九百一生目 雌雄
グルグルとまわって自分を確かめて姿を見て声を確かめて。
明らかに異常事態なのはわかった。
なんなんだこの身体は!
「まず……男になっている。間違いない」
こんなセリフ一生使うことはないと思っていたよ。
あるものがなく、ないものがある。
しかし事実だ。
私は意味がわからないが男にさせられている。
絶対翠竜のせいだ。
詳しくはわからないけど翠竜のせいだ。
何? 翠竜は何がしたいの?
5大竜こんなんばっかりじゃないか。
祖銀さんの常識っぷりがうかがえる。
私は今2足型になっているが身長が175センチメートルある。
いや大きい。
これ私か? 本当に?
いやまあ巨大化するトランス派生はあるにはあるんだけどね。
大変なんだよね。
いきなり変わってのニンゲン街での生活。
見た目もすごい。
今は全身の鎧を拡散分離蒸着してある。
簡単に言うと毛全体に鎧を切り分けて付着させているもの。
「もう一回やってみるか……」
私は意識して針を動かすように全身から展開する。
それは身を護る鎧のように。 しかしてまるでグラハリーのそれよりもノーツのそれににていて。
青い塗装じみた金属が展開されていく。
やがて全身を覆い尽くし兜も覆われバイザーが降りて目を覆う。
キラめいて内側からの視界が広く確保された。
「いや、ロボだよねこれ!?」
外観がもう完全に別の方向にいってしまった。
ほらパワードアーマーとかいうやつ。
ソレになっちゃってるよこれ。
そして大きいんだ。
全身が展開されたときに3メートルほどに拡張されている。
私の肉体はその中にすっぽり覆われている形だ。
指先まで5指分覆われている。
これはちょっとおもしろくて実はここに指はない。
というか5本指ではないし。
実は指のように感覚的に5つの延長部分なのだというのを今知った。
私の身体だけど私の身体じゃないのでなにもかもがわからない。
調べるしか無い。
なんとなくだけれど必要なスキルとかが私に欠けている。
私自身が発現した力ではないからだ。
それは仕方ない。
だから理解をするには自力模索がいる。
ええっと……いつの間にか背中からついていたこのタンクはなんだろうなと。
透明な中には液体が詰まっている。
爽やかなスカイブルーの液体だ。
よく見ると身体のあちこちにチューブが走っている。
ロボでしょこれ。
ええっとそうだな……
テキトーに身体をガチャガチャうごかしてみる。
これか? この感覚かな?
腕を振るい力を込めるとチューブの中から液体がわずかに動く。
力強く前へ拳を振り抜けば空気が凄まじい力で光と共に殴られた!
アーマーの間から蒸気が吹き出て落ち着く。
「いや、これ何!?」
エネルギーの塊かなんかなの今の感覚!
こわっ! 背中に装備しておいていいものじゃないよ!
私の身体だけどさあ! 私の身体じゃないけど!
さらに身体をガシャガシャやっていると何か機能を使えそうな感じがした。
両腕を前にして?
揃えて回して引いて?
エネルギーをチャージしてタンクから液体が運ばれて。
「さてどうな――」
両腕の中心にエネルギーの塊が生み出され集う。
そのまま前方へと激しい放射。
直線状に放たれた青いビームは扉へと向かい。
「――るぅえ?」
大・爆・発!
めちゃくちゃビームじゃん!!
やばい扉が壁ごと吹き込んでしまった。
それもこれも翠竜のせいである。
「翠竜ーー!!」
私は叫びながら煙の向こう側へと踏み込む。
すると。
「「て、敵だああぁっ!?」」
そう。
その時私は向こう側にユウレンたちがいるだなんて思っていなかった。
踏み込んだ私は全身がパワードアーマーのようなものに包まれ金属反射の青い輝きを纏いあと3メートルだった。
全員が身構えたのを見て慌てて鎧を分散。
毛へ蒸着させて……
この時タンクがどこに行くのかと思ったら次元がズレた空間に収納されただけで私にくっついたままらしい。
見えはしないけれど。
鎧も私の毛の形状にまとめあげてあるだけで実際はここにある。
私はその全身を改めて表へと出す。
赤の鬣が背後に流れる。
この毛だけで私の腰まで届くとんでもない量と長さ。
3つ目は血の色のような黄色にやや赤が足された……つまりオレンジの瞳。
青い宝石が胸に輝き足回りの模様はイバラではなく連なる星の輝き。
顔は私比凛々しくなっているが思ったより男顔っぽくはなってない。
母になんだか似ているかもしれなかった。
普段の……女性の顔のときはどちらかといえば顔は父の雰囲気に似ていると自分では思っている。
まあ骨格が違うからさすがに見た目はちゃんとそれぞれっぽいが。
身長は175センチメートルほどだ。
「ほら! 私だよ!」
「ま、まさか……ローズ!?」
「ええっ!? 全然違うじゃない!」
ユウレンの叫びが響いた。




