八百七十一生目 発破
私はビュウロウに巻き上げられ吹き飛ばされていた。
まずいこのままだと追撃される!
「オラオラオラオラッ! もいちょっ!」
「うっ……!」
高速で飛来して渦巻き纏う腕を回転して振るいそのあとさらに足で回りながら突撃。
その全てを当ててから最後には竜巻で出来た塊を私の頭上にぶち当てた!
私は地面へと落ちる。
「いって……まだ隠し玉があったか……」
「ろ、ローズさん!? えっなにこれ」
ミアの近くに落ちたらしい。
私は全身に纏ったイバラをしまう。
ビュウロウが痛そうにしているのは棘が刺さったからだ。
「ああ、能力だよ」
「能力なんですか! すごいですね!」
嘘は言っていない。
スキルで生やしたとごまかしつつ距離を取ったビュウロウに接近……おや?
どうやら賊をひとり下敷きにしていたらしい。
改めて跳び上がる。
さてそんなミアのほうだけれど。
「……この上にいたのは、いまのが最後だな」
「ええ、ローズさんのおかげで助かりました」
ミアたちはなんとか一角を占領することに成功していた。
バンやゴズそれにロッズがひと息つく。
「いやあ……もっと信じて突っ込めばよかったな、補助魔法の力をよ」
「全然当たらない、切れない、こっちは信じて愚直に斬っていけばそのうち押し切れてしまう……メチャクチャだな」
「まあ、男爵さんより強いってことは、ないとは思っていましましたから」
話しつつも下への道のためにロープを垂らす。
これで最悪逃げ道が出来た。
「んじゃ、俺たちはあの上にある穴をぶっ壊しゃいいんだな」
「あ! 見てください、下のひとつめが!」
そこでは1つ目の穴がついに冒険者のひとりが放った岩の槍で破壊されるのを見た。
どうやら1つは穴を壊せたらしい!
「よっしゃー!」
「でももう煙が……!」
「ようし……間に合った……結界展開!」
ウッズが長棒を地面に刺すと一定のエリアから一気に毒煙が晴れる。
なだれ込むように多くの冒険者たちが身を寄せ合った。
既に何人かが毒でやられておりむせて毒消しの処方を受けている。
「な、なあ、あんたは毒大丈夫か!? かなり吸ってた気がするが!」
「あ? あー、そいやあ、大丈夫だなオレ……これもさっきローズにもらった補助の効果か……」
「大丈夫……ぽいな、ならいいが、とにかく助かった!」
「おう!」
ウッズがひといきつく。
しかし次の瞬間結界内が大きく揺れた。
全員グラグラと体を支える。
「な! なんだ!」
「ああくそ、攻撃されている!」
誰かの言葉にウッズが周囲を見ると矢や弾が放たれていた。
さらに転がってくるのは爆弾か。
「やべっ」
ウッズが慌てて駆けて勢いのママ長棒でふっとばす。
毒煙の向こう側で爆発音が鳴り響き一安心できた。
……さらにいくつも降ってくるまでは。
「アカーン!!」
「「うおおおっ!!」」
冒険者たちが必死に防衛しにいく。
投げつけていく賊たちと跳ね返していく冒険者たち。
さらに攻防は他にもあって。
ミアたちは別の方角に移動して穴の破壊を試みていた。
「うわっ臭っ!」
「ここを壊さないと、下が毒まみれに!」
「おらどけどけ、剣で建造物壊そうってのはかなりしんどいぞ!」
「ゴズ?」「ゴズさん?」
ゴズが手際よく荷物から取り出した何かをカチャカチャと組み立てる。
そうして出来上がったのは……
台の上に乗った筒たち。
「あとはこれを壁にくっつけて……よし離れるぞ!」
全員が急いでその場を離れるとゴズは手に赤い小石を持っていて。
それを勢いよく砕いた。
途端に揺れが全員を襲う!
それは空気であり空間であり地面であり。
何より目の前で起こった何かが引き起こしていた。
大爆発!
それは派手に火が吹き出たり何かが光を撒き散らすものではない。
まあ攻撃に反応して結界光は砕け散っていたけれど。
煙を上げ光はわずかで規模も一瞬。
それでも戦場を止めて注目サせるには十二分で……
穴のある壁をさらに1つ破壊するには十分だった。
「あ、あんなのどこで……」
「いやいや! すげえなあ! ほら、あれだよ。砦攻めだからって今回、使わなかったけれど城門壊しの発破もらってただろ、あれだよ」
「「ああー」」
言われて納得する面々。
城門をどうにかするもの、と聴いていた時に城門を越えたら頭からスッポ抜けるのは往々にしてある。
というか下の面々もスっぽ抜けていていまのを見て「ああー……」っていう声が聴こえてくるほど。
それは戦いの場における空気に飲まれるということで。
誰もが逃れられないことでもある。
ゴズやロッズが覚えていたのはまさしく兵だったからこそだろう。
意外なところで小器用さを見せつつ舞台は終焉へと向かう。




