八百四十生目 失敗
光が広がっていく。
魔力の波が可視化されて可能性を掴んで行く。
よしこのままやれば発動出来るな。
必要なものは見えているが必要でないものもたくさん見えている。
まずは不要なものをランダムでいくつか弾く。
本が1つ光を失せる。
うーん残っているのはまだ多い。
当たりの輝きと大当たりの輝きたちと大量のハズレ。
指定した輝きの当たりを拡張する。
2つ目の本が光を無くす。
不要な輝きの受け入れを狭くする。
3つめの本が光を消した。
うーん何をするか……
どうすればいいか。
やるべきことはたくさんありやれることはあと1つ。
うーん……じゃあ結果予知するか。
実際にこれだと当てるわけではなく当たらない星の輝きを範囲で省く。
よしよし……当たりが1部消えたがハズレも半分ぐらい消えたぞ。
本の輝きが4つとも消える。
幾何学模様が内部に刻まれた石が輝き出す。
空中に漂う星の輝きたちが激しく動き回り……
どれかが選ばれだす。
そう。ガチャのお時間である。
最後は運頼み神頼み。
星の輝き付与術はそういえば外世界の神々が関与している……みたいなことが文献に書かれていたなあ。
それほどまでに難しくそして強力。
多くのものが夢のチケットを散らしていった。
一応今回私は4書でコントロールし効果的かつ効果の高い星の輝き付与石を使っている。
私の神力を除く総力を使っているのであまりにひどい目には合わないだろうけれど。
成功するかどうか別……!
この武器の容量は最初に作ったやつなのでショボい。
キラキラと何かが入り込んで……
できた。
[付与:踊りが器用になる]
はず……れ……!!
武器としてはハズレ!
今ハズレに滑り込んだよ! おかしくないですか!?
付与された剣はその込められた力によって美しく輝く。
踊りだけどね! あと輝くというか電球的発光してるよね!
仕方ない。見た目だけはきれいだから飾っとこう。
「わぁー! キレイな剣ですね! こんなふうになるんだ……これはどうするんですか?」
「冒険者がこんなにピカピカ輝く剣を持っていたらギャグになっちゃうけどね。だから、観賞用でよければ売ろうかなって。お客さん来たら、ちょっと売ってね……よいしょ」
値段とか性能とか話しながら店構えを作る。
自由広場とはいえやはりメインの使い方はみんなの体操か店。
面倒な仕組みは省かれていてやりやすいが定設置できないし営業時間も太陽があるうちまでと定まっているのが特徴だ。
ダンスが得意になると言った時の絶妙な顔と焦り汗がすごかった。
「なるほど……なるほど……きっと、うん、きっと……試しにわたしが持ってみますよ。それっ、ってええっ!? なにこれ、模擬の剣とぜんぜん違う、こんなに本物って持ちやすいんですか? 手に吸い付くというか、まるでわたしが大地と剣1体になったかのような、構えるだけで力が、あっしまった!」
何か喋りながら踊りだしたようだけれど残念ながら危険さえなければ私は星の付与術に集中するよー。
なにせ失敗は成功のために積まなきゃいけないことなのだから。
なんとなくで出来るほど私自身がまだこなれていない!
いくつか付与を行うごとに無心になってきた。
ガチャに欲を出してはならない……!
大丈夫だ。技術適用の順番や経験技術の向上はできてきている。
それとこれまではあくまで常識的な範囲の代物を使ってきた。
というかそうじゃないと在庫品を自由市場で捌ける値段の代物じゃなくなる。
まあ失敗品はガンガン費用割ることも多いんだけれど。
そもそもここの街はそこまで豊かじゃない。
当然物価もそこそこだ。
本当はアノニマルース競売場に投げ込んだほうが儲かるけれど儲けたいわけでもないしなあ……無駄になるのが嫌なだけで。
コツというより経験は積めたし法則や技術も見えてきた。
そろそろ本番に挑むところか。
本番では重い消耗品を使ってガチャに打ち勝つ!
「見てください! お客さんすごいですよ!」
「なんでだろう……」
そしてなぜか現在この場は盛況になっていた。
きっかけは剣の力でダンスしていたミアだとは思う。
注目を集め物珍しさからか商人っぽい相手に売れ……
気付いたらミアが素振りしている間に私が作り出来上がったその場で欲しい方にさばくようになっていった。
もはやこういう芸売り状態である。
あとどうしても武具としての失敗作……ようは付与滑るのついたハンマーや付与加重のついた短剣とか付与魔法威力増加のついた胸当てとかが安いのもある。
見た目はだいたい良いので実用以外に使われるのだろう。
芸術が強くなりつつ精密度が増すとかいうよくわからん細剣みたいなのは見た目が派手。
せっかくまあまあいい出来の武器だったのにまさかここまで外すとは……
結局失敗品クラスの値段で処分された。




