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百九十八生目 精霊

「キミもわかっているんでしょう? その恨んでいるらしい相手とさっきのカムラさんは、似ているかもだけれどもあまりにも思っていた力より弱すぎると」

「関係ない!」


 そう言いつつも少年の心に動揺が走る。

 今のは少年の心の奥を"読心"で見透かした情報を考えて言葉にしただけだ。

 だが内心を突かれることは想像以上に刃を鈍らせるはずだ。


 私は胸のかざりを握り"ロックボーン"を2本彼の周りに発生させて振りかぶった。

 だが彼は当然のように両肩付近に来た骨型石を2つの剣で受け止める。

 そんな少年に向かって"フレイムボール"を放って私は後退する。


「グッ、これか、さっきから奇妙な気配は!」

「さすがにばれたね、さすがにどうしようもないと思うけれど」


 火球は体ごと滑らせるように移動した少年が剣を使って切り裂き払った。

 骨型石はからぶる、が投げつけたわけではないから地面に落ちない。

 しかし私は持っていない。


 なぜなら少年が言った『奇妙な気配』がもっているからだ。

 よくよく魔力を感知すればその存在に気づくだろう。

 オプションとか子機とか言われるがそのキュートさから私は精霊と呼んでおこう。


 私にははっきりと視えるのだが精霊は複雑な肉体を持たない魔法的な存在だ。

 なんだろう、私の影響か見た目はまるですごく小さいホエハリの子を模した光の塊っぽい。

 私がホリハリーに"進化"したことで発生した。


 胸のかざりに触れることで彼らと心を介して魔法を使わせたり補助してもらったりとその幅は大きい。

 その数は2体ながらやられる側にとっては魔法が3倍は降り注ぐことになるのだからたまったものではないだろう。


 そして厄介なのか、


「クソッ、当たらねえ、実体がないのか!」

「その通り」


 分かったところで対処が出来ないということ。

 彼らはふわふわ浮かんでいるが切ろうが突こうがなんなら煮ようが焼こうが物理的干渉は受けないし魔法攻撃もおそらくほとんどすりぬける。

 敵からすれば厄介なことこの上ないだろう。


「このッ!」


 少年が火の球を私に放った。

 確かにパッと使うには便利な魔法だものね。

 ただ、なぜだろうまるで脅威に感じない。


 火の球が直進して私に触れ――

 るはずがそのまま消滅する。

 あらまこれには私も驚いた。


「なっ!? まさか上位の火魔法関連を!? 厄介な!!」


 良くはわからない、が少年が精霊の骨型石と切り合いながら漏らした言葉は聞き捨てならない。

 上位の火魔法を? "三魔"や"四耐性"のことかな?

 相手のスキルがもし下位ならば無条件に打ち消すとか?


 推測でしかないがとりあえず少年の火魔法には有利を取れそうだ。

 ただし風魔法には意味がないからそこは気をつけなければ。

 胸の飾りを通して精霊たちに指示を送る。


 精霊たちは空中からで息つく間もなく骨型石で少年の剣と打ち合う。

 なるほどこういう近接戦闘のやり方もありか。

 行動力は心を通わすたびに吸われるが私にとっては大した量ではない。


 精霊たちに骨型石を振り回させて近接攻撃も仕掛けていく。

 ガリガリと何度もぶつかって互いが削りしのぐ。

 とは言ってもこちらは息継ぎも疲れもほとんどいらない。


 そう少年に大して素直に凄いと思えるのはそのスタミナ配分。

 一時的なスタミナ、一息で動ける範囲の把握と管理が徹底している。

 スキマ無く動いているように見えて流れるように息を整える。


 少年なのにここまで卓越した武術を磨いているのもすべて、復讐とやらのためなのだろうか。

 まさに少年が全てをかけて挑もうとする相手は家族の仇か……

 ただカムラさんは違うとこちらは言い続けるしか無い。


 心の動揺に"無敵"をすり込んでいけば大人しくなってくれるかな?

 連撃を骨型石で叩き込んでスタミナが尽きるだろう瞬間を狙う。

 少年が両側の石をうまく弾き返して下がった。

 今だ。


 ほぼ同時にズッと踏み込んで左側を通って右手を伸ばす。

 "無敵"! しかも好感を持たせるように切り替える!

 そっと指先が少年の腕に触れて……


 あれ!?

 手応えが弾かれた!?

 そう、まるでさっき私が火魔法を無効化したときのように。


 だとすると向こうは上位の精神防御系スキルを?

 あ、まずい。

 驚きでほんの一瞬触れるはずが離れるのが遅れ――


「はあ!」

「っ!!」


 手の甲が素早く割かれ血が噴き出る。

 一瞬遅かったら指切ってた。

 さすがに指詰めたくない。


 精霊たちに時間を稼がせて骨型石を振るわせている間に後ろへ下がる。

 ヒー、痛い!

 ざっくりいった!


 私があまりこの姿に慣れていないとかそもそも防御系統があまり優れていない形態とかもあってかまだ3、4発程度しか喰らっていないがすでに生命力半分削られたんですが!?

 完全に相手のレベルの高さも影響がある。

 少年の動きは警戒しまくっているが物理でゴリ押しされるだけで実は死ぬぞ。


 とにかく距離を取って"ヒーリング"。

 少年はまた精霊たちと削り合っていて正直不毛。

 こちらをチラチラと見てくる目に殺意が強まっていく。


 ……!

[怨魂喰い +レベル 3→4]

 マズイな……ついに少年が私を本格的に殺しに来るようだ。

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