八百九十六生目 巨大
ドリカデが倒れ伏して長い体を揺らす。
ソレは命が生きようと悶える反応で……
同時にチャンスそのものだった。
「やれええぇぇ!!」
ジャグナーが叫び全員が襲いかかる。
先程まで狙うのも危険だった頭や尾先はもはや自由に狙える。
今度こそと全員の大技が飛び交った。
私も相手が悶えている間に出来得る限り連撃を打ち込む。
ゼロエネミーには獣爪として働いてもらい近距離で何度も踏み込み斬る。
ショットガンビーストセージで連撃の合間に武技も使いつつ吹っ飛ばし……
地魔法で爆破し火魔法で熱射を放って爆破して空魔法で空間を見出して拡張し爆破して。
イバラで武技"猫舌打ち"でフック状のトゲたちを引っ掛けて鱗を剥がしそこに武技"龍螺旋"で爆発を仕掛けついでに間に合いそうだったので"拷問払い"で執拗に剥がれたところを打ち付ける。
もはや相手が自由になるまでにボコボコにする気概で攻める!
「ヤアァァッ!!」
「グガアアアァァッッ!!」
凄まじい勢いで跳ねられた。
かなり危険なので一旦距離を取る。
どうやらさらなる痛みのせいで反射で身体が跳ねてしまったらしい。
「これは……効いてそうね! 思ったよりは通っているじゃない!」
「ユウレン! どう、準備の方は?」
私は避難ついでに遠距離からバカスカ射っているユウレンのそばにくる。
こういうとき死霊術師って前に出る必要は無いから楽そうだ。
実際ユウレンにとっさの判断で同行って言っても難しそうだから余計に良い。
ただユウレンは攻めを絶やさないようにしつつも先程から仕掛けをばらまいていた。
予想通りならそろそろ……
「ええ! いつでもいけるわよ! あとはアイツが良いポイントに来てくれれば問題ないわよ!」
「わかった! 誘導をかける!」
念話で情報を共有しつつ走る。
ドリカデは既に起きて空へ舞い上がってしまった。
空中にいては手を出しづらい。
罠のポイントを叩き込まなければ発動はできない。
『よし、そういうことなら作戦をたてるぞ! いいか…………』
そこからはジャグナーが念話で作戦を伝える。
しながら戦うのでだいぶハチャメチャだ。
空中にいても向こうは攻撃するために低空までは降りてくるのでそれを狙う。
「いい加減殺してやるー! ガアアァァ!!」
「来た!」
下でウロチョロしつつ土弾とか弾丸を放っていたらしびれを切らして降りてきた。
さすがに一方的にダメージを受ける環境は微々たるものでも無視できなかったらしい。
特に私達はやすみなくダメージを与え続けている。
そうなるとどうなるかと言えばあの巨大な肉体の内部にどんどん怪我の疲労が溜まっていくのだ。
割とシャレにならないほどの疲れ。
腹が減ったというのがわかりやすく大顎を開き横に牙を開ける。
そしてジャグナーたちの元へ飛び込んできた!
アレはどう見ても直接食らうのはまずい。
急いで全員駆け込む。
「走れ、走れ、走れ!」
「ガギャァァァ!! 遅い、遅い!!」
大顎の巨大な横開きの牙が迫る。
そのときに。
食い物ではない存在が空に舞う。
「発射」
巨大な砲から放たれたのは巨大な1撃のビーム。
フルチャージされていたそれが光線となって命中するとあまりの勢いにドリカデの動きが止まる。
そして……大爆発が起きた!
ノーツが吹き飛ぶのを見送りながら私たちは構える。
ここからが大事だ。
「グガアアアァァ!?」
「ようし! 落とせ!」
たぬ吉がゴーレムでたくさんのツタを伸ばす。
私もイバラをバンバン伸ばして巻き付け。
わざとまとめた部分をジャグナーが持つ。
「せーの!」
「「それーっ!!」」
体勢を崩し空中にいるドリカデで踏ん張れる道理はない。
勢いよく空から叩き落された。
よしよし。
「ユウレン!」
「分かってるわよっ!」
見やすい位置に移動していたユウレンは大きく腕を広げる。
スムーズに腕を動かしポーズを取るようにすると光が輝き軌跡が残る。
そして最後に手を合わせると。
「起きなさい!! 彼奴に喰われし哀れな者たちよ!! 今こそ反撃の時!!」
一気に地面から大きな骸骨の腕が生える。
それは間違いなく虫たちで出来ており。
そして強い力でドリカデを縛り付けた。
「これは……怨念!?」
「見てなさいローズ、浄化っていうのはね、色々やり方があるのよ」
「ヌオオオオォ!!」
ドリカデが暴れて逃れようとする間にどんどん巨大化して形成されている骸骨。
複雑に多くの外骨格が合わさって結果的におぞましくもどこか勇ましい巨大骸骨が出来上がる。
つかんだその腕はけして離すことはなく。
大暴れしているドリカデをさらに圧縮して伸ばして曲げて結ぼうして……さすがに無理だったらしく勢いよく地面に叩きつけた!




