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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
狂った境界と踊る神々そして大きな賭け後編
1968/2401

八百七十五生目 門番

 大技勝負では決着がつかなかった。

 向こうが技量の高い点でわかってはいたことだけれどやられると実際に驚く。

 すぐに回復しようとしているし。


 弾丸を2丁拳銃ビーストセージから放ち牽制する。

 はじきはするが邪魔できているなら結構。

 向こうが復活する前に畳み掛ける。


「うおおおおぁ!! 来るなぁぁ!!」


 ビュウロウは広くなった空間を使い高速で逃げつつ竜巻をあちこちばらまいていく。

 多分近づくと爆発して巻き上げられる。

 このままでは距離を離されてしまうので……

  

 土魔法"ロックボーン"!

 きれいにスキマを縫ってとんでゆき相手の頭へ命中。

 怯んでいる間に接近する。


「ぐお、お」


「逃がすかッ!!」


 私がギリギリ追いついて跳ね上がったせいで上空から落ちてきた"ロックボーン"の石で出来た棒状のものを後手で受け取り向き直る。

 そのままくるくると回して魔力チャージ。


 ……"ロックボーンアレンジ"!


「ま、まて! 一緒に力を振るわないか!? 俺たちのもとで、世界相手に大暴れしてやろうぜ!」


「ハアァァッ!」


 振り向き舐めたことを言い出した顎に骨の石がまとった(エフェクト)ごと思いっきりぶつける。

 顎から顔がくっきりとスローモーションでつぶれていくさまが見えた。

 当然これで終わるわけもない。


 乱打!

 魔法のアレンジなため多分そのままでは(・・・・・・・・)武技を適用できないがそれでもこれは魔法だ。

 肩に頭に横腹に足に腹に胸にと当てるだけで飛躍的にダメージが増す。


 "二重詠唱"の効果で2つぶん込めているからそうそうなくならない。

 最後にくるくる回してからぶん投げる。


 当たって吹っ飛んだところで再度ゼロエネミーを両腕につけて。

 地面へ転がり落ちたところを逃さないように念力系制御で飛ぶ。

 まっすぐならなんとかなる!


 やはり転がりながらどこかに突っ込んで隠れようとしていたビュウロウを腕の獣爪ゼロエネミーで斬り込む。


「ヒッギイィ……!」


 地面に縫い付けて見下ろす。

 そりゃあ気力をなくすよね。

 私となんども攻撃しあったのだ。


 さらに狂ってなければ遥かに格上とかでもない。

 耐性も低かった。

 ……"無敵"が通ったのだ。


 "無敵"は伝播していく。

 先程まで戦いで騒がしかった環境は徐々に鎮まっていく。

 それはまるで最大の決戦が終わり雌雄が決したかのように。


 だがまだだ。

 準備は出来た。


「こいつで、終わりだ!!」


「ぎゃああああっ!!」


 両腕の爪をビュウロウへと叩きつける。

 血が飛び出て跳ねた。

 私の黄色い血とは違う黒い血は嵐の中で彷徨うにおいがした。


「なっ!? アイツがやられただと!?」


 ガンザが唖然としてこちらを見て……

 そのスキに斬り込んできたミルーカや冒険者たちを必死に追い払っている。

 だいぶ余裕がなさそうだ。


「よし……」


 命を奪う確かな感触。

 まったくよくはないが良しとつぶやく。

 戦いはどこか楽しめる瞬間があるとこれまでさんざんやってきて思うが命を奪う感触はどうしてここまで悪いのか。


 それによしとしたのは命の奪いそのものではない。

 ……次元が歪んだ。

 それは月からやってきた雫の一滴。


 おそろくギリギリまで……いや今ですら相当に探知が優れているかあるいは知っていなければわからない。

 次元の歪みから生まれた影は1つの形に成り立っていく。

 それは尾に2つの蛇と背中に翼膜の張った翼。


 猛犬のような獣の身体に頭横に巻き角。

 美しい毛並みと顔はまるで恐ろしさを感じさせない。

 そう……ケルベロスだとは。


「キルルさん、今終わりました」


「御苦労。コイツは雑魚だが……ほう、なるほど。これは完全顕現に成功している。興味深いな」


 キルルは死体を見て呟く。

 やっぱりそうなのか。

 詳しいことはキルルが連れ帰ってから調査されるだろう。


 さて。


「キルルさん、この後の私がやってみてもいいですか?」


「月送りか? 出来るのか?」


「ええ、理論上は。見て覚えました」


 見て覚えたという言葉にキルルは若干顔をしかめるような態度をするもののそこまで反応はない。

 ただ……尾のほうは別だ。


「いや〜、へびめらとしてはやや困ったかな? と言ったものです。ヘビめとしてはどちらかといえば、そんなことを自由に出来てしまう方が困るのです。勝手に私共が家出出来たらキルル様が困るようなもの」


「ええ、ええ。わたくしたちはキルル様が感じていること、懸念していることを代表して、代わりに言葉にする者なので。世界の終わりを代わりに知らせるラッパのように、裁判に立つ弁護士のように。まあ弁護士ではなく警察という疑惑もあるのですがケルベロス自体が」


「いや、初耳だが……?」


 キルルのツッコミに対して目を遠くへやることで華麗じゃないスルーをかますヘビたち。

 ええっと。にょろろ、くねねだったか。

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