九百二十八生目 再開
私とミアはとにかくチェックし続ける。
どこかにいるはずなのだから。
私が辿ってきた道なりはほぼここしかない。
もちろん花街にいなかったら賭博や他の……それこそ中央あたりだろう。
顔のない神たちはニンゲン含む命のことを自らのモノとしか考えていないフシがある。
だからあんまり信用していない。
私は歩みながら結局最初に突撃したところまで戻ってきた。
ここのベッドにひとりまだいる。
よく眠っていたはずだ。
ふたりでここまで来るとさっきなんとか置いてきた助けた面々もまだいた。
きちんとした治療がまだなので鞭や拷問具の傷跡が生々しい。
まあこのあと少なくともあとかたもなくすけれど。
「あ! おかえりなさいませ!」
「あの、実はさっきの人が……」
ミアのことは目に入っていないかのごとく話し出すがここに入った時点で違和感がすごい。
ベッドの上にいたはずのニンゲンがいないのだから。
「彼女はどこに?」
「起きたらすぐ、自分の持ち物を探しに行ってしまいまして……」
「そりゃすごい」
戦闘慣れしたものならできるかもなあ。
そのような古傷はあった。
ミアに目線を送るが彼女らに覚えはないようだ。
「同じ馬車に乗った子、無事だといいのですが……」
においを追ってさぐる。
ううむ健康状態よくないしあんまり動き回らないでほしいのだが。
例の相手はゴミ捨て場のほうでみつかった。
そこで何かを探り取り出している。
「ちがう……これじゃないな……」
「おうい」
「ッ!」
肩を震わせるようにして驚き腰をかがめてこちらに振り向く。
すごい器用に戦闘態勢に入った。
そして何を探しているのかもわかる。
彼女が纏っていたのはベッドシーツだ。
自分の服を探していたのだろう。
そいや死んでいるときも尊厳のためにあまり見ないようシーツの上からやっていたから服がないことまで気が回らなかった。
壁に貼り付けにされたニンゲンたちはボロ布とはいえ服をまとっていたし。
「味方だよ」
「あっ! あのときの!」
「……? ああ、鳥車の中にいた」
「えっ、もしかして彼女が?」
「は、はい!」
不満顔をしている彼女はどうやら探し人だったらしい。
ミアは顔を綻ばせ彼女の手を取った。
よかった……死ぬところだったから。
「あなたを探していました!! 助かって、本当に良かったです……!!」
「な、なんだよ……? あの時顔を見合わせたくらいだろ、なんでそんな俺のことを……」
「だからじゃないですか! あの不安で敵だらけのなか、唯一同じ状況だった相手、心配しないわけないじゃないですか……!」
「そ、そういうものか?」
困惑する彼女に笑うミア。
服がないむねを彼女は話て手を離してもらい。
ミアもともに服を探す。
「あった、これだ」
やがて見つけたゴミの中の1つ。
きれいにするようはたいて纏う。
その姿はまるで闇を纏うかのようで。
暗殺者のような。
……ん?
いやいやまさかそんな。
このにおいと見た目に覚えがあるはずが……
それにこんなところにいるはずもない。
そうそんなわけはない。
そんなわけはないのだから。
「……あっ」
それでも声はもれる。
不思議そうにミアが見てきて彼女は不機嫌そうに見てくる。
「……初対面でなんだが、俺の嫌いなやつに似ているな……」
「ああ……」
そう言われて私は思わず性別変更のスイッチを入れた。
ミアは何度か説明のために使ったからもうわかっているが。
彼女は私のことを見て驚く。
最後に服が冒険者のものと魔法的早着替えすれば完成だ。
こちらの見る顔が驚きに染まる。
「な、なああああぁぁぁー!!」
その声は私が変身したことか。
それとも……見覚えがありすぎたのか。
衝撃の再開では有るがこのままでは大半の者はわからないだろうからミアに解説する。
"観察"して名前も合致したし。
「こちら暗殺者のロイダ。昔朱の大地で私に殺す警告をしたけれど、そのあとなんやかんや会わなかった相手」
「ええーっ!? 極悪人じゃないですか!」
「そんな気軽に解説するなっ! ソレにあの後大変だったんだぞ!!」
彼女もとい彼もといロイダは怒り心頭といった様子でこちらに訴えかけてきている。
まあそうだろうね……そうじゃなきゃ翠の大地のこんなところで死んでないよね。
「ロイダさん……」
「憐れんだ目もやめてくれ。まあアンタには関係のない話だが……」
「なまえ、ミアです」
「……ミア。アンタには関係のない話だが、どうする?」
聞くかどうかという問いにミアはすぐ頷く。
ロイダは「ミアにはつまらないだろうが……」と前置きして話し出す。
過去の私に関わったせいでどんな目にあってここまで来たのかを……




