八百五十六生目 開門
バンが門の開閉器を守っている賊たちを蹴散らす。
ゴズが重い開閉器……つまり体全体を使って引っ張り切り替えるスイッチに取り付く。
「そう、れ!」
ゴズが一気にひくと門の方から音がした。
どうやら開閉器はちゃんと作動したらしい。
「おや? 随分手慣れてるじゃない」
「そういうものなんですか?」
「ああ、これって意外と動かすのにコツがいるんだよ。アタシでも難しい」
「ふん、悪いか? ……昔の仕事だよ」
「ああ……手なれていると思ったら」
「え?」
ミアだけわからずみんなを見回している。
ウッズとロッズはどこか懐かしむように遠くを見つめる。
「ミアさん、この3人は元は、どこかで兵をやっていたんですよ」
「ええっ!? 元兵士なんですか!? こんなのが!?」
「おいこんなのって言うなこんなのって。景気がいい時代は、ちょっと都会にいくだけでどこでも引く手あまたなんだよ、多少荒事も出来てただ決まったことを繰り返す兵士って役割がよ」
「あの時代は良かったな……何より平和だった。胡散臭くなってきて抜け出したがな」
「それに給金も悪くなっていた。ちょうど抜け時さ」
「へぇー……意外です」
「胡散臭く……?」
「ほらみんな、話はいいけれど来るよ!」
私はちょっと気になったことがあったがバンが指摘した通り門のところでどんどん騒がしさがましている。
Bグループが合流してきたのだ。
Cグループもきたかな?
「私達はこれから動線を死守するよ。向こうは全快だから勢いで載せれるはず。私達は撤退して回復する陣地を作るよ。最終的に中で大立ち回り」
「「おう!」」「はい!」
今門が開いて一気に攻め立てる面々は勢いづいている。
さすがにこれで国家騎士クラスも釣れるだろう。
ただ同時に向こうは逃げることは考えていないだろう。
この作戦の肝心部分は戦力の随時投入だと思わせないことだ。
潜入側と正面側に分かれたと思わせることに出来るだろう。
そして倒し切ることはできるだろうと。
実際はその間に手遅れになるよう工作を行い囲う。
損切りを遅らすことで致命打を与えることだ。
もちろんこの弱点は戦力の一斉投入ではないということだ。
先発部隊への負担が凄まじく死ぬ可能性がとても高い。
向こうは押し返しやすいしね。
ただ現状を見るに成功といったところか。
私達は門の前に群がる賊と押し返している味方部隊の姿を見た。
向こうも派手にやっているらしい。
「おし、今の補助魔法ならいける。正面から外に突破するぞ!」
「だろうなと思ったが、マジかよ!」
「行きます、背後から一斉に奇襲を!」
向こうはもはや敵が多くて注目度が門前に集まっている。
今なら奇襲し放題である。
そして全員が大きくためた攻撃で襲撃した!
「「ハアァーーッ!!」」
「なっ!?」「背後!?」
「「グアァーー!!」」
挟み撃ちだ。
これで集団に大きく被害を与えられた。
ゴズとロッズみたいに地味な動きしか出来ない面々も喰らいつくように追撃している。
「うひょー! まだ全然戦えるぜ!」
「外にいたやつらのが強かったな!」
「あ、そうか、これ補助魔法でオレらが強くなってんだよ!」
「「ハハハハッ!!」」
変なテンションになっている3人組が血路を開いてくれる。
突っ込んでるので当然非常に危険だ。
多少の攻撃をものともせず防ぎつつ進んでいく。
「なんだこいつら、止まらん!」
「くそ、なぜ怯まん!」
「怯むわけねえだろ! オレたちが!」
「死ぬほど補助もらったんだぞ、恐れおののけ!」
「何を自慢しているだか……ま、アタシたちも突っ込もうか!」
「あ、はい! 多いなあ、怖いなあ……」
「アタシの後ろに続けば大丈夫! はぁ!」
バンも突撃しそのあとにおっかなびっくりミアが続く。
とはいえ戦力的にはかなり高いふたり。
突撃した先で破砕音や竜巻が巻き起こっていく。
「大丈夫ー! ……そうだなぁ」
こうなると私は周囲警戒以外やることがない。
ちなみに王国騎士レベルのひとりは前の班とぶつかっている。
賊たちの多さは厄介だが王国騎士レベルひとりの厄介さは時にそれを上回る。
賊を減らすことが活路になるだろう。
他の面々は……まだ中で待機している。
どうやら門前で戦うより中で戦うのを選んでいるようだ。
特にこの神が放つ気配。
後ろに奥にと待機しているようだ。
まさしく手ぐすね引いて待つかのように。
殲滅そのものはすぐに片付いた。
もちろん大人数戦闘にしてはという意味だが。
「事前情報より表に出てきたのが少ないな?」
「中に引っ込んでいるっぽいぜ。罠はって待ってやがる」
「外から揺さぶりかけられない?」
「ムズイネー、ここ、見た目と違って対空対策されてるネ。魔法障壁が覆ってるヨ」
みんながああでもないこうでもないと話し合っている。
私達Aグループはその間にも
陣地を作っていた。
まあ私は見ているだけだけれど。




