八百五十生目 死闘
戦う3人組と兵5人。
本来なら圧倒されていてもおかしくない。
しかし3人組は耐えていた。
「なんつーか、この武器強えな……」
「それになんというか、ちょっと分かってきたらよお、なんだかうまく立ち回れていないか……?」
「わからねえ、少なくとも全員まだ死んでねえ」
「やっぱり、あってんのか? これがよお……」
ウッズは自身の手にある長棒を見つめる。
攻め込んでくる相手はロッズが泥臭いながらも槍でさばいた。
ゴズは両手剣の違いを把握して避けていなすようになってから格段に被弾率が減っている。
そして鎧のスキマを縫うように斬り裂いた。
「ぐうっ! ふざけっ」
「ほうら!」
腕を狙われ弱ったところをウッズの長棒が襲う。
前までは出来なかった直接殴打の選択肢が魔法以外の活路を生み出す。
思いっきり頭の上から叩き込まれた長棒は決め手となりまたひとりの兵が崩れ落ちた。
ざわりとのこり4人の農民崩れ兵たちに恐怖が走る。
「お! またひとりやれたの!」
「ペースアップしてきているなあ」
「ったく、練習1回目にしてハードすぎるんだよ!」
ニンゲン対ニンゲンの勝負は技術により短時間なことが多い。
しかしここまで互い粘っているのは特に兵たちにとって予想外だろう。
元気な兵たちも武技を連発したツケを払っているしちゃんと1人ずつ落としている。
全員をまともに相手にせず落ちる相手に集中砲火するのは冒険者としての基本だ。
木製の短剣が光と共に煌めき関節狙いに揺れる。
防ごうとした兵が直剣なのに押され何度も細やかに揺らめく刃を防ぎきれない。
「ほい、ほい! なるほどこうか、手数だなー!」
「なぜだ!? 動きがここにきて良くなってきている!? はあぁ!!」
「させねえっての!」
ゴズにわりこむようにロッズの槍が差し込まれ直剣が弾かれる。
短剣は受けるのに不利だが槍は相手のリーチを越えて攻めて防げる。
そもそも彼は盾を構えるだけで下手だったから槍を両手で構えるようになって初めてちゃんと防御役になったようだ。
振るう刃はどれもこれも急所に当たりそうもない。
互いに泥仕合なのだが魔法使いは別だ。
不意をつき飛んでいった氷のつぶてが矢じりのように頭へ飛来し兵士の意識をまた1つ奪う。
あっという間に人数差はイーブンとなった。
「おかしいだろう、なぜ削りきれない!?」
「し、しんど……本当に死ぬぞこれ」
「悪いが死にたかねーんだよ! ぶっ殺すって意思でギリギリなんだ。いい加減倒れてくれや……!」
ただまあ間違いなく3人は頭や体から血を流し続けている。
確かに1回で使い切るぐらい全力で挑んでいいとは言ったもののさすがにそろそろ限界か。
彼ら武技は使わなくても結構細々としたスキルは使い続けていたみたいだし。
今も槍使いのロッズが槍を振るうとその場の敵全員の注目が無理やり集まった。
短剣のゴズは振るわれた直剣に対して突然真横にスライドして避ける。
長棒を振るうウッズに関してはもう何回も魔法を唱え続けているから言わずもがな。
行動力とスタミナの枯渇化。
ぶっちゃけ彼らはだいぶ疲れていた。
「ここを乗り切ればオレらの勝ちだ! いくぞおおお!!」
「うおおおお!!」
「最後の魔法はでっかくいくぞ……!」
そして世の中勢いというものは大事で。
はっきりいって兵有利は崩れていなかったのに勢いに飲まれた。
兵たちが下がってしまったのだ。
「ぐっ、こんなに強い奴らとは……!?」
「そもそも、弓はどうしたんだ、なぜ、矢がこない!?」
「弓ってさっき倒したやつらか?」
「……あ?」
そして兵がふと横に目をやれば戻ってきた女性ふたり。
一気に駆けて戻ってきた。
「やっとか……」
「おせえぜ……」
「こ、こんなところで負けてたまるか!」
兵たちは反撃に出るがさすがにもう遅い。
バンはこの中では力量がまず高い。
あっという間に近づくと相手の直剣ごとへし折るようにハンマーを振るう。
そしてミアは相変わらず不安定な動きをしながら一気に接近。
兵士が振るおうとした刃を恐れすらしないようにくぐり抜け。
1撃両手剣を振り抜いた。
「柔軟流変は攻防一体」
振り抜いた刃が……
まるでつるのようにしなったかと思うと勢いよく兵へと襲いかかる。
本来ありえない軌道を連続で叩かれればいくら正規の訓練を受けた兵だとしても。
「ぬっ、ぐ、ぎゃああああっ!」
何回か耐えても全て耐えられるわけでもない。
兵がひとりふっ飛び残り一人。
「バカな……!」
「よっしゃあ! 囲んで叩くタイムだ!」
兵は引こうとしたが時既に遅し。
すでに囲まれゴズの短剣が光 できらめく。




