八百五十七生目 結界
私達がやるのは陣地づくり。
敵がなかなか来ず破壊に手間取りなおかつ中で継続治療するものがあれば良い。
「結界杭、こっちは刺し終わったぞ。後は?」
「これで出来ているか見てほしいんですけれど……」
「お、どれどれ……意外にちゃんと出来てるね」
ミアの杭をバンが見て大きくマルを腕で作る。
それを見たウッズが杭の四方で囲まれた中央で鈴を掲げる。
長棒を鈴のついたひもごと持ちもう片方で結晶体を持って。
大仰な動きをしてから地面へと投げつける。
結晶体が刺激と共に輝きだし不自然に地面へと刺さる。
まるで自ら潜り込むように。
「んにゃ〜〜らろんにゃ〜〜ら、フンッ! 発動せい!」
長棒で叩き潰すように結晶体ごと地面へ叩く。
すると一気に魔法陣が広がった、
杭を端として四角い陣が描かれる。
90度の角度はニンゲンがニンゲンゆえに起こせる最もニンゲンらしい角度。
それで囲むことでニンゲンが発動するさいに強烈な強化を与えるのだ。
人工的であるということは自然ではない力を生むということだかららしい。
「お、あの動きはランドール流だな」
「へぇ、詳しいんですか?」
「ローズさん! いやまあ、詳しいっていうか、メジャーどころだからたまたま……結界を張る主流派の1つで、あの踊っているような動きで覚えちゃうんだよ」
バンは私が話しかけてきたのにびっくりしたらしいが術を語る姿は生き生きしていた。
どうやらこういうのが好きらしい。
ただこの動きは少なくとも私はしらないからまさしく翠の大地でのメジャーだろう。
「おうい! 安定化終わったぞ! けが人、疲労人詰め込め! それ以外はさっさとどけよ!」
「よっしゃ、やつらの真ん前に陣地つくってやったぞ!」
「敵の捕縛終わったかー! 逃がすんじゃないぞ、捕まえただけボーナスなんだからよ!」
ガヤガヤとにがやかになりながら炎を焚いていく。
臨時の明かりだ。
これでニンゲンたちは動きやすくなる。
ちなみにみんなは私の補助魔法効果で敵からは闇を運び闇の中で蠢くナニカに見える。
看破能力がひくければ低いほど認識が阻害されるのだ。
退治した相手は恐ろしいなにかに戸惑いその間に剣が飛んでくる。
武器の起動1つ見破るのもなかなか大変だろう。
また闇の中にいれば暗視能力もある。
炎が焚かれたところで対して違いはないのだ。
「おう、他のメンバーはどんな様子だ?」
「えっと……順次突入していっておるけれど、思ったより苦戦しているみたい。門が最大の難関だと思っていたから、なかなか中で苦戦するとは思ってなかったようで。こっちの兵たちの突入ももう少し後だし」
「では、わたしたちも乗り込みましょう!」
ミアが気のいいことを言うがみんなの反応は芳しくない。
「それはここを離れるってことだぜ……?」
「ミア、気持ちはわかるけれど、アタシたちが中に入ったら撤退の動線を確保する係がいなくなる。もしものときに、危険だ」
「それはもちろんわかっています! 今、Dグループが突撃し兵たちがあと少しで一気にきてくれるんですよね? でしたら、大事なのはここの奥の動線です。別働隊が前方の敵に集中出来る間は強力ですが、敵だって馬鹿じゃあありません。さっきのわたし達みたいに挟み撃ちを仕掛けてくるでしょう」
「ううむ、そ、それは……」
実際可能性は高い。
私達は門前に辿り着こうとするだけで何度も挟み撃ちにされた。
それは向こうが地形を熟知しているからだ。
「そこで、私達はここを兵士さんや回復中のみなさんに任せ、前へ出ます。相手の背後をまた突くのです! なにより、味方の周囲を守ることで、安全に前方を攻めれます。退路もしっかり確保できるのです」
「一理はある。が……危険すぎやしないか?」
ゴズがそう尋ねる。
確かに私が思ってもリスクが高い行動だ。
きれいに背後を突ける保証はない。
「そこは大丈夫ですよ。だって今、ローズさんのおかげてわけがわからないくらい補助かかっていますから! それにローズさん自体もいますしね」
「「ああーー」」
「くっ、たしかにこの力があれば、いくしかねえか……」
「えっ!? みんなの反応何かおかしくない!?」
補助魔法のことで逆になぜか安心されてしまった。
過剰な信用を置かないほうがいいのに……
「それに、前に出ている面々はローズさんの補助魔法、受けていませんよね」
「なーるほど……それは危険だ」
「オレらのような補助効果がないのに、前に出るのはたしかに危険だな!」
「よし決まった! アタシたちが前方の班助けるぞ!」
「「おおーー!!」」
そ、そうなったかあ。
まあいいや。
それはそれで良いことではある。
私は腕輪からメッセージを送って行動することを伝えた。




