八百七十九生目 風貌
王族ブランド内同士で分かれ合い次なる統一ブランドを目指し切磋琢磨している。
王子や王女がブランドをそれぞれ持つわけだ。
そしてその王族ブランドたちが関わり合い政府とも複雑に絡み合いながらたくさんの国たちが1つに淡くまとまっているのを翠の大陸連合国と呼ぶ。
まあ他と交流が薄いせいでそれぞれの小国を『国』、大陸連合国家自体を『全国』と呼ぶのだが。
そして問題なのが『国家政府』と『全国政府』がある。
確かにホワイトハウスはないものの各国繋がり合おうとしているところがあるのだ。
真の意味で全ての国にという意味ではないものの全国政府の存在はこの大陸を大きく支えている。
何せ通貨や言語もそれぞれ独自のもあるが翠の大陸共通言語で済ませれるのだ。
法律とかも色々国境をこえたさいの処理もある。
そしてだからこそ……王族は大変な力を持った相手なのだが。
「まあ、ここ出身なのは確か。それに、元王族関係者が地元を荒らしている可能性を聞いて、奮い立ったのも。まさかこれほど大物とはね……」
「その、国家政府って、お国の? 全国の?」
「そこは聞かないで欲しいかなぁ」
困ったような笑みを見てわかった。
全国政府のほうだ……
超大物じゃん。
「そうかあ……バンさんはそっちの筋で元王族を追っていて、ココにたどり着いたと」
「そう。想像以上に厄介なことになっていたけれどね……元とはいえ王子の力は凄まじい。こっちでも、扱いに困っているくらいだよ。そもそも、王子が勘当されることがありえないんだから」
「やっぱり、かなりレアなケースなんですか?」
「レアもレア、歴史を紐解いてもほとんどいない。王子や王女はもっと、次の王位につくための継承権争いで消えていくのが普通だね。そもそも、勘当すること自体が王族の恥だ。だから、彼の勘当は極秘裏に行われているね」
「ええともしかすると、ここにいる面々、結構ヤバい感じで?」
「や~ばい。本当に」
酒が入っている口調なのに凄まじく重い。
酒のせいにしなければ言えないひどに。
「箝口令を敷くのも、多分明日の朝まではかかる。まあ、それとなく言わないようには含めているけれど」
「大変だね……ソレに今回、ずっと影に領主一族の影がチラついているし」
「それは……だいぶ政治的な話になるから、こっちに任せて。むしろ、下手に動き回らないほうが良いかもしれないから」
さて私はどう出たほうがいいのかな……
夜。
私は確実に夢の中にいた。
それはあまりに何度も見すぎて慣れてきた景色が広がっているゆえに。
絶望という言葉すら生ぬるい感情が生じる全てを焼き尽くした世界。
生きるものは草木1本すらなく何もない大地のみが続く。
全てが炎と地面に閉じた世界。
だが私はここにきて始めて1つやろうとおもったことがある。
この明晰夢のタイプは……
古城の夢に呼び出しを食らうときと同じ感覚だ。
あの夢見枕に立たれている感覚。
つまり私を長年悩ませてきたのは……
誰かの神が私にずっと夢見枕立ちしているのだ。
夢見枕を好むのは古い神。
嫌な予感は途絶えないなぁ。
私は初めて……ここの神を探し始めた。
夢の世界は意識の世界。
そのことを改めて実感させられるほどに私の身体は自由に4足を踏み込める。
それでいて初めて曲がれたすぐ近くの角の先に。
それはいた。
「ッ!!」
見ただけでわかった。
容姿だけ言えばまるで中肉高背の男が椅子に座り本を読んでいる。
……ようで目を閉じている。
ただそれでもページを進めている。
読めてはいるらしい。
髪は黒く整えられており服装はニンゲンのそれと近いのにこの世界で見たどの服とも遠い。
言うなれば……前世の仕立てられた高級服が近い。
ニンゲンのようだ。ニンゲンの風貌をしている。
けれどにおいははっきりとニンゲンではないと告げていた。
あの顔の下に服の下にどれほど醜悪な本性が隠されていても驚かない。
それほどまでに全身で感じる悪寒と怖気が凄まじかった。
朱竜や戦争の神と対峙した時の絶対的な力の持ち主と向き合うあの無謀感とは違う。
なんならその顔立ちや一見した雰囲気は好感が強く持てるほどだ。
ミルーカはロイヤルなイケメンだとすればこちらは絶対的たる気品を持っていて。
ただいるだけで周囲は勝手に配慮し傅くような絶対的な差異を持っているのに。
あまりにも。
どこまでも。
生理的に無理だった。
私が初対面の相手にここまで拒否反応を起こすのはほぼ初のことで若干私自身パニクっている!
えっどうしやいいんだこの場合。
そもそもの感情論として私にこの夢をずっとぶつけてきているやつはロクでもないだろうとずっと思ってきた。
私の思考を染め上げようとするふしがあったし。
そしてそのロクでもないのが目の前にいる。




