八百五十八生目 危険
前の話がかぶってたので、ちゃんと今回の話を編集しなおしました 2022/06/21
再び砦内へと戻ってきた私達。
その時腕輪が情報を受信する。
なになに……
「えっ!? 苦戦中! みんな、砦内の味方が苦戦している!」
「はからずもナイスタイミングになっちまったなぁ……」
「楽勝ムードでいてくれよ」
「やっぱり救援は必要なんですよ!」
ミアが力説する通りになってしまった。
戦闘は5分10分あれば戦局は大きく動きやすい。
特に集団戦で互いの陣地に引きこもっているときとは今は比べ物にならない。
目まぐるしく動く戦局では何手も先に考えないととてもじゃないが動きは間に合わない。
私達が戦いの現場にたどり着いたときには既に激しい戦闘が見られた。
木がぶつかり合う音。
魔法の放つ鳴り響く爆音。
……血のにおい。
「……いこう!」
私の掛け声と共に全員で突っ込んだ。
「竜巻……切り!」
「オラオラっどけえっ!」
「な、背後からだと!?」
まとめて吹き飛んでいく敵たち。
数は少なく不意打ちであったため一時的に蹴散らすならこれで十分。
武技の構えで少し動きにスキが出来ているあいだに3人組が突入する。
「うっ」
しかしうめき声と共に一瞬怯む。
遅れておいついたふたりはそれを見ようとして。
「ミアちゃんは見るな!」
「えっ? あっ……!」
ミアは目に入ったものを意図的に目をそらす。
私はわかっていた。
そして分かっているからこそ足を踏み入れる。
「えげつねえな」
そこにあるのは散乱した血と肉。
互いに斬りあって。
余裕のなさから凄惨な命の奪い合いと化していて。
敵は死んでいるのか気絶しているのか血を出し倒れ込んているのが何人か。
味方は何人か腕や足が無い。
それはみな同じような切れ味でなされていて。
「うっ」
むせ返る脂と鉄のにおいで結局ミアは顔が一気に青ざめてしゃがみ込む。
他の面々も抑えきれない嫌悪感を表した。
そして未だ息あらく生き残り立ち向かっている冒険者たち。
5体満足だが血を流し既に生命力が削れている。
対して……
「ハッハッハッ! 覚えて奥が良い、フルアーマーは剣術3倍段! フルアーマーを着込んだ相手は3倍剣がうまくても、勝てるかどうかわからないということだ!」
「グアッ!」
振るう刃は肉厚で。
一閃するごとに冒険者たちを追い詰める。
そして着込んだ全身鎧は凄まじい威圧感。
私なら取れる。
フルアーマーの弱点である魔法への弱さも防護魔法で保護してあるが……
私にとってはあってないようなものだ。
しかし……まだ違う。
それにみんなを回復しなければ。
「ミア、その感覚は大事。だけど無理しないで。他のみんなは怪我人のことは気にしないで。こっちで回収する。あの鎧に、目にものを見せてやって!」
「「おう!」」
「わたしも……いけます!」
ミアはグロッキーながら口元を拭い両手剣フラワーを持って立ち上がる。
傷ついて疲労した面々は話している間に回収した。
イバラ使えたら早いんだけどもそうもいかないからね。
蹴散らした背後の兵が復活してきそうなのを蹴り倒し倒れたり傷ついた面々を引き連れ一気に場を離れる。
斬り落とされた腕や足も回収だ。
"守護領界"と"銀の神盾"をあくまで神力未開放レベルで操って。
「"今は休む闇よ、危機から遠ざけ癒やせ、バリアー!"よし」
色々はしょりアレンジして結界を作り出す。
そして雑に意識が朦朧としている面々を放り込んだ。
死んだものもいるが死んだのは今だから……
聖魔法"リターンライフ"で十分。
4つの魔法枠をフル稼働させて治療。
頼んだよ精霊さんたち!
「か、体が治ってきた……!?」
「…………っぷは! ハアハアッ、し、死んで、あれ……!?」
「腕がまたくっついた! ありがてぇ……高度な回復術を使えるんだなあ!」
こっちはひたすら集中して回復し続けるだけだ。
周囲に来ている賊たちではこの結界を突破する実力はない。
完全回復までいさせてもらおう。
さて向こうは……
「はああぁーー!! クワ下ろし!」
「ハッハーッ!」
柔軟流変でよくしなった両手剣フラワーの勢いが強い大上段。
しかしヨロイ騎士は完璧に合わせて弾く。
しかしゴスは何もいわずミアの動きに合わせナイフを突き出す。
「効かん!」
「チッ」
腕部分の鎧を巧みに使いナイフを迎撃しおどるように両手剣を振るえば槍が割り込んできて。
「させるか!」
「ほう! 防ぐか!」
「あがっ、お、おもい……!」
鍔迫り合いにはなるが拮抗したのは一瞬。
そもそも槍は鍔迫り合いには向かない。
弾き流す武器だ。
「うおおお!」
「むっ! どおりゃっ!」
「「ぐはぁっ!」」
勢いよく弾かれゴズとロッズが吹き飛ぶ。
しかしそのスキにハンマーが襲いかかった。
バンだ。




