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百九十二生目 防衛

「あれは復讐刀!?」

「ユウレン知っているの!?」

「話はあと、私は後ろに下がる!」


 爆発的に高まった殺気と共に少年が抜いた剣は剣と言うにはあまりにも分厚かった。

 片刃で先が尖りそこそこの長さがあるというのは刀としての特徴だ。

 だがその刃が真っ赤で見るからに重そうなほど太いのは一体どういったことか。


 まるで重量に任せれば誰だって技量いらずで人を殺められるかのような印象。

 それを技量も力もある彼が使えばどうなるのか。

 想像に難くない。


 振るえば突風と風の刃が起きて足元にいた骸骨たちがみな吹き飛び壊される。

 ユウレンは慌てて引いていったから大丈夫。

 私も今の重量なら吹き飛ばないし鎧にも傷は……あっ!


 カンッ! カラン。

 今ので私の肩の溝にハメていた剣が武器とばされた。

 急いで拾おうとするがもう遅く骸骨から解放された少年が身軽に手に入れる。


 だが私には脇目もふらずに少年が駆ける先にはユウレン。

 まずいユウレンに戦闘の心得なんてない。

 アッという間に距離を詰められた。


「終わりだ……!」

「カムラっ!!」


 ガンッ!!

 飛びかかって切り裂かれるかと思った瞬間に割り込んできたのはカムラさん。

 ユウレンの叫びに合わせて護りにきてくれたのだ。


 刃に勢いが乗る前に木材で食い止めれたらしい。

 少年はカムラさんを蹴って離れて地に降りる。

 カムラさんは蹴られた衝撃でたたらを踏むがすぐに持ち直した。


 カムラさんはそこそこ強いのはみたことがあるが木材ではどうなのだろう。

 そもそもこの少年相手に通用するかどうか……

 そんな思考が一瞬流れたがすぐに中断される。


『左の小剣を囮に木材で受け止めさせ右の復讐刀で木材ごとかち割る』


 スッとその未来のような光景が見えた。

 これは"怨魂喰らい"!?

 今は"怨恨喰い"に変化しているが前見たときよりハッキリとわかる。


 これほど殺意を爆発させているせいで分かったのか。

 そう思ったが少年の殺意から熱さよりもドロドロとした、底冷えするような闇がいきなり現れだした。

 恐怖をもたらすほどに強い感情。


「お前は……お前はーッ!! お前が家族を殺したこと、1日も忘れたことは無いぞッ!!!」

「な、何を?」

「とぼけるようなら殺す!!! そうでなくても、殺す!!!」


 全員が意味がわからないといった様子だった。

 1人だけ少年だけが先ほどまでの蓋をしたような声からひっくり返るような絶叫を上げている。

 走り逃げていたユウレンがハッと気づいて声を上げた。


「誰と勘違いしているわからないけれど、彼はカムラで……」

「うおおおおおぁぁ!!!」


 ダメだ、まるで聞いていない。

 カムラさんはアンデッドではあるし詳しいことはしらないがユウレンやユウレンの師匠が管理していた存在だ。

 もし勘違いだとしたら……ユウレンの師匠がカムラさんを作った参考にしたり原材料にした何かが……?


 想像しか出来ない今はそれどころではない。

 走るのは間に合わない。

 1番早く飛ばせる魔法は……


 少年が見た目はがむしゃらに小剣を振るう。

 慌ててカムラさんが木材でガードするが私は知っている。

 このあと冷静な一撃でかち割られてしまうと。


 "ストーンショット"強化、速度!

 ちいさく軽く威力もないが速度だけを高めて唱え最速で放つ!

 低い位置から放って山なりに飛ぶこの魔法でもしっかり当たるように狙う!


 復讐刀が振り下ろされるその瞬間に少年の後頭部に当たる!

 例えダメージは無くともこの瞬間に頭がはたかれたように落ちた。

 視線も集中力も途切れさせるような横槍攻撃に腕は振るい来れずにギリギリカムラさんはかわした。


「クソッ!!」

「助かりました!」


 だが危機的な状況に何も変わりは無い。

 距離を取るがカムラさんは壊れそうな木材のみ。

 対して少年は2刀流。


 おそらくは左手にある小剣は守りに右にある復讐刀は攻めに使うのだろう。

 早く合流しなくては。

 ――いや。


「はっ!」

「らぁ!」


 上空から雷撃が降り注ぎテント脇から影が走り込んで少年に襲いかかる!

 少年はたまらず反射的に2回後ろへ跳んで避ける。

 上空にはアヅキで少年とカムラさんの間にイタ吉だ。


「助かりました」

「いいってことよ!」

「ゆくぞ、ここで抑える!」


 良かった、これだけメンバーが揃えば何とかなる。

 私は本来の救援を優先しよう。

 倒れたり傷ついた魔物たちをコボルトとドラーグの元へ運ぶ。


「避難を頼んだ!」

「わ、わかりました!」

「俺の方でも手を回して弱い魔物たちは避難させている。が、アイツ1人の襲撃かわからねぇから避難誘導から手が抜けねえ。ここは頼んだぞ!」

「うん、よろしく!」


 ジャグナーも色々手を打っていてくれたらしい。

 クマと言う種族自体の頭の良さに加えて戦闘脳なのが生きている。

 確かに彼は派手に暴れているせいで陽動の可能性もあるからだ。


 最悪なのは大多数のああいう強力な冒険者達に狙われている可能性。

 ポロニアじゃないとはいえまるで手は抜けない。

 私も治療に走り回るのを優先しつつ"鷹目"で戦闘の様子を見る。


 さっきは目の前の戦闘で大変だったが武器も"観察"して詳細を読んでおこう。

 対処に役立つかもしれない。

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