八百九十二生目 戦闘
腕が持つ剣しか出来上がっていない。
これがユウレン流死霊術師の戦い方……
「部位蘇生!」
ユウレンが腕を振るうことで刃を持った腕も振るわれる。
反動で虫を押し返した!
さらに盾をもった腕が生えたり弓を構えた両腕が生えたりと見た目的にはとんでもないことになっていく。
さらに空中から槍と腕が構成され虫に向かって落ちていく!
いろんな虫に落ちていくが突っ込んでいた飛び昆虫は対処が間に合わない。
槍が翅を貫き落とされる。
「そこっ!」
ユウレンが前進し腕を振るえば虫の目の前で剣が再形成される。
それはまるで悪趣味な肉を断つ巨大包丁で。
一気に壊れることすら気にせず力いっぱい叩きつけた。
破壊音が斬撃のそれではない。
もはやガシャンと音が鳴り響き槍に貫かれた虫は吹き飛ぶ。
「矢隊、放て!」
そこに遠慮なんてもののない骨子で作られた矢が放たれていく。
威力も破壊よりに大きいらしく字面ごとくだきながら前方の虫を吹き飛ばしていった。
「ふふ……意外と出来るわね」
ユウレンは満足そうに本を構える。
……ニンゲンという種族は私が見るに最も武装の力を引き出せる種族だ。
それはニンゲンは常に物を使って物を作ってきたゆえのこと。
もちろんニンゲンに最適という意味でもあるが……
ニンゲンたちが最も装備するという概念に慣れ親しんだ存在だからだ。
強烈な概念は神の力になる。
種族的に服を着て時には刃を持つという概念を内に秘めている限りその神は……世界はニンゲンたちに武装のえこひいきが発生する。
ニンゲンという種族はそこまで強くはなれなくても身につけるものでどこまでも飛躍できる……
そんなふうに見えるのだ。
もちろん武装もただの棒振りになるなら持ち味が失われる。
そこには並々ならぬ技巧への力があるからこそだ。
まさしく持ちつ持たれつ。
ノーツはガチャン、ガチャンと音を立てながら1発ずつ大口径を放っていく。
しかしノーツに顔があるならばあまり芳しくなかっただろう。
「機動補正、困難」
跳ぶことを得意とした虫たちに弾丸は放たれていたが……
足に力を入れて跳ぶだけで軽々と避けられていた。
最初の数発は良かったのだがそこから学習されてしまった。
触覚が揺れてノーツに銀色の風が叩きつけられる。
魔法の風だ。
銀色は無数の鋭利な光でありノーツの表面に無数の傷を刻んでいく。
人体なら致命的な傷になりうるもののノーツは外装の外殻のコーティングに傷が入り込んだだけだ。
ただ言うほどいい状況でもない。
風も攻撃も細かくどこにでも入りうるがゆえに見えない奥にもわずかずつだが傷が入っていた。
「戦法変更を提案」
『え? あ、わかった! 頼んだよ!』
私が許可を出すと唸る音と共に銃を掲げる。
銀の風に向かって再度構え直し……
炎を放った。
えっ。
故障?
一瞬私がビビったが違う。
ちゃんと等間隔で炸裂する炎が銃口から吹き出ている。
さっきの弾の応用技……
銃口で指向性をもたせた爆炎にしてしまうらしい。
疑似拡散弾みたいだ。
一気に風を押し返し炎に敵を撒いていてる。
いくら行動予測が困難でも面を焼き払われたらかなわないと逃げ出していた。
「距離確保。行動捕捉。兵器展開」
だがそれで逃すようなタチではない。
距離が空いたことでサブ武器が使えるようになり肩から弾丸を発射する。
それは大きくて後方に火を吹き飛ばし敵へと誘導されてゆき……
小型ミサイルとして連続爆破!
「対象、撃破」
そのころたぬ吉は鋭利なハサミを頭に持つ虫魔物に苦戦していた。
ゴーレムの中にいるからたぬ吉は無事でもゴーレムのだしたツタはなんども斬り裂かれている。
根の槍もおっかなびっくりな運用ではいまいち届かない。
「あわわわ、痛そう……!」
槍で突っつくだけで巨大さもあり凄まじい質量の力だが肝心のあたりがない。
頭のハサミにはさまれ毎度ねじりそらされている
ただこのままでは勝てないだろう。
そうたぬ吉も考えいっそのこと下がる。
「こういうときは……セミオート!」
たぬ吉が中で何かしたらしくたぬ吉ゴーレムが草花を咲かせながら両腕を前に構える。
さっきまで棒立ちだったたぬ吉時とはまるで別だ。
もはや獲物だとしか思っていないようにハサミ持ちの駆け寄る。
……しかしそれも途中まで。
突如轟音と共にゴーレムがいきいきとして突っ込んでくるまでは。
「やあぁ!」
槍が鋭く振るわれる。
さっきまでの先が尖った棒をブンブンふりまわしているのとは訳が違う。
きれいな型による連撃だ。
ハサミときれいに打ち合い最後地面ごと串刺ししにいく。
ギリギリハサミの虫魔物が回避するが地面が淡く光った。




