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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
狂った境界と踊る神々そして大きな賭け後編
1940/2401

八百四十七生目 五人

 ひとくち分の薬液をミアの口の奥へ流し込む。

 一気に飲み込んでもらいすぐ水筒を手渡すと一気に飲み下した。


「ん、んんーーっ!! っぷは! あ、甘い……! 甘さって、こんなに不味さに直結することってありますか!?」


「それが、あるんだよ。しかもくさい」


「うわっ!? 息がくさい!」


 口から変な白い煙が出ている。

 すぐにおさまるから良いけれど気になるんだよね……

 結構魔法的な効能が大きいから影響が大きいんだよね。


「よし、じゃあ明日に備えてクールダウンの訓練しようか」


「えっ!? クールダウンなのに動くんですか!? それに、飲んだけれど何も変化がないような……」


「そうそう。完全に休めるより、体がちゃんと落ち着けれるからね。薬の効果はまだ後にわかるよ」


 そのあとは緩い動きの訓練をした。

 肉体を休ませて痛みを取る動きだ。

 気持ちいい弛緩というか。


 なおやっている間、


「あだだだだだ!?」

「人はそっちには曲がりませんよ? 曲がりませんよっ!!」

「あれ!? わたしの体、どうなって……どこまで伸びて、どうなってるの!?」


とめちゃくちゃ騒いでいたが。

 アノニマルースでは普通なのだからへーきへーき。

 そうこうして夜を過ごして。


 寝て起きたときは出発の時。

 斥候が合図した不意打ちに1番向いている瞬間だった。

 どうやらあの先輩冒険者含むメンバーが斥候していたらしい。


 確かに彼女は雰囲気からして他の冒険者たちと一線を画していた。

 ほかだと割と不安だったから良かった……

 私達は一丸とならないよう気をつけながら散開して歩みを進めた。


 賊が占拠した砦の立つ位置は元々砦なのだからめちゃくちゃ立地的に有利。

 小高く周囲を見渡せ同時に登ってこれる方向が限られている。

 更に意図的に道が作られていてそれ以外を潰してあって。


 天然の崖や山が死ぬほど道を狭めるくせに見晴らしがよく一方的に攻められる。

 正直めちゃくちゃ攻めるに堅い配置だ。

 これが廃棄された昔の砦になっているのは単純にここを砦にする意味がなくなったから。


 遥かに昔はここが国境の1つだったらしい。

 今は完全に国内ど田舎。

 兵力を割く意味もなく砦もそこそこ壊れている。


 ただし今では石と木材でしっかり補強されきっているが。

 砦から覗く魔法兵器もどうやら動力が通っているらしい。

 正面突破はだめだろう。


 私たちのAグループは夜闇に紛れながら山道の登坂をする。

 Bチームは遅れて反対側から。


 Cチームは馬が通れないような道から潜み歩く。

 Dチームは交戦をせずギリギリまで砦付近に隠れる。

 Eチームが遠方から待機しつつ機を狙って突撃する。


 私達のチームは自然に交戦が多くなる。

 なのでミア含む5人プラス私だ。


「ここは事実上陽動、思いっきり戦っていいからね。特に、怪我をしても私が控えているから、戦闘は死なないことを目標にしよう」


「それにしても……」


「どうしてこいつらとなんか……」


「ケッ、こっちのセリフだ」


 そう。

 ここにいるのは先輩冒険者とミア。

 そして絡んできた3人組だ。


 絡んできたあたりの話はミアも知っていて先輩冒険者は目撃している。

 短剣を使わせているのがゴズ。

 長棒を使わせているのがウッズ。

 槍を使わせているのがロッズだ。


 悲しいことに「武器を買える金なんてねーよ!」 って言っていたので貸し出した。

 レンタル料金は2年武器を使い続けると総額になるくらいなので1日の貸し出しでは微々たるものだ。

 付与して輝き消ししている。


 まあ全員1付与の微妙な武器だ。

 実用性はたしかにしてあるけれどそれ以上ではない。

 ガード力上昇(中)とか。


「仕方ないよ、ここにいるうち4人は隠密とか無理だし……」


「「うっ」」


「それをカバー出来るのは、一定以上に強い……それこそ、あのギルドでは飛び抜けて強い者じゃないと」


「ふふん」


 そしてハンマーを買ってきた先輩冒険者はバンデラス。バンだ。

 軽く後ろで止めた髪が頭から垂れる尾に見える。


 というわけで。

 つまり私達は間抜けな冒険者一行を演じるわけだ。

 実際の所囲まれたら逃げるのすら困難。


 私達が下っ端に舐められればそれだけで軽い交戦ですむ。

 というわけでうん早速軽く歩いただけで見つかってるや。


「……………」


 バンの顔つきが変わった。

 私に軽く目線を向けてくる。

 他のメンツは気づかずワイワイやっているままだ。


 大丈夫だと軽く手信号。

 バンは顔をわざと明るく変える。


「おいおいー! そろそろ危ないって地域に入ろうとしてるんだぜ? のんきにしてていいのかー?」


「「こいつが悪い」」


 4名は互いを指さし合っていた。

 あっ、今ミアが一瞬頭に「!」を浮かべたような顔をした。

 違和感を察したかな。

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