表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
狂った境界と踊る神々そして大きな賭け後編
1954/2401

八百六十一生目 炎渦

 ミアは両手剣フラワーを支えにヒザを震わせ立ち上がる。

 すでに体も心もボロボロなのに。


「まだ、わたし達だけで、勝機はある!」


 ミアは剣を構え直しそう言い放つ。

 その目は強く勝機を見据えようと輝いていた。


「オラッ! まだ耐えるぞ!」


 槍をロッズが構え防御系のスキルを発動させカチカチの(エフェクト)が走る。

 剣を槍先で弾きそらし時には斬り込むことで軌道をズラす。


「先程から砕くつもりで斬っているが、その槍、頑丈だな……」


「へっ、手先のように感じれる良いものなんでね!」


 ただ槍は大丈夫でも持つ使用者は別だ。

 受けるたびにヒザはガクガクして腕は異常に汗が出ている。

 手はもうしびれきっているのか何度もとりこぼしそうになって軽くブラブラ振っている。


 それでもまだ目は輝いている。

 あの冒険者ギルドで腐っていた目とは違う。


「よそ見している場合はあるかい!?」


「弾いているってことはよ、中身までは木のように硬いってわけにはいかないんだろうっ!?」


「ほう、まだ食らいついてくるか!」


 ヨロイ騎士が武技ではげしく回転しロッズの槍を引き剥がしたあとバンやゴズがかわりばんこに斬りかかる。

 バンのハンマーややはり少なくない痛手を負わせている。

 今肩に当たったフルアーマーが変形しているのは確かだ。


 短剣も楽にしのいでいるようには見えるが明らかに集中力を割いている。

 腕の鎧で防がねば横腹を突付かれるからだ。

 稼働の関係で絶対に短剣が通るスキマは各所に顕在している。


 そしてゴズにそこを通す技量はない。

 しかしゴズになくとも警戒しなくてはならない理由にはならない。

 なぜならヨロイ騎士はそこを通す技量がある。


 自分が出来ることを警戒する……

 それはまさしく当たり前で当然で。

 だからこそヨロイ騎士の選択幅を狭めていた。


 それでも対処せざるをえない。

 短剣のギラつきは本物なのだから。


「うおおおぉー!!」


「はああぁぁー!!」


「ハッハッハ! フゥン!!」


 4人とひとりの武装が激しくぶつかり合う。

 ヨロイ騎士が肉厚な刃を軽々と揺らめかせ多重のフェイントを織り交ぜながら全員を同時に相手して。

 なによりもほぼそのまま押し切るほどに実力差がある。


 剣が槍を打ち払い袈裟斬りを放てば必死にロッズたちが転がって避ける。

 返す刀でフラワーの柔らかく襲いかかる刃を弾き返し踊るように歩みながら短剣を腕でしのいでハンマーを避ける。

 そして目指すは彼らの支柱。


「そろそろ、決着をつけるとしようか!」


「くっ! 道が……!」


 時間にすればあっという間だった。

 いつの間にかヨロイ騎士の前にはウッズ以外の敵はいない。

 長棒でギリギリ魔法を唱え終わった彼以外は。


「間に合え! あとどうにかなれ!」


「はあぁ……!」


 ヨロイ騎士の周りに集まる圧力と(エフェクト)からしてまた疾風迅というもの。

 直線的に凄まじい加速で突っ込むものだ。

 さらに同時に前方へ斬る。


 ウッズが受けたら耐えられない。


「まずい、ウッズー!」


「間に合わせ、ます!」


 柔らかく長くした剣で遠くから攻撃していたミアはウッズの直ぐ側にいた。

 そしてウッズは……

 ミアに向かって魔法を放つ。


「くおおおっ!!」


「力を貸して、フラワー」


「む!?」


 それは先程ヨロイ騎士を吹き飛ばした炎の迫撃。

 勢いがついて廊下ごと破壊する力のある炎がミアを襲いかかり……

 その光景にヨロイ騎士も一瞬動きが止まる。


「やべぇ……」


「手元が狂いおったか? 味方を……」


 しかしそれ以上言葉が紡がれることはなかった。

 ヨロイ騎士が異常に気づいたからだ。

 ……ミアを飲み込んだ炎が一箇所に集まっていく。


 両手剣フラワーが真っ赤な(はな)を咲かす。

 剣が火を纏ったのだ。


「何!?」


「はあぁぁー!!」


「だが、そんな小手先など! ハッハッハーー!! 疾風迅っ!」


 一気に力をためた後両者爆発させるように動き出す。

 前へ踏み込むのは両者同じ。

 剣を構え突撃するのがヨロイ騎士。


 そして剣を持って大きくグルグル回りだしたのがミア。

 ミアの剣は(エフェクト)で風を生みヨロイ騎士の剣は(エフェクト)が風を切り裂いていく。

 そしてミアの剣には炎の輝き。


 竜巻が生み出されればそれが全て赤に染まる。

 炎を反射し威力を上乗せして相手へ跳ね返す。

 それが武器に付与されたスキルであり……ミアがとっさに思いついた応用だ。


 味方の魔法反射して敵へ叩きつける。


「炎の……竜巻!」


 バンたちが危険地域から離れつつその光景に目を取られる。

 両手剣フラワーは切れ味の薄い刃だ。

 かわりにその剣は相手を叩き潰し切ることに長けている。


 ヨロイ騎士の剣のごとく鋭さがないからヨロイ騎士のフルアーマーによく響いていたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ