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百八十九生目 浸透

 炭も出来て作業が順調に進んできた。

 進めば進むほど新たな問題もわいてくるが……みんなが優秀なのでなんとかなっている。

 その証拠に最近はめっきり魔物同士の衝突が減っていた。


「……というのが今までの成果です」

「お疲れ様ドラーグ」


 誰の働きが1番大きいかと問われば迷うがドラーグはかなり活躍してくれている。

 ドラーグは性格やそのかしこさからパニックになりやすいし野生生活ではむしろ困惑してばかりでなかなか動けない。

 だが一転して頭仕事である法律やら決め事それに魔物同士の風習違いによる理解の埋め合わせはとんでもなく得意なのが分かった。

 言葉が通じればなんとかしてしまう、というのがドラーグの仕事ぶりを見ていての感想だ。


 何せ、


「今回は『かくかくしかじか』と言ったことをしたいのですが、良いですか?」


 と聞かれて、


「うん、いいよ」


 と答えればだいたいうまく行っている。

 難航しても方向修正が上手い。

 ただ最後の念押しである誰かの許可は欲しいみたいだけどね。


 ドラーグはドラゴンとしての頭脳とともに活動時間の長さも特徴的。

 トランスして影の竜になってからより際立つようになったがいつ寝ても自由で寝る時間はかなり自由。

 何週間分ためて寝るみたいな芸当もできるかも、とドラーグは言っていた。


 生きる時間の単位が壮大過ぎて1日ごとに生きる他の生物があまりにも小さい。

 そうそう、ドラゴンってこういうのでいいんだよこういうので。


 そんなことを思いつつもドラーグの机仕事が終わったらしく片付けてテントを開ける。

 外の景色がまぶしい。

 今はちょうど真っ昼間か。


「ではお疲れ様です!」

「お疲れ様〜……うん?」


 ドラーグと挨拶を返した時にふと気配が急接近するのに気づいた。

 明らかに急いだ足音に乱れた呼吸。

 そしてまっすぐこちらへ向かうのが感じ取れる。


 それにはドラーグも感づいたようでテントから外へ目を向け……

 すぐに気配の主が顔を覗かせた。

 犬の顔に人型の姿。

 コボルトだ。


「大変です! 敵襲です!」

「なんだって!?」


 まさか、まさかもう。

 まさかもうポロニアが攻めてきたって言うのか!?





〜視点変更〜


 その少年も何かに導かれるようにここにたどり着いた時は、なんらかの理由で冒険者たちが建てたテント群かと思っていた。


 少年は人に対してむやみに刃を振るう事はない。

 少年は彼の定めた『悪』以外に興味などないからだ。

 ただ荒む一方の心を癒やす水と食糧を求めようとそう思っただけだ。


 近づき、現れたのは魔物だった。

 1匹2匹ならば家畜かもしれない。

 しかし次々とこちらに顔を見せた全員が魔物だった。


 少年はあまりにも冷えた目で目の前のテントの群れを見つめていた。

 冷酷に獲物を見定める目へと変わったのだ。





 僅かな間だった。

 少年の背から抜かれた剣が振るわれた時に周りに立つ魔物は全て切り刻まれ立つものはいない。

 同時に誰も死んではいない。


「魔物が人の真似事など面白い、が。弱すぎる……経験を積ませろ」


 少年にとっての『悪』を(たお)すためには力が必要だった。

 犯罪を侵さず早く鍛えるには、命がけで戦うのが良い。

 魔物を殺すことは禁止されているこの国でも殺さなければ魔物を攻撃しても問題ないとされている。


 だから少年にとっては殺さなければ魔物とはただの経験値(エサ)なのだ。


「とりあえず……掃討するか」





〜視点戻し〜


 すぐにドラーグと共に駆け出す。

 魔物たちが一斉に走り込んでいるので目指すべき方向はすぐにわかった。

 これがニンゲンならば逃げてきているのだろうが……


「いくぞ! あっちだ!」

「囲め! かなり強力な使い手らしいぞ!」

「進ませるな! 死者は出ていないらしいが油断するな!!」

「倒せ!!」


 とまあ血気盛んに噂を聞いた魔物から突撃していっているからだ。

 魔物のいくらかは縄張り内に入り込めば迎撃モードに移る。

 ここが生きる場所と決めたのなら相手を追い出すというのが一般的な思考。


「ど、ど、どうしまょうローズ様!?」

「落ち着いて、とりあえずドラーグはジャグナーを探してきて迎撃準備を!」

「わ、わかりました!」


 そういうとドラーグは近場の影に潜り込む。

 姿が影の中に溶けて消えたがすぐにどこかに探しに行ってくれたのだろう。


「コボルトさんは負傷者の手当を! なるべく私が救出してきます!」

「あ、あわわ、わかりました!」


 そう言ってすぐに駆け出す。

 全力で走るのはいつぶりか。

 それにしてもおかしい……

 ポロニアだとしたらあの巨大な気配がまるで感じられない。


 コボルトのときのように小さい者がひっそりとやってきたかのようだ。

 そしてそれが害意あるものだった……そういうパターン。

 もしポロニアじゃなかったとしてもそれはそれで厄介だ。

 とにかく今は急げ!

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