八百四十二生目 贈与
質の良い両手剣が出来た。
後は成長させるために銘を刻印しなくては。
鎧の方も剣よりはうまくできなかったがどんどんやっていこう。
結局身軽さと動きやすさそれに頑丈さを重視して魔法鎧を全体に構成させるタイプの防具にした。
こっちの付与も各々あるが剣のように3つついたりはしてない。
粉は使ったのでレジェンドレア確定ピックアップガチャではあったけれど。
ここらの武装は売らないように言ってあるのでちゃんとある。
にしても剣の柔軟流変とかいうの……
あれってユニーク能力だよなあ。
私の武器剣ゼロエネミーには別の方法で付与の特性がある。
それは武器自体が特別ゆえのユニーク能力なのだ。
本来はユニーク能力というものは特別な武器に自然と発生するもの。
しかし今回とんでもない確率でユニーク能力が付与された……
ちなみに銃ビーストセージはあくまで量産型のためとんでもないユニーク能力そのものはない。
ただしっかりと能力強化があるので分かれたりくっついて変化したりするのだが。
ユニーク能力が吉と出るか凶と出るかは不明だ。
"観察"してもまたふわっとした言葉しか出てこないし。
これは使用者に任せるとしよう。
「はい、ミア。これの名前を付けてくれない?」
「名前ですか?」
ミアは私から自然に受け取り剣を眺める。
よしよし。
少し考えながら剣を眺めているようだ。
「うーん、すごくさわり心地の良い剣なんですね……ひんやりしているのにあたたかい、これは樹木のぬくもり……あっ、花も咲いているんですね。これ、斬れるのかな……色は鮮やかな青の花と、緑の葉っぱたち……そうですね、仮になんですけれど」
そう話して花に手をそっと添えて。
「蒼き翠の花、というのはどうでしょう?」
「蒼竜と翠竜だね、うんうん! いいと思う」
固有名詞を使っての言い回しだったのでよくわかる。
私は指を振ると魔力が走り仕込んであった魔法が発動する。
ここの国の言葉で蒼き翠の花と書かれる。
「わわっ!?」
「その武器は名を持ち、1つの個体になった」
周囲からおおっ! と歓声が上がる。
どうやら他のまだ売れていない武具を見ている組がこっちに注目していたようだ。
「ひとつの……個体?」
「名を呼んであげて。きっと答えてくれる」
「ええっと……蒼き翠の花! わっ!? 声が……ええっ!? 貴方なの!? わ、わたしが主人? どういう……」
「剣の意思はマスターにしか聞こえていないよ。多分ミアさん自身の声を脳内で使っているはずだから、似た声だとは思うけれど」
「うえっ!? そうなんですか!? ……はい……はい……えっ、はい。どうしましょう。わたし、マスターに、なってしまいました……」
「大丈夫、それはミアさんにつくるために打ったものだから!」
ミアさんはさっきからびっくりしっぱなしでアタフタしていたが……
私のひとことを聞いてさらに顔がすごいことになった。
周囲はざわざわとあの剣に関して話し始めている。
「えっ、ええーー!!」
剣は剣の希望で蒼き翠の花を普段は省略して話すこととなった。
戦闘中に呼びかけるには長いのと真名は力を使う時に大事とか云々カンヌン言っていたらしい。
真名か……ゼロエネミーはそう言えば『魔神剣』ゼロエネミーだったなぁ。
いつかは必要かもしれない。
今は蒼き翠の花の方だ。
「縮めてフラワーということで……それにしても、本当に良いのですか? こんなにかわいらしい剣をもらえて」
「うんうん、というより私がちゃんとした武具を身に着けて欲しいと思っているというか……危ないから」
「ほんとありがとうございます……! お礼は必ず!」
「ちゃんと生き残れるのが、1番のお礼ですよ!」
「……! わ、わかりました!」
武装一式を着込んでもらう。
随分雰囲気はらしくなった。
まあ魔法鎧による全身内部強化にこだわったせいで服装のちょっとした発展みたいにも見えるが。
ただこれのおかげて全身どこを斬られてもガード出来るのだからやはり便利だ。
物理的なガードがあるに越したことはないけれど……
彼女が鎧を着込んで動けるはずもなし。
私は残りもチャチャっと作り店側担当を請け負う。
ミアは新しい武具のつけ外しや試し振りに集中してもらった。
……そこで初めてまともにお客からここの話を聞いたんだけれど。
「いやあ、武具だけでもすごく質がいいねえ、ここで打ったって本当かい?」
「美しく派手なものが多くって良いねえ、どうも市販の多くは、彩色すらまともに気を配っていないものが多くて……え? 今なら色変更が出来る? 能力で……ほほお! ならば……」
「付与術とはまたなかなか豪勢ですなあ! 見た目も申し分なく……へぇ! ミスで盾に発光効果がついたから安いと! ふむ、この強さ使いようによっては……いえ! ぜひその値段で!」
なんだかすごいことになっていた。




