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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
狂った境界と踊る神々そして大きな賭け後編
1971/2401

八百七十八生目 政府

 そしてもう一方。


「ガンザのやったこととはいえ、ぼくも知らずに加担していた……許せとは言わない、罪を償う。ただ……」


「本当に領主一族を襲うつもりなのかい? この体たらくで? その体で?」


「ぐっ……! それでも……!」


 ミルーカの身体はいまだボロボロだった。

 私が半端にしか治していないからだ。

 視た感じ言っていることは真実ながらそれはこの部隊全員に共有出来るレベルの話ではない。


 結局すぐ取り押さえられるレベルでしか治さないこととなったのだ。


「ダメです。貴方の意思はわかりましたし、きっと継ぐものもいるかもしれません。けれど、貴方には罪を償ってもらうほうが先です……」


「あなたは……確か攫われかけたという……返す言葉もない」


「それにしても、これは厄介だよ。男爵と王子……元王子か。そのふたりを兵に渡してはい終わり、とはいかないね。身分が高すぎる」


「身分……ですか? あれ? でも……」


「あー、まあ、田舎の村で住んでればそこまでそうそうないものね。ええっと、あ、そこの人!」


 正直私もよくわかっていないがミアもわかっていない。

 ということで忙しそうな兵士さんをひとりつかまえて来てもらった。


「かくかくしかじかというわけで……」


「ああー……ううーん……だとすると、確かに我々が逮捕するのは問題になりかねませんね。いや、市民を守る立場として、こんなことは言いたくはないのですが」


「ええっ!? どうしてですか!?」


「わたくしが言ったと言わないでくださいよ? はっきり言ってしまえば、政治です。元とはいえ王子は王子、さらに英雄的な男爵。どちらも犯罪者として捕らえるコト自体が政治的な動きと捉えられます。実情はともかく、世間も、政府も、王族もです」


「封建制度とは違う、とはいえ階級制度ではある、かぁ……」


「むしろ、明確に我々よりも高い立場の者たちを法的に捕まえるのが困難なほどです」


「えぇ〜……!?」


 ミアが顔をしかめた。

 意外なところで国の違いを感じてしまったな……

 権力が集まってさえいれば逮捕権限すらも微妙になってしまうとは。


 ミルーカすらもままならなさを感じているのか難しい顔をしたままだった。




 その後。

 とりあえずミルーカからはそもそも使う予定だった不正の証拠自体を押収。

 ミルーカと男爵は極秘裏に病院へ行くこととなった。


 政治的なあれこれは冒険者の介入できる範囲の話ではない……ので。

 信頼できる機関……アノニマルースに投げてオーケーということになる。

 こういう時私が有名冒険者なのがきくよね。


 なんだか私が動くってだけでみんな信じて任せてくれるので。

 なお私は信じる者たちにぶんなげる係だ。


 多くの冒険者たちは治療行きだ。

 治療しながら宴会している。

 勝ちだからである。


 冒険者たちの集団依頼はこんな感じになりやすい。

 わいわいしているのは割と陰鬱さただよう雰囲気の時にやってくれるとありがたい。

 最初の時はミアは断っていたがいつの間にか吸引されていった。


 今だけは楽しくなければこの先で心折れてしまうかれないから。

 だからミアは誰かを助けられたことを喜んで……

 ただ輪の中にいてほしい。


 そして私とバンは。


「流石に王族まで出てくるのは意外だったね」


「それが、意外じゃない……と言えばどう思う?」


 バンと私は片手にお酒を持って喧騒から少し離れた外にいる。

 なんとなく2人でここまで来ていた。

 いやなんとなくというのは正確な表現ではない。


 互いに察して外へ出た。

 普通ではない話をするために。


「意外ではあるけれど……少し納得もしますね。バンさん明らかに何か隠しているのは、わかりましたし」


「まあ、王族が出てきたあとだとかなり見劣りするけれど……私はこの国家政府の人間だよ。トップランクの冒険者にして、世界をまたにかけて活動する英傑さん」


「なるほど……そっちも多少は調べたと」


 そして政府筋の存在か……果たしてどこまでの存在なのか。

 まずこの国自体がかなり複雑さを持っていることが理解に重要だ。

 大きな翠の大地内では多くの国が群れるように存在している。


 しかしそれらの国は全てこの大陸国家1つの内でもあるのだ。

 これは調べたのでほぼ間違いない。

 州制度というのは違いがまた違う。


 まず国家大統領やホワイトハウス的なものは存在しない。

 変わりに各地に大量の政府がある。

 そして王族は未来で言う財閥会社と前例えたけれどここでもそれが活きてくる。


 つまり王族ブランドは国すら跨いでいるのだ。

 王族たちは昔からこの小さな世界をずっと牛耳ってきた一族だ。

 多くの血が流れ変化しつづけても再度立ってきた歴史がある。


 それは政府よりも重く苦しく。

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