の行為は死の危険が伴うものもある。
まあ今回は関係なかったが。
「そして時期は、まず前提としては密かに捜索していた頃があったためです。そしてやがて打ち切り、方針を変えました。悪用することへ考えを切り替えたようです」
「それにしても、いくらなんでも子供の年齢周りはバレるとは思うんだけれど……なにせ、権力者たちの間で認知されているだろうし」
「ここがかなりややこしい状態でした。前提として少なくとも『領主の子として認められるのが』3人います」
わあ……色狂い。
「領主の子は順に、男、女、女で、長男と長女は年が近く、次女はやや年が離れています。次女は別領に行き婚姻しているので置いておくとして、現在実質傀儡になっているのが、この長男と長女です」
「うんうん」
私は話の続きをうながす。
年齢詐欺トリックのだ。
「そこに、『自分は領主の子だ』と名乗る子供がやってきたとしたらどうなると思いますか?」
「わぁ」
思わず間の抜けた声をもらす。
わぁ……
あっでもだ。
「その子は、実在しているんですか?」
「それが問題なんですよ。少なくとも彼らが用意した子自体はいる。それで将来を見据えて才のある子を護り育てるため、領主代理をしていた者たちが摂政になり、家族一同でその子に領主を移しつつ、やっていくようにする、と」
「いくらなんでもそれは通らないんじゃないですか?」
「これで、さっきの前領主のいなくなった時期ズラシが利いてくるのです」
え? あ! ああー……!?
「……まさか、前領主がその子に、『託した』設定に?」
「そのとおりです。なので、結果的に摂政そのものは正しく使われています。ただし、本人はどこにいるのかというのと、実権を握るものは誰なのかは別として」
「……そこまでして何をしようと? いや、そうか、尻尾を残してるのか」
「そういうことです。いざというときに責任だけを取らせる気ですよ彼らは」
いや通らないだろそれは!
しかしきっと通るようにしてしまったのだろう。
根回しは時に黒を白に出来る。
そんな私の顔が出ていたらしく同好会の面々は軽くうなずいた。
「残念ながら何重にも偽装しているうえ、ここの国の領主は貴族みたいな立場を持っていません。民主的かと言われれば、かなり疑問はありますがね」
まあ……わかるっちゃわかる。
今のはきっと本気で徹底的に洗い出せばニンゲンたちにもわかる話だ。
しかしそれをされないように義務を果たし地位を確保し続ける……ようにした。
その犠牲がどれだけあってもだ。
龍脈もやっぱその関係かな。
ニンゲンが本流をいじるのは無理だが毛細血管みたいな細部をいじるのは……できる。
勝手にやったらほとんどの国で大犯罪なだけで。
ちゃんと頭数と装置とそれ相応の知識を持つ頭がいれば。
龍脈は星の中から出る力で表面……つまり地表に流れるのはごく一部。
そのごく一部のさらに細い毛細血管のごとき先端を少しいじれるだけ。
ただしそれだけで地方1領地が傾くレベルなんだが。
確かに龍脈の提供はだれにとってもらうまい話だろうからなあ……
「とりあえず、その件含めて後から協議しよう。今は、目の前のことに集中させてほしい」
「ええ、もちろん」
「ありがとう」
短いやり取りで話を締めくくる。
さて……今回の事件全体的に何処かで何かが繋がっていたりする。
VV関係も何か別のことに繋がってなければ良いけれど。
私達は15名で黑スーツを着込み歩む。
それは異様な空間を醸し出してもいる。
ジャグナーが抜けミアが入り。
さらに女性たちやエイナもそこに加わって。
私達は真にこのR.A.C.2を支配するものにぶつかる。
顔の無い神は武力よりもこういったものの方がよほど効くのだ。




