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百九十五生目 新化

 カムラさんは刀を腹に刺したまま離さず少年は蹴って引き抜こうとしている。

 間に合え私!


「クソッ! ならばッ!」


 少年は左手に持った小剣を振るおうと振り上げる。

 いくらカムラさんがアンデットでも無防備な頭に斬撃を喰らって平気ではない。

 イタ吉はまだ強すぎた衝撃で身体がしっかり言うことを効かないらしく立ち上がろうとしている段階。


 もう私と少年への場所はすぐ近く。

 今だ!


「離して!」

「うん!? なっ!!」


 私が叫ぶとカムラさんが手を放す。

 同時に少年の注意がおろそかになった。

 左で振るおうとして右で抜こうとしているところ後ろに目をやれば集中力はどれもこれも薄くなる。

 ついでに刀を抜こうと足を上げている姿勢は踏ん張るには最悪。


 そのためいきなり刀を離したカムラさんに対応できなかった。

 思いっきり振り上げた小剣は行き場を無くしカムラさんからスッポぬけた刀を支えるには姿勢が悪い。

 何もかも思っていたタイミングからずれた結果は大きく背後にたたらを踏むことになった。


 そこにすかさず私が頭や背に針を生やして突っ込む!


「ギッ……! クソが!!」


 毛皮や服に阻まれ浅い当たり。

 だが当たりは当たりだ。

 スキをつけたそれは確かに穴をいくつもあけた。


 身を捻ってあえて転ぶ事で深く刺さるのは避けられる。

 私も針をしまって少年を睨んだ。

 さすがに……ここまでやられたら腹がたつ。


(だがどうする? やろうにもこのままだと力で押し切られるぞ)


 それはもうドライの言うとおりなんだけれど……

 いや、まだ手はあった。

 "進化"だよ!


(は? "進化"は確かに良いが今は地魔法が封じられて……ああなるほど!)


 そう、地魔法が使えなくても、他のを使えば良いじゃない!

 今回は……とりあえず聖魔法。

 準備!


(よし、やるか!)


 いや、今回は私にやらせて。

 いやまあドライも"私"なんだけれど。

 気持ちはそれぞれ別だしちょっと今私はカチンと来ているから。


(お、おう。まあ"私"もムカついてないわけじゃあない。託すよ!)

("わたし"も応援する! ファイトー!)


 ありがとうドライにアインス。

 みんなが傷つき倒れ周りは炎に包まれている。

 そのことが想像以上にショックだしそして思っていたよりもずっと怒っている。


「ローズ、俺も……」

「だめ、危険すぎる。それよりカムラさんを安全なところへ」

「……わかった、死ぬなよ!」

「申し訳ありません」


 イタ吉の申し出を断ってカムラさんを助けさせる。

 離れるのを見送りつつ魔力をためる。

 少年は私よりもカムラさんを追いかけようとしたが割り込んでやった。


「邪魔だ――グッ!?」


 私に剣を振るおうとした少年が慌てて下がる。

 私はしっかりと剣の軌道を見て回避できるはずだったのにしなかった。

 それがカウンター狙いの不気味さに見えた、のかもしれない。


「お前は……そこまでの圧力を? 俺ほどの激怒!? 魔物がそこまで感情をコントロールするなど……それにこの気配!」


 激怒……確かにそうかもね。

 向こうも相当怒っていたから同じものに過敏に反応したのか。

 そして当然向こうも知っているか。


 地魔力を聖魔力に入れ替え。

 4種混合で……

 "進化"だ!!


「はあああッ!!」

「グゥ!?」


 魔力が爆発的に体全体に行き渡って姿形が変わる。

 違和感はすぐにやってきた。

 前とは違ってもっと身体の奥底から作り変えられる違和感。


 肉と骨が音がなるかのように変形していく。

 不思議と恐怖は覚えない。

 というよりこの感じは覚えがあった。


 "変装"だ。

 あれで2足で立って指をしっかり作った時ににている。

 ただあんなハリボテではない。


 しっかりと内部構造1つ1つが異質へと変化していく。

 半獣とも言えるその姿へと。

 人型を持ちながら獣の脚や肉体部分がいくつもあり毛皮を持つそれに。


 骨が伸び内臓が身体の中で配置が変わり筋肉が曲がり増殖する度に感じるのは快感。

 力。万能感。

 "進化"の快楽。


 もはや慣れたと思っていたがまるで新しい形になるときは未知の部分が開くかのように脳髄を刺激してくる。

 甘い誘いは力への堕落を誘って……

 怒りがそれを拒絶する。


 怒っていなくても理解していればなんとかなるだろうが今はちょっとキモチヨクなっている場合ではないからね。

 そのまま変化を続けて行き……


 ほんの一瞬の時間だっただろうが私にとっては長い時間が終わりを告げる。

 そっと後ろ足2足のみで地面へと降り立った。

 進化し終えた私の姿を"鷹目"で確認する。


 ざっと見た感じは2足で立ってはいるが獣脚のまま。

 少し色合いが暗くなって全身に入れ墨のように模様が走っている。

 いつものイバラのようなものから背には目のような模様。


 額の目も少し大きくなったかな?

 細かい所は後にするとしても全体的に……不可思議だ。

 それに湧いてくるこの力……使いこなせばきっと少年も倒せる。

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