九百五生目 未来
「……して……」
…………
「……故に……」
……………………
「……というわけでじゃな、過去という鎖の部分が変わっても、現代という先端の鎖は変わらん。変化はしているが、それは全体に影響を及ぼすものではないのじゃ」
「「はあぁ……」」
全員もはやぐったりしていた。
時間軸の話……大変過ぎた。
わけがわからなかったがつまりは……
簡単にまとめるとだ。
過去は現在と直接的な繋がりはない。
もしも過去に行けたとしてそこで歴史を変えるような事件を起こしても普通は現代に何も影響を及ぼさない。
やりようは……あるらしいけれど。
ただ今回の鎖の力はそれぞれの過去にある起点だけを意図的に変える。
ここにもしもの並行世界がうまれるのだ。
当然並行世界なため現代の私達にはなんの影響もない……しかし。
鎖として繋げる力を使い起こったことの結果を集約。
結果的に起こりうる変化を私たちだけそれぞれが受け取っていた。
能力の変化や性別の変化といった結果だけだ。
本来積み重ねる経験とそれに伴うスキルや生き方の選択はここにないのだ。
……というのを5名で話し合ってなんとかまとめた。
これでも簡単にまとめたんだ。
本当だよ。
「本当に複雑だな……どうなってんだ」
「まあ、大枠で理解していてもらっていい。つまり、大きな姿の変化は、性別による生き方の変化があった、ということなのじゃよ」
「ボクのゴーレムも、そんな影響が……」
「私のこの種族すらトランスで変わっているのも、その影響だよね」
"観察"するとこうでる。
[ソウガイハ 個体名:ロードライト 全身を覆う甲冑は誇る肉体の槍針。背後のタンクは肉体より頑丈なエネルギーの塊。コントロールすることでどのような局面をも切り抜ける盾であり、唯一種族の神の1柱]
まあそうだろうねという気持ちと本当に全然知らないものになっているという気持ちがあいまっている。
私のもう一つの可能性……なのかな。
そもそも名前違うんだけど誰? 私誰??
「まあ、それに関してはもういいじゃろう。儂のその力、使いようによっては相当便利じゃぞ? 他人のフリもできる、力の差異を利用も出来る……というわけで、自在に変えられる力を渡そう。協力してくれるならばな」
「まあ……人形の件について協力するのはやぶさかじゎないけれど……」
果たしてこの力はいるのか?
みんなふわっとした疑問が思い浮かぶ。
まあもしかしたら……役に立つ時が来るのかもしれないが。
こんな気軽に性別を行き来して良いものなのだろうか……?
なんというかすごく悩んでしまう。
私にそういう趣味はないしなぁ……
「儂は分からんが、性別の違いで色々変わることはあるのじゃろう? ならば互いの心を理解するためにも割と大事じゃろうて。まあ、結局本質がそこにあるわけではないから、あくまで経験のひとつじゃがの」
「うーむ……兵の女たちの要望の意味を理解するのには大事か……」
「異性からの見え方とか、あまり意識してこなかったなぁ……」
「ワタシは……シンプルに背が高いのは良いことね。普段はともかくとして、ローズより大きいもの」
「なんだそりゃ」
みんなもなんとなく受け入れはじめた。
これが変更のきかないことならば揉めるが自由変更だ。
さっさと戻れるのならば問題ないという考えも大きいだろう。
「うむうむ、納得したようじゃの」
「あのー、それじゃあ戻してほしいんだけれど」
「おお、そうじゃったな。ほれ」
翠竜が念じると目の前に物質が産まれていく。
光によってちいさな種のようなものが生み出された。
「これは、鎖の楔じゃ。これを飲めば、肉体に馴染んだ力が不安定な鎖の因子に楔を打ち込んで――」
「ああっ、わからん! つまりどうなる!」
「――変化に対する耐性……なんじゃつまらん。ようは、飲めばいつでも性別を変えられるようになる! ということじゃ」
多分これ一部の医療に凄まじい革命を起こすほどのものだ。
ただ話を聞いた限り性別が変わるのは神の力で性別を『変えられるようにあとからなる』のはこの種の力だ。
結局翠竜が凄まじい力でいじっている以上医療の解決にはならなさそうだ……
「もらうよ」
私達はひとりひとつずつ種をもらう。
種を指示通り飲むと私の喉を通るというよりどこか遠くへと消えていく感覚がした。
同時に私の中で何か新しい感覚が芽生える。
「あ、こうかな?」
できると思った。
ゆえにやった。
それが私達の感想としてただしいものだ。
それは新しいスキルを操るように。
まるで自分のなかで新しい尻尾が生えて操れるように。
変化を意識すれば私達の身体はわずかな時間で変化していく。
うわ起きていると変な感覚!




