九百二十七生目 蘇生
彼女たちの傷が一時的にでもふさがり元気になったことでやっと自分たちがまさかの助かったことにやっと気づきだした。
それでも私がベッドの上にいる相手に魔法を向けているのに気づきみんな寄ってきた。
不安そうに顔を見合わせまるで祈りのようだ。
私は"リターンライフ"をねじ込んでいく。
心臓がわずかでも動いたらつぎは電気魔法"ディファイブレーダー"でAEDする。
さあ気合を入れて!
「はあぁ……!」
普段と違って私の口から漏れるのはなんとも重たい音。
今だけはこの男声の響きが気合に向いていて。
私はより気を引き締めた。
手先を向けて力を入れ続ける。
直接触れていたほうが効果は強い。
もはや傷が深く刻まれさわり心地があまりにかたいそれを触れていく。
生命の活動があった時のとは違い長く時間をかけて生きながらにして全身の水分が抜けたらこうなる。
果たしてどれだけの地獄を見せられたのか。
ん? ここの傷は古いものだな……
焼けただれた中に古い拷問で出来たような傷が。
こっちは……戦いの時につくような古傷だ。
ふーむそもそもなんだか知っているような知らないような。
「……聖職者さま、奇跡を……」
先に解放した人々に祈られている。
聖職者……ってのは私か。
私の服装は光や聖の魔法を使うときに纏う衣だ。
男であってもたまたま違和感の薄いデザインで良かったかもしれない。
全身をもれなく包み込む分厚い布地の白服はなんだか聖職者を思わせるデザイン。
光の中輪郭をくっきり出すためのラインが存在感を示している。
手先まで白い手袋に包まれたこの姿は聖魔法や光魔法の力を増す。
だからこのニンゲンの死も否定できる!
「それ……っ!!」
魔法の光が強く強く輝いて伸びていく。
やがてその体を完全に満たして……
内側から輝き出す。
「ひゃっ!?」
「わあっ!?」
空に浮かぶほどの魔力の渦。
死を拒絶する空間は制御せねば身体に毒だ。
拳を閉じて引き落ち着かせていく。
やがて輝きと浮遊が収まりベッドの上に戻る。
これでミスしていたら恥ずかしいが……
手応えはあった。
心臓の跳ねる音。
よし乱れているがうごいている!
「あなたは手をとってあげて、あなたは水を桶に! 私はここから救急する!」
あとはAEDだ!
私はもう片手に電気魔法を構えた。
「すー……」
なんとか症状が落ち着いて眠った。
ふう……危なかった。
なんとかわあわあやって回復を終えた。
命に別状はなくした。
医者じゃないので『予断を許さない』状況だけれど。
「すごい、奇跡だ……」
「奇跡の神様……」
「違いますよ、依頼でやっとこれただけの者です」
私は若干こわいくらい私に依存しようとしてくる面々を落ち着かせつつ立ち上がる
エイナも戻ってきて驚きの顔をしていた。
「まさか……死者を蘇らせるとは! それをする腕前もですが、わざわざ蘇生をするツカイワ様の考えも、すごいですね。こんなことをしても、彼らは支払えるものはありませんよ……?」
「そこはわかっています。けれど、やりたいからやるだけです」
私は服を黒スーツに戻す。
ほっとひと息ついた。
とにかく1つの騒動は終わった。
他のところもいい感じに制圧中ときく。
私は約束通り彼女を呼び出さないと。
「お人好しというか……なんともまあ、不思議なお方ですね」
というわけでミアを呼んだ。
果たして彼女の同居のものがちゃんといるかを探すためだ。
呼ぶって約束していたしね。
「こ、こんな立派な服着るの、初めてです……」
「大丈夫、早々壊れたり汚れたりしないから」
ミアにも黒スーツで決めてもらい16人目として入場。
処理の途中現場に合流してもらった。
まだ凄惨さが隠しきれないがそれでも顔をしかめても文句1つ言わず確かめ続ける。
「違う……しらない……うーんというより、こんなにいるだなんて……まだまだいる」
「大陸中から集められているのかもしれない」
今回の件をつぶしてもきっとまた似たようなのは生えるだろう。
その時私のことを少しでも思い出してしもらえるといいのだけれど。
それが抑止力になるのならば私を利用されるのはやぶさかではないし。
どうせ連れて行かれたジャックも頭を冷やせば戻ってくる。
その時にどう動いてくれるかだ。
いい意味で干渉しないでほしいところ。
エイナも忙しそうに不当な扱いを受けていた女性たちを連れ出し必要な道具を持ち運んで行っている。
ちなみに私もやろうとしたら「お客様、備品や働いている者への過度な接触はおやめください」とド正論で止められてしまった。
こういうときにそんな手を煩わせるには……みたいなのだったら押し切れるがそう言われたら無理だよ!




