八百九十四生目 蟲龍
ユウレンたちと一丸となって突撃し目的地近くにきたが既に数時間たっている。
強行軍でも時間かかったし確かに遠かった。
ちなみに鳥車のフル速度より圧倒的にスピードは出ている。
迷宮内は常にくもり空のためよくわからないが朝出ていて今は夜だ。
冒険者必須の外世界時間時計が表している。
まあようは魔法で保護された懐中時計みたいなものだけれど。
冒険者たちの激しい活動にも時間がズレずに耐えうる一品だ。
『どうする? 一旦休むって手もあるけれど……』
「いや、みんなもスケジュールがあるでしょう? ここで突破するわよ」
……翠竜の爪は力が込められている。
そりゃ当然の話ではある。
ニンゲン側も保護し迷宮とさらに外界領域付近にまで良い効能をもたらす。
しかしそれは魔物にとってもだ。
よく翠竜部位の付近には魔物が居座る。
その力を身に取り込むために。
神力までは取り入れられなくても強烈な強化になるのだ。
『じゃあ、強化を回すから素早く突破しよう!』
じわじわと突破するのではなく速度を重視することとした。
悪いけど蹂躙だ!
しばらく進み相手の縄張りに入ったのがにおいでわかるころ。
目線で合図しあって全員が武装を身構えた。
突如前方の地面が……つまり死骸で出来た成分たちの間がひび割れる。
一気に突き破り空へ向かって登っていく。
「ゴガアアアアアァァァァァ!! ここを私の縄張りと知って、入ってきたのかああああぁぁ!!」
この時はまだ何言ってるかわからないが叫ぶ巨大で長い影。
それは土中を動き回れるように胴が長く足は少なく。
空中でターンしてこちらに向ける顔には複眼と巨大な横に挟める牙。
全身に頑丈な甲殻で覆われその外骨格には鱗もさらに纏っている。
乾燥防止とかのソレではなさそうだ。
最終的に尾先まで出て全長100mは突破しているだろう。
うねっていてよくわかりづらいが巨大なのはよく分かる。
尾先にはそれだけで刃かのような大ぶりの尾角が生えている。
「うわあ、おっきい」
「ねえ、あれをサクッと倒せるの? ねえ!?」
『ままま、まあ? なんとか?』
よし"観察"しよう!
[ドリカデ Lv.44 比較:強い(神力未開放時) 異常化攻撃:出血 危険行動:ハサミギロチン]
[ドリカデ 採掘は自身の自慢の横顎を使い破砕するように進む。土を消し飛ばすように進む豪快な姿は、時に畏怖される龍として語られる]
「空を飛ぶのは後天的な能力なのか……」
あっそこそこ強い。
まあ見た目通り強いよねそりゃ。
私は光神術"サウンドウェーブ"を使って向こうの言葉を訳し届ける。
"観察"したことで言語がわかったからだ。
「ちょっとーー! ここを通らせてもらうことはできないーー!?」
「ガアアアアァァ!! ふざけたことを! 食う!!」
『駄目だこりゃ、戦闘開始だ』
ジャグナーの合図で全員が一斉に散る。
それとほぼ同時に私達がいた場所にドリカデが突っ込んできた!
激しい土煙と共に死骸の破片が飛んで来る。
「うわっ! やめろよな!」
ジャグナーも声で悪態をつきながら腕を構えて地面に振り下ろす。
俊敏性という意味ならジャグナーはこの中では1番悪い。
速度という意味なら平気で高速を走る車みたいな勢いを出すが。
地面は激しく揺れてジャグナーの前方に光が走る。
亀裂のそれは敵の攻撃ではなくジャグナーのはなったものだ。
ジャグナーは魔法を使わないので武技やスキルなのだが範囲も派手さも凄まじい。
やがて地面下のドリカデまで届きドリカデが打ち上げられあぶり出される。
「ガアアアアァァ!! 騒がしい!!」
地面からドリカデが飛び出していく。
空中に浮かび上がりジャグナーにむかって頭から薙ぎ払うような1撃!
ジャグナーがそれをしっかり受ける!
「グッ、おお……!」
巨体から繰り出す1撃はとても重たい。
しかし……ジャグナーはギリギリ耐えた。
吹き飛ばされず足を地に埋めるように。
「何!?」
「今だ!!」
当然薙ぎ払いを途中で止められれば凄まじいスキとなる。
ジャグナーの号令のときには攻撃をためて飛んでいた。
ユウレンから斬撃とたぬ吉はセミオート槍投げ。
私はイバラの武技"龍螺旋"かつ地魔法。
ノーツは噴射で一気に高く飛び上がり蹴り込み!
「「はああぁぁ!!」」
「ウガガァァァッ!?」
肉体はでかいので当て放題だ。
一斉にパワーを普段より込めた攻撃たちが撃ち込まれていく。
クリーンヒットだ。
「よし! このままいくわよ」
「ウグラアァァァ!!」
「って効いていない!?」
ユウレンが叫び暴れまわるドリカデを見て叫ぶ。
たしかにドリカデはパッと見傷すらまともに入っていない。
だけれど……




