九百四十一生目 御免
私は鎧と剣との戦いで男とはいえ普段とあまり変わりないように考え動こうとしている。
全身アーマーも発動させてないから空も飛ばないしビームも出さない。
理由はいくつかあるが1番は私がわからないからだ。
私が今お試しで組み込めるほどの余裕はない。
相手のレベルはわかっても相手の武具レベルだなんてわからないし。
果たしてあいつがどこまで強いのかは不明。
だから弱点でとにかく攻めきる!
「ガハッ、だ、ダガッ!! 我が蓄えた力、この程度で消えはせぬ!!」
「そう、じゃあ力の源を絶とうかな」
ヴァルディバラードの……鎧と剣の背後に怨念のような黒くおぞましく粘りついたオーラが大量に溢れ出す。
こんなやつ相手にまともにやってられない。
というわけで。
聖魔法"ピースマインド"そして発動をズラし"セパレーション"!
同属性魔法同時発動による属性破壊光線化をさけてちゃんと魔法として発動させる。
まずは相手のオーラを治療して。
いきなり黒いオーラが消えてしまって驚いている様子。
それだけでは済まない。
私の両腕にしっかり魔法を蓄える。
多分これが1番効くと思います。
「ナニヲ……!?」
「ハアッ!」
私は相手の剣と腕を鎧越しにつかむ。
光による力で防がれていて見た目よりキケンじゃない。
そして力を込めると……
「ガガ、グガガガ!?」
鎧や剣がガタガタと鳴り出す。
イメージするのは中身との分裂。
あの縛り付けていた全身の根を……引き剥がす!!
「キサマ、聖職者!?」
「そこまででも……!!」
言われるほどではないな!
ただ服を魔法を使う過程で自動着替えを行えば白い法服はまるで聖職者に見えただろう。
そして改めて力を込め光が強まり引き剥がしていく。
「バカナ……!?」
そうして関節ごと剣と鎧を引き剥がす!
何か鳴ってはいけない音が鳴り響く。
同時に剣と肩周りの部分から外れた!
よし!
生身の体があらわになる。
それはまるでこの剣を握っていたと思えぬほど脱力した腕だった。
「呪いの装備も、身につけられていなければその能力はひどく低下する……」
「おのれエエエ……!」
よく言葉の綾で服に着せられていると称することがある。
実際のところそれの究極版だ。
私は剣に乗っ取られないように即席で"銀の神盾"を使い封印結界を作る。
一瞬で鎖のような黒い墨が走る。
実は封印に関しては影や邪の力が機能するんだよね。
聖なる力は逆に力をここから逃してしまう。
そうしてから地面に投げ捨てた。
「さあどうする? もはや派手に振り回す剣の技はできなさそうだけれど」
「ナメるなああぁ!!」
そう叫ぶと鎧のあるほうの無手から光で刃が生成され両手で構えた。
わあなにそれしらん。
聞いてないですね。
「シネッ!」
「わっ!?」
死にたくないので飛びつかれたら避ける。
斬り裂かれた空間は黒い痕跡を残していった。
絶対触れちゃだめなやつだ。
観た感じによるとあれは怨念の塊。
斬られたら呪われるかも。
派手に連続で切り裂いて来るのをスレスレで避けつつ。
大きく飛び上がっての袈裟斬りに関して背後に転がり込む。
聖魔法よ!
「"ホーリースラッシュ"だ!」
「カッ!!」
振り向きざまに放ってきた刃と私の輝く魔法剣がぶつかり合う。
剣ゼロエネミーだと多分全部斬り倒してしまうのでこれがちょうどいい。
何度も剣を受け止め弾き体幹を崩して。
怯んだところに蹴りを込めつつ魔法を準備。
聖魔法"セパレーション"!
輝く光が私の両腕に宿る。
そしてこう。
転がったところに一気に近づき組み付く。
鎧と首まわりに力を込めて……
「ヤメロオオォ!!」
当然大暴れしてくる。
対抗して力をこめ抑え込む。
大丈夫パワー負けはしていない!
「はああぁぁ……!!」
「カガガガガガ……!!」
戦いとしては地味ながら確実な勝利には多少覚えがあってね!
力をこめて両腕で首周りの鎧隙間を剥がしていくとどんどん光が溢れていく。
抵抗するが関係ない。
その命絞り尽くす前に……
「この鎧はお役御免だ!!」
「ギャアアアアアアッ!!」
もはや呪いと聖魔法がぶつかり合いまくり雷のような光が走りまくっている。
向こうもそれほど必死ってことで……!
せーの!
鎧がメキメキと音をたててひび割れ開いていく。
一気に指を入れ引き剥がしにかかると向こうも拳をこちらの頭に無理やり当ててくる。
負けるかぁッ……!!
「ハァァッ!!」
鳴ってはいけない音と共に光あふれ御開帳。
どんなもんだいということでそのままぶっ壊す!
「モット……キッテ……コロセバ……ダレニモマケナイ……サイキョウノ……武具二……」
鮮烈な光と共に……砕け散った!




