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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
狂った境界と踊る神々そして大きな賭け後編
1931/2401

八百三十八生目 鍛冶

 おはようございます私です。

 朝食メニューは素晴らしかった。

 野菜だ。野菜がめちゃくちゃうまいのだ。


 これは植物が強い世界特有なのだろう。

 味わい深く噛みごたえがありとても楽しめる料理たちだった。

 朱の大地とは方向性が違って良い。


 世の中には2つの場所がある。

 1つは野菜がまずいところ。

 もう1つは野菜が美味しいところ。


 つまりここは野菜が美味しいところ!

 野菜ゴロゴロー!


「朝からテンション高いですねー」


「ご飯がおいしかったからね!」


「そ、そこまでですか……?」


 どうやらこの食事はここらへんでは平均的なものだったらしくミアさんのテンションはおとなしい。

 こういうのは旅に来る者しかわからない。


 朝から兵たちのところに行くわけにはいかないので……というか話がまとまったら多分向こうから冒険者ギルドに来るのでこちらはやれることをやってみる。


「ふうむ、久々にやるぞう」


「えっと、これは? ハンマーと、台と……?」


「夜中のうちにやると騒がしすぎるから、やらなかった携帯型の簡易鍛冶セットだよ」


 現在アノニマルースで大売り出し中の便利道具だよ。

 アノニマルースでは売ってるけれどさすがに翠の大地ではまだ。

 というわけでデモンストレーションもかねて音を出してオッケーという広場にきた。


 既に広場ではガヤガヤと店が立ち並ぶ。

 さすがに街全体で見てここは1番の活気だ。

 物音も多く商売が活気。


 元々特別な申請がいらないとさらているだけある。


「え、ここで鍛冶をするんですか?」


「うん。その間は暇になるから、稽古の続きお願いね」


「は、はい!」


 まずは簡単なところから。

 もらえたトレントの古枝を加工していく。

 この魔法仕掛けの鍛冶台を使って……


 いやまあ本来は金属をやるところなんだけれど。

 この大陸では植物のほうが強い。

 郷に入れば郷に従ったほうが面白いだろう。


 魔力窯を私の魔力をブーストに使い一気に加熱させていく。

 うーん有機物なので燃えているね!

 本来ならもっと早く炭にでもなってそうだけれど赤熱しただけでそんな様子は見られない。


 カンカンと魔法鍛冶台が私に訴えかけてくるように打っていく。

 正確に打てるかは私の腕前と若干の運。

 いい感じになったらセットの1つで水を使い冷やす。


 ……できた。多分そこまでよくはないだろうけれどトレント枝のインゴット。

 インゴットってなんだよ。

 とにかくしっかり扱いやすい塊ができた。


 他の材料も買えている。お金は冒険者ギルドを通して現地通貨に両替した。

 この街でも良く武器や建材に使う鉄のような力を持つ木であるパンプ。

 頑丈さはパンプ以上だが加工しづらく同時に粘り強さが弱いオクの木。

 パンプよりも柔らかくあまり建材などに向かないが粘り強く持ちやすいため豊富に加工されちょっとしたもの……例えば安い硬貨に使われるセダの木。


 生木の状態ではまだまだ混ざりものが多く使いづらい。

 精錬作業を全部やる。

 ほんと金属みたいだ。しっかり有機物よろしく炎は灯るけれど。


 それに金属と質感が結構変わってきて打つのにコツが違う。

 これならまだ金属のほうが素直だ。

 ちなみにこの大陸の鉄っぽい金属は私の知っている鉄よりだいぶやわかったし精錬しようとすると崩れやすく難しかった。


 だからこっちでは切り落とし削ってと整えるらしい。

 なんという木のパワー。

 採れる場所はかわらないんだからちょっとした木の間伐ですら苦労しそうだ。


 金属がなぜこんなに変質しているものなのかはちょっと謎だが……

 少なくともエネルギー含有(がんゆう)量が他の大陸産のものと違う。

 それこそ木の……ただしい意味合いでの進化道筋が独特でたくさん蓄え強くなり蓄える分大地や金属からエネルギーを奪うような変化を遂げたのだろう。


 実は翠の大地は他の大地との交流点が薄すぎて『大きな孤島』や『小さな世界』というあだ名がある。

 つまるところ生態系や自然が独特すぎるのだ。

 

 奇妙な逆転現象に頭を悩まされつつハンマーを打ち据えていく。

 当たり前だがハンマーも台も金属だ。

 他からみたら木の加工に十分か不安かもしれない。


 まあ……見るものが見ればなかなか凄まじい代物なのはわかるんだろうけど。

 当たり前だが金属を加工する甲高い音は聴こえず代わりに木を叩くどこか通った音が鳴り響く。

 あと模造の両手剣を振るい想像でまもりとひとり稽古しているミアさん。


 はたから見たら完全に謎のふたり組である。

 まあしゃあない。

 インゴットならぬ精錬塊がたくさんできたあたりで一旦手を止める。


「ふぅ〜……」


 私ひとりの動作では揺れない広場の活気。

 やっと街らしさを味わえるこの空気に吹き抜けていく風が鍛冶で熱くなった肌をなでて心地よくなった。

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