九百十一生目 正装
黒いVV.I.P.チケット。
これの説明を私はエイナから詳しく受けていた。
まずこのチケットはほとんど見ることのないチケットだ。
使用回数無制限。
入場料はこれを使う限り20名までタダだ。
そしてこれが大事なのだが……
この中には無償ポイントが1万7ポイントが入っている。
このポイントなのだが……
無償ポイントとは現実の金額に変えられないポイントだ。
同時に購入して得られる現実の金に変えられる有償ポイントもある。
皇国とかで使える単位シェルで100シェルごとに有償5ポイントと無償7ポイントほど。
1シェルは国によるけれどだいたいはこれが硬貨として使える範囲で汎用的であり手のひらに乗る大きな果物1つや野菜を買える。
まあ異世界での価格比較がわかりやすいけれど……
つまるところ。
1万7千ポイントとは20万シェル以上……
異世界の金ならどれほどか……とにかくそれほど詰め込まれている。
それにこれは無担保で無制限借入できるらしい。
簡単に言えばプリペイドつきクレジットカードのとんでもないバージョンだ。
ブラックカードとかそういうの。
こわぁ〜……
この中で使えるポイントを得られるとはいえ中で稼げば有償ポイントを得て金に変えられる……
そう中ではギャンブルをやっているらしい。
ギャンブルは子供ご法度だ。
そりゃあ子どもが入れないわけだ。
さて……ここで悩むのは。
色々やって入るにはどうすればいいかだ。
私は多分入れる。
たまたま手に入れたあの力で。
そんな感じで多くの者をごまかしたりなんなりして入れるはずだ。
だとしたら誘う相手は……
そんなことを深く考えつつ浅い眠りに落ちていった。
おはようございます私です。
さて1時間半ほどねむって決めたメンツだけれど。
いくならトコトンやろうと決めて。
まずニンゲン側の調達だ。
大河王国の面々はさすがに内政が忙しすぎて今はこれないとの返事が返ってきた。
それは仕方ない。
だから他のメンバーだ。
ニンゲン側男性を出来得る限り集める……!
と。
やっていてもう1つ気になったことがある。
格好だ。
やはりというかなんというかみんな泥と汗のにおいが染み付いた服は着ていなかった。
このためにおろしたのかな? と言えそうな服だ。
私の服は気に入っているが……そもそも男の服を持っていない。
冒険者服やらドレス服やら持ってはいるがそれだけだ。
ただしく男性の服で正装などない。
ないが……心当たりがある。
私は急いでワープした。
「確かに出来ているよ、あなたから聞いたことから発想を得て作った、新しい服のデザイン。ほら、これだ」
私はいつも服飾を頼むアノニマルースの子に会いに来た。
私の服はだいたい作ってもらっていた。
靴も別のところにいる彼の知り合いに。
凛としたたたずまいの服屋は自作の自信作を前に興奮を隠しきれないようだ。
服屋とは常に新作に繋がるような話し合いはしている。
主に私の冒険話だけれどもそれでインスピレーションを得るらしい。
私が大河王国にいって私が知っていた異世界の服についても漏らしたらこれである。
……私の前には黒スーツが並んでいた。
この世界の技術と発想で作られて形としての黒スーツ。
こうみえて武具としての性能がある。
様々な姿に適応するために相変わらず当然のように魔法伸縮が込められているし。
実は結構すごい技術だというのはニンゲン界に私が馴染んでから気づいた。
ただこれは都合がいい。
同じ服装で各々の着方を出来るこれならば……
きっと役立つ。触りながら確信した。
「すごいね……それで、どうかな。少し、数が作れたり?」
「うん? 材料さえ調達すればできなくはないかと」
「よかった、それなら早速……」
服屋さんと交渉し何着も用意してもらえることとなった。
さああとはメンツを揃えるだけだ。
翌日。
私達はホテルに集合していた。
メンバーは結局のところ20人は揃わなかった。
そこはどちらでもよかったが。
例えばダカシは遊ぶよりもやりたいことがあると詳しく告げずに断った。
まあ今は何かまた自分の剣を握りだしているようなのでなんとなくわかる。
バローくんは会いに行ったら寝ているのか起きているのかわからない軟体生物状態となっていた。
研究者として活躍している日々。
存分に楽しんでいる一方で存分にくたびれているようだ。
グレンくんは勇者を辞めるための途中。
見た目からしてごまかせないレベルで子どもである。
無理に誘う必要もなし。
では来た面々は誰かといえば……
それはこれからのお楽しみ。




