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百八十八生目 炭化

 コボルトと話しこの群れの問題を見つけコボルトには魔法以外の医療も今後学んでもらうことで話がついた。

 小さな魔物の街で揃えてきた医療セットを一通り使い方を覚えてもらうため少しずつ学んで行くということでその日は終えて別れ……


 私はひっくり返っていた。

 疲れたんだよ〜!

 もう凄く疲れたよ〜!


 "鷹目"で見る私はもはや魂がもぬけの殻といった様子。

 こうやってちょっとの間全部忘れるかのように倒れていないとやってられない。


 ……

 …………

 ……。……。





 っはぁ!

 息を忘れる所だった!

 どれだけぼうっとしていたかわからないが思わず真っ白になることに集中しすぎた。


 "四耐性"のおかげで睡眠への耐性がついたのとおそらくトランスしたことでの変化で私の睡眠時間は大幅に減った。

 なんと一日の半分眠っていればバリバリ動ける。

 前は4分の3寝ていないとどんどん体調に支障が出て寿命を削っていたのでずいぶんな進歩だ。


 ただまあ……それでも12時間ほど寝なくちゃならないってことでもある。

 今は群れ内外の問題が多すぎて5秒寝れば全回復する身体になりたい。

 あまりにも同時進行が多すぎる。


 細かい所は数え切れないので省いても、食糧、上下水道と衛生、癒やし手、魔獣ポロニア、金銭導入と群れ全体の資金稼ぎで他文化から高度文化品輸入、侵入対策、受け入れ対策、エトセトラ……


「キュワアアアアッ!」


 思わず叫んでしまった。

 深い意味なんて無くてあるとすれば山積み問題に潰される悲鳴だ。

 もう……


「主!? 大丈夫ですか!?」

「あ……いや大丈夫、何でもないから」

「そ、そうですか……」


 そしてアヅキがガントレットを身に着けつつ乗り込んできた。

 うん大丈夫敵襲ではないから。





 定期的にみんなから話を聞き、足りない所に回すお仕事をこなす。

 そして火山や外界への素材集め依頼は私の魔法がないと現状遠すぎる。

 依頼を受けてくれたみんなをそうして送り出したり迎えたりする。


 手に入れた素材を九尾家に運び込む。

 九尾家では素材待ち状態の骸骨たちがやってくれば一斉に作業にとりかかってくれる。

 すでに九尾家にある素材の在庫は底をつきていた。


 出来た受信機を受け取って今度は私達の群れへ運ぶ。

 優先的に狩りや依頼をこなすものに支給されていった。

 この受信機の特徴は一度つけたら基本外さないという点だ。


 外さないと不衛生になったり圧迫されたりが不安だがそこらへんは魔法技術で手を打ってあるそうだ。

 魔力をこめればキレイになる魔法が発動する。

 さらに適度にサイズが調整されて血液が滞るのを防いでいるのだとか。


 そうして少しずつ蓄積される思考脳内向上効果と言語学習により最大限の力が発揮される。

 だから寝ている時も外してはならないそうだ。

 つけたり外したりは効率が悪化する。


 逆に言ってしまえば万能翻訳機のように使いまわしは出来ない。

 つければ本人登録が終わり受信機から本体へデータが送られる。

 個体ごとに最適な状態をお届けするために別の個体がつけても無効化されてしまう。


 様々な制限がありその分簡易に作ってあるため骸骨たちで量産出来る。

 複雑な部分は本体、さらにはその本体を調整する九尾に任されるわけだ。

 たまに顔を見せるがいつも忙しそうでなおかつ『生きてる!』って顔をしている。


 発明家の血が騒ぐというやつなのだろうか。

 この世界は何でも経験としてレベルが上昇する手助けになるから九尾は研究と開発でどんどん経験を積んでいそうだ。





「ローズお姉ちゃん! ほら、炭出来たよ!」


 忙しく過ぎる日々の中でハックに呼ばれてついていった先で見せてもらったのは前の群れにいた時と同じ様な炭だった。

 森の迷宮で迷宮に満ちた力を良く吸い込んだ魔木たちを炭にしたものだ。


「おお、ついにここまで出来たんだね! おめでとう!」

「これで調理も捗る。さすが主の弟様だ」

「えへへ」


 アヅキも料理に関係があるということで一緒についてきて誉めていた。

 スーっと息を吸い込めば故郷のかおりもする。

 てれて喜ぶインカはむしろオスだからこそキュート。


「いやあ……はは」

「どうしたの?」


 対して手伝ってくれた妖精たちは浮かない様子。

 ハックがいつもは活発な子に尋ねた。


「いやあ……なんだか自分の身体がそうなるのを想像しちゃって……」

「ああ。ごめん、配慮が足りなかったね」

「いえ、別にそこまでは! ただ思ったよりびっくりするものになったなぁと思いまして……」


 私が謝るとおとなしい方が否定する。

 他にも手伝ってくれた多くの妖精たちは苦笑いを浮かべていた。

 炭がどういうものか知らなかったんだろうなぁ。


 妖精たちは植物の魔物だ。

 木は別の存在だと割り切れてもどこかで近しいものを感じていただろう。

 私たちに例えるなら、全然知らないイノシシみたいな魔物が屠殺(とさつ)されバラされ良く加工されて最終的にハンバーグが出て来るまでをずっと見た感覚だろうか。

 もちろん、事前にハンバーグというものを知らずに。


 まあだからというわけでもないが、すでに彼らも持ち直していた。

 元の笑顔に戻り再び作業に戻りだす。

 この頑丈な土地を使って今度は石窯作りだ。

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