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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
狂った境界と踊る神々そして大きな賭け後編
1967/2401

八百七十四生目 岩獣

 周囲に流れるのは不自然な大嵐。

 ビュウロウを中心として吹き荒れる風に私も高台へと降り立つ。

 みんなは身を屈めて必死に堪えていた。


「な、な、な、なにこれ!?」


「あの、あいつ、あれのせいだ!」


「なんて? 何言った?」


 互いの声が張り上げたところで風に攫われていく。

 音は空気の伝播物というのがよくわかる。

 さすがに私は吹っ飛ぶほど影響は受けないけれど……


 これが単に余波なのが困る。

 相手に嫌な行動をさせないためにという点でかなり優秀だ。


「ハァッ!」


 ビュウロウが身構える。

 来る……本気の1撃が。


「今、形となり、敵を喰らえ!! 滅びの風!!」


 ソレ(・・)はすぐにわかった。

 天井近くまで大きく広がる翼を広げた蝶。

 あまりに巨大な(エフェクト)で出来た蝶は膨大な風の力を感じさせて。


 羽ばたく。

 それだけで凄まじい風圧が私達を襲う。

 全員がしがみつくしかないような状況でも攻撃はまだ始まっていない。


 どんどんと羽ばたきは加速してゆき。

 やがて体の角度を変える。


「行けっ!」


 それは顕現した魔法への号令。

 最高速に加速した蝶による特攻。

 圧倒的な質量による攻め……!


 大丈夫。

 突破口は見えている!


「うわああぁ!?」


「なんだあれぇー!!」


「ぎゃああぁぁ!!」


 悲鳴すら流されていく中で私は見据え唱える。

 胸の隠してある石を通しそして精霊に語りかけて。

 それはカタチになる。


[ファングビーストグラウンド 大岩が1つの意思として強力な大地の魔法構成ゴーレムを組み上げる]

 

 地魔法最強ともいえる最後に覚える魔法……

 指向性を持たせたゴーレム。

 (エフェクト)から生まれた大地が魔足る獣を生み出していく。


 時間にして一瞬で出来上がったそれは蝶に立ち向かうために飛び掛かるように飛ぶ。

 それは亀というには鋭敏な肉体を持ち。

 獣と言うには覆われ重なり生えた岩槍の甲殻が重々しく全てを弾く。


 唸り吠えて飛びつく顔には耳と牙が揃い相手を噛み砕こうとしていた。

 そうそれは……まるでホエハリを何重にも何百倍にも強く変化しつづけた姿のような。

 それは私の中の強さのイメージがおそらくそのまま具現化した姿だった。


 母のように。

 父のように。


「ガオオオオォォォォォォ!!」


「なっ!」


 蝶の魔法と岩獣の魔法がぶつかり合う。

 蝶が(はね)を打ち付け岩獣が噛みつく。

 途端にカタチとして制御されていた互いの力が溢れ出した。


 嵐と大地。

 大自然の脅威が吹き荒れ一瞬で中のエネルギーが飽和し過剰になり。

 ……爆発した!


 砦が上方向にスッポ抜けるようにエネルギーが外へ外へと拡散するために。

 圧縮されかち合った力は異様なほどにエネルギーが放たれる。

 歴史ある砦が今日崩壊を決定づけられていた。


 私だって神力も込めれば魔法を2枠連結させて放っている。

 ……魔法の威力を跳ね上げるのを研究している中で魔法の枠が多い者しかつかえない奥義的なものを見つけていた。

 効率よくそして圧縮して発出口を絞り出すことで魔法効率を下げずに威力を上げることはわかった。


 たださらに2つの発出口でぶん回すみたいに出来るのはなかなか思いつかなかった。

 まず既存の理論ではほとんどないし……

 当たり前だが普通は1つの口で放った方が威力が高まる。


 2つの射出を2つのエンジンで最終的に1つ練り上げて一気に放つ……

 私と精霊の共同作業だ!


「ぐおおぉぉ……」


 蝶が風を巻き起こすが岩獣がまとめて受け跳ね返していく。

 大地の強さは瞬時の風に負けることのない力。

 やがて風化し削れるとしても。


 今は押し切る!

 蝶の片(はね)が噛みちぎられ破壊し……

 岩獣は身を削りながらも進む。


 巨大魔法対決はこちらの勝ちらしい。


「行けーッ!!」


「なあぁぁ!!」


 その大きな顎は開かれて。

 ビュウロウを噛み付いた!



「ぐああああぁぁぁ!!」


「……やっべぇ……あれ、個人が出力する威力じゃねえだろ……」


「い、今の魔法密度……おえっ」


「パフォーマンス用って言われないと信じねえぞ……」


 嵐が収まり吹き飛んだ砦には平穏が訪れる。

 そのせいで色々不調を来たしている面々もいるようだが……

 それよりも大事なのは目の前のコト。


「……倒れなかったか」


 相手は神だ。

 "峰打ち"なんてせずに取りに行った。

 しかし大量のエネルギーが放出され魔力が威力として変換しキエていった今。

 中から現れた球体に目を向けざるを得なかった。


「はぁ、はぁ……はぁ……ギリギリだった……」


 エネルギーで出来た球体が点滅して消える。

 多分あれは私のギリギリ耐える系のスキルみたいなものだ。

 ビュウロウは全身ボロボロになり血らしき黒い液体を流しながらこちらを見ていた。

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