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百九十七生目 視界

 文字通りの土砂降りが止む。

 燃えていた周囲は全て土砂の下に埋まった。

 ある程度高くある土砂を今の少年がすぐに登りきるのは難しいだろう。


 高く跳ぶなり土砂を壊すなりするのに1秒でもかかれば私が追撃する。

 そのことは少年も分かっているから正面から走り込んできたのだ。

 対して私は胸の飾りをしっかりと掴むのみ。


 だが問題ない。


「キミが"進化"してもその万能感に飲まれていなかったのは、やはりなんからの技法や能力(スキル)で感情をコントロールしていたんだね」


 少年が踏み込むその瞬間に地面が爆ぜる。

 正確には"エクスプロージF"。

 隠蔽していた魔法がひとつとは言っていない。


 脚がやられないように瞬時に身を翻して爆風に身を任す。

 そのまま跳んでいった先で地面につきそうになったら複数の土槍が生えた。

 小型かつ複数で早く出す"Eスピア"。


 浅く刺さって苦しむ声が少年から漏れる。

 深々と刺さらないのは少年の頑丈さに加えてとてつもない空中での身のこなしのたまものだった。

 無理矢理スキマに足を差し込んで蹴って跳んだのだ。


 もちろんこれで終わらない。

 何度も跳んだ先に土槍や爆発を仕込む。

 仕込む。仕込む。執拗に。延々と。


「クソッ」

「それに私に対してまだ復讐刀を使わないでいる。先ほど使わないって宣言したのを律儀に守っている場合? 私はキミをそう簡単には赦さないから、このままだとココで力尽きるよ?

 私は何よりも、計画的にここをめちゃくちゃ壊したって事には怒っているからね」


 私もひとのことは言えない。

 襲うし食べるし壊滅させる。

 だがそれに対しての覚悟はその相手から怒られ恨まれることに対してだ。


 私達が襲われ食べられ壊滅させられそうになったら当然生きるために抵抗する。

 殺すと殺されるは生者の特権ならば互いにあがき抵抗することは当然。

 お互い生き残って未来に繋ぐために怒るなり冷静になるなりそこにただしさはいらない。


 だから私もこの群れを攻撃され怒っている……のだけれども。

 それだけで怒っているわけではない。

 彼の怒りはカムラさんに似たまったく別の誰かへ向けたものでその怒りをこちらに向けられたあげく冷徹に計算し追い詰めた。


 うん、私はそういうことに怒っているんだろうな。

 外から冷静に分析すればそうわかる。

 ただ主観で言ってしまえば……さすがにここまでされたらムカつく!


「ハッ! グッ、このッ!」


 そう分析している間にも相手は避けるたびに生傷が増えるしあちこち踊らされている。

 そらそうだ、私が彼の傷や思考それに行動すらも読み切ってガンガン魔法を連射しているのだから。


[パニシュメント 雷に似た極光エネルギーを飛ばす。激しく上昇してほぼ真上から落下する]


 まともに足をつくことも息を整えることも許さずに光を飛ばす。

 聖属性は癒やすことも得意だが案外攻めるのはかなり強力。

 2つの目しかなければ真上から降り注ぐ極光エネルギーはあまりにもどこに落ちるかわかりづらいだろう。


 とは言っても私が結果的に少年の着地地点へ落とすから問題ない。

 単純なレベル差があるせいか当ててもじわじわとしか削れないが問題ない。

 例え回復手段を持っていてもそれを使うスキは与えない。


「グッ! ここまでするのなら! 俺の復讐の邪魔をするのなら! お前も『悪』だ! ガアァッ!!」


 少年が身を回転させながら無理矢理こちらへ突っ込んでくる!

 土槍も切り飛ばしコマのように回ってそのまま無理矢理突進。

 傷覚悟ながらこれ以上翻弄されるよりマシといった所か。

 まあ私も突っ立っているだけではいられないといっただけだろう。


 強化"フレイムガード"を前方に貼る。

 青炎で熱量が通常よりも高い。

 少年が触れればジュッという音と共に金属や布が燃える臭い。

 そして肉が焼けるかおり。


 一瞬だが少年の勢いが弱まった。

 私はなんとか身をかがめて踏み込み避ける。

 肩や体がコマ回転に引っかかり裂けて血が噴き出るがまだ大丈夫。


 はっきり言って私はこの身体に不慣れだ。

 それに加えてわかることがある。

 この身体は魔法特化だ。


 駆け回り肉弾戦をこなし魔法を放つ汎用なときとは違い魔法にリソースを振っていて肉体は大して強くない。

 強化魔法していてもコマ回転に斬られ血がふき出たのがその証拠。

 両目の視線がめちゃくちゃ高くなって少年よりも少し背が高くなったのにもまだ慣れていないし後ろ足と尾でなんとか動くのもごまかしごまかしだ。

 3つ目の"鷹目"でうまく視界を確保している。


 もちろんやろうとおもえば色々出来るのだろうがまだ全く鍛えていない。

 だから息をするように出来るようになった魔法に頼らざるおえないというのも事実だ。

 だがそれを少年に悟られれば終わる。


 コマ回転を止めた少年は『いいにおい』が少し焼けている事を表していた。

 確かに少年は見た目はボロボロ息は上がって肩でしていてひどいものだがそれだけだ。

 はっきり言って致命的な一撃は一回も入っていない。


 逆にこっちはまともに貰えば最悪すぐに死ぬ。

 ハメ続けて勝つか1本間違えて死ぬか、その瀬戸際だ。


「斬る!」

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