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百九十生目 妨害

 襲撃者がやってきたはずの現場について感じたのは驚愕。

 どこかですれ違ったのか犯人には出会えなかった。

 そんなすれ違って逃してしまう程度の気配はやはり巨大なポロニアではありえない。


 それと同時に思ったのはあまりにも圧倒的だと言う点。

 おそらくは一方的に何匹もを相手にして大量の刀傷を残している。

 私は傷口の専門家ではないが爪痕にしては細くそして1本ずつだから剣で斬られたような感じだろう。


 もしや、ニンゲンか?

 確かに冒険者がこの場所で大量のモンスターを見つければ攻撃されるかもしれない。

 だがそれはこの迷宮の入口付近にいる大鷹が頻繁に狩場にしていてなかなか寄ってこられないはず……


 そこまで考えて悪寒がはしる。

 まさか大鷹が負けた?

 死んで……ないと良いのだけれど。


 考えても仕方ない。

 今は急ぎなので道中で"進化"するために用意した地・土・火・光という4つの魔力を使う。

 爆発的魔力を全身に行き渡らせ"進化"!!


 アッという間に姿がグラハリーに変化する。

 にぶい金の鎧こと変化させた全身を覆う棘毛は7割程度に。

 これなら疲れず動ける。


 全身を高揚感が包む。

 進化時はこれと共に来る万能感が本当にやっかいだ。

 使ったらそのまま調子に乗って破滅に突き進むやつとかいるんじゃあないかな。


 この姿になったのは身体に魔力が満ちるからだ。

 強化魔法を使うさいにいくつかのステップを踏む必要はない。

 唱えて強化したいやり方を考え選ぶだけで良いから次々行える。


 光魔法強化"ヒーリング"!

 範囲化させてあたりを淡い光が包むとそれぞれの魔物たちの傷が塞がっていく。

 うん、なんとかみんな生きている。


 逆にいえば"峰打ち"を使わずにやっているのならばそれほどに圧倒的力量差で楽々抑えられたということ。

 事態は楽観視できない。

 ある程度癒えたらすぐに次へ向かう。


 相手を追うのは楽だった。

 なぜならどこかしらでやられた魔物たちが転がっていたからだ。

 みな致命傷には至っていない。


 やはりニンゲンの犯行なのか。

 許可なしに魔物を殺せばニンゲンは重罪がかせられる。

 2つ名持ちと呼ばれる強力な魔物が発生するのを防ぐための方だ。


 だとすればやはり襲撃者は冒険者か。

 なんという手練なのだろうか。

 魔物たちの血はそこら中にあるがニンゲンの血の香りはまるでない。

 傷を負っていないのか。


 道端に転がる魔物たちに次々強化"ヒーリング"をしていく。

 そしてなるべくいそいで進んでいるのだろう道筋を辿った。

 犠牲者が増えるばかりなのは良くない。


 急いではいるが治療優先なためそこまで速度は出せない。

 ただ先へ行けば行くほど倒れる魔物たちが増え傷が残るテントも出てきた。

 戦闘が激化している。


 何分も治療しながら歩き続ければついには激しい衝突の音が聴こえてきた。

 おそらくは金属と爪や牙の音。

 その気配を便りにテントの角を曲がれば……見えた。

 ちょっとした広間で多くの魔物たちが迎え打っている。


 ジャグナーも何やら指示を飛ばして走り回りドラーグとコボルトが負傷者を回収して回復しまわっている。

 結果的に奥まで侵入されたから急いで向かったはずが遅くなってしまった。


 悔やんでも仕方ない。

 敵は多くの魔物に囲まれた中にいる……あいつか?

 え? ひとり?


 しかもなんなんだ、その、小学生くらい?

 男の子だろうか。

 え、嘘でしょ。


「もっと経験値(かて)をよこせ……!」


 子どもが無理矢理低い声出そうとしているみたいでかわいいと一瞬思った。

 だがその次の瞬間に考えは吹き飛んだ。

 囲まれていたはずが魔物たちが次々と吹き飛び斬られていくではないか。


 私の目は速いものほど良く捉えるからわかる。

 手に持った剣を尋常ではない早さで振るってその勢いと連撃で吹き飛んでいるのだ。

 おそらくは武技。


「負傷者はすぐに下がれ! 後衛と変われ!」

「先ほどからなんだ……? まあいい、面倒だ……早く倒れろ……!」


 どうやら彼に向かって話していないせいでジャグナーの声は翻訳されていないらしい。

 そのかわり何か吠えられるたびに列が入れ替わって決定打を与えられないのだからイラついていると言ったところか。

 ナイス足止めだ!


 急いで向かいつつ"観察"!


[???Lv.40 異常化攻撃:??? 状態:通常]

[妨害されました]


 ログに表示された内容に驚愕する。

 妨害されたのは九尾に続いて2人目。

 そこはニンゲンは特に相手へ対策を立てると思うから仕方ない。


 だが問題はレベルだ。

 え、ちょっとまって40?

 ポロニアや森の迷宮の巨大虫に比べれば低いが、それでも十分高い。


 もしかしたらかなりのやり手の可能性があるとは思っていたが、本気で危険な相手かもしれない。

 気を引き締めて戦線へ加わるべく突入した。

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