九百五十四生目 半裸
食事を終えた私達は早速サーカスの方へ歩みを進めた。
エイナも合流してくれる。
今日は肝心なVVとの会う日だから気合を入っているだろう。
「それにしても……サーカスって何をやるところなんだろ〜?」
「曲芸の披露……というのがわかりやすい説明になりますね。サーカス所属のものたちは、R.A.C.2の中でも指折りの実力者たちです。その芸を見に来るものたち、その後の楽しみをしに来るものたち、多くの者たちがここで楽しむ目玉です」
「それは楽しみ〜!」
「曲芸か……あれってメチャクチャ身体が柔らかくないとできないんだよなあ。俺も苦戦したよ」
「あ、インカ自分でやったんだ……」
そんな他愛無い会話しつつ入場。
エイナが軽く手続きしてくれて特別席に座れた。
普通は座れない全部がきれいに見える高い位置かつ近くで隔離された席だ。
あっという間に席が埋まっていき私達はそれら含めて見下ろせる位置に。
ちょっと壮観だ。
みんなも来ているだろうか?
そして掛け声と共にサーカスが始まっていく。
多分だけれど。
みんなの気配を探っていたら出遅れてしまった。
ちなみにこういうところから見るための片手で持てる望遠鏡も用意されていた。
いわゆる取っ手付き双眼鏡。
なんだか本物のお貴族様になったみたいだ。
まあ私はそんなの使わずとも"鷹目"で見られるんですけれど。
ハックが面白がってそれで見ている。
さてさて始まって真ん中にライトに照らされてひとりの女性がお辞儀している。
……? なんというかあの服装変じゃない?
確かに曲芸師の服だが。
「わぁ、すごい! おおきなボールを乗りこなしているよ〜! わわっ、危ない!」
「いや、平気だ。今わざと重心をズラした。体勢だけみればあそこから攻撃にも繋げれるな。ほら、軽く立ち上がってる」
「なるほど、ギリギリを演出して客の関心をよんで……じゃなくて、あの服は、何?」
私はサーカスの団員たちの服装を見回す。
ひとりがおかしいのかと思ったら違う。
出てくる人物みんなおかしい。
どうおかしいかと言えば半裸である。
曲芸師が奇抜な格好をするのは珍しくもなんともない。
ただ服を着込んでいないのはなんともおかしい。
あとさっきから女性ばかりだ。
火の輪くぐりさせる側とする側もニンゲン女性なのなんでなんだ。
それと目線をそらせば。
名前がかかれた看板が遠くであがっている。
んー……? あの数字が書かれているのは……
詳しいことはエイナにきけばいのだろう。
ただなんというか聞きたくない!
空中ブランコにうつるとヒラヒラした服装で見えそうで見えなかったりしている。
なんだありゃ……
「ねえねぇ、エイナさん〜、あの看板ってなあに〜?」
そんなこんなでなんのためらいもなく弟のハックが聞きに行く。
エイナは少し考えるそぶりを見せて。
「あれは……ここのサーカスのウリですね。簡単に言えば、彼女たちの1日を買う権利を得られるポイントです」
「1日を買う……? 一緒に行動できる、ということか?」
「ええ。ツカイワ様一行も何度かR.A.C.2の中で見られた方も多いでしょうが、ここで共に過ごす女性を買い、一晩過ごし、またここに来ます。彼女たちが行うのは接待ではありません。護衛、共演、世話、そして快楽……どれをとっても1流。故にあそこに立ちます。彼女らは唯一、安売りされない存在なのです」
「か、かいらく?」
「ええ……ただし、彼女たちが望めば、ですが」
インカがかたつばを飲みながらたずねるとエイナはそう思わせぶる。
なんというかサーカスがまさかニンゲンオークションみたいなものになっているとは。
えぇ……大丈夫なのかこれは。
単に曲芸見に来たのになんだかよこしまな雰囲気ただよっちゃってるよ。
それにしてもみんなさすがというべきか当然のように魔法弾を投げあってお手玉とかしている。
外れたら爆発したり凍りつく魔法でようやる。
そこまでできるのに男に1日売るのか……と思っていたら。
最初の方で玉乗りしていたひとりがひとりの紳士に連れられどこかへ消えていった。
何人ものニンゲンが肩を落とす。
「あれって……」
「さきほど、彼女たちが望めばという話をさせていただきましたが、いまのがそうです。看板の数字は彼女たちが望む額、もちろん上乗せしてアピールも可能ですが、1番は彼女たちが望むということ。決定権は女性側にあります。そして契約後どのような関係になるのかすらも、彼女たちのゆるしがなければ何も進むことはありません。ちなみに過去、多少おイタをされた方がいましたが、翌日の朝サーカステントの前で半裸で吊るされていましたね」
な、なるほどーー……




