八百二十八生目 寒街
軽く考えただけでも頭痛がしそうな治安の悪さ。
それがこの地方にまん延していた。
地方だよね? 国単位や大陸単位だとさすがに泣くよ?
「止まれ、その……集団でなんなんだ? 拘束しているようだが」
街に入ろうとしたところで衛兵に止められた。
さすがにゾロゾロと連れ歩いていりゃあね。
「私の目的は、彼らの警備への突き出しで、彼女が被害者、罪状は強盗と拉致監禁、殺傷は行っていないそうです」
「攫われました……」
ミアが後ろの彼らを見る目が完全に生活圏にあるフンを見る目になっている。
フンたちはその眼差しを受けて冷や汗を流しながらヘラヘラと笑顔を浮かべていた。
自業自得。
「なるほど……?」
「どうする? こんなケース初めてなんだが……」
「いやあわからん。上に規定を確認してもらうか……」
ひとりの衛兵が街の中へ駆けていく。
少しすると戻ってきて誘導の元中へ入れてくれた。
付いてこいとしか言われていない。
ゾロゾロとついていけば当然中の様子がうかがえる。
こういってはなんだが……凄いのにしょっぱいというのが同時に来る感想だ。
異国の地にて植物と金属の価値観逆転に近いものを見せられたがかの街でもやはりそうだ。
たくさんの金属たちがふんだんに使われ他の大陸ではありえないような金属建物たちが溢れている。
コンクリートならまだ見たことあるけれど金属建物は斬新だなあ……
木が金属の補強として使われていて違和感が凄い。
そして……それらがズタボロでどこか小汚く小さいものが引き締めあって壁も小さければしょっぱさというのもわかるだろう。
金属だから手入れしてなかったり加工があまいとちゃんと目立つ。
木製でも目立つけれどこっちはこっちで金属光沢ゼロの風景を見せられると複雑な気分になった。
代わりに木材はだいたいすごい。
頑丈にあり続けるもの。
なんだか艷やかなもの。
魔力が明らかに籠もっているものとあるだけで目立つ。
「うわぁ……! いつ来ても、ここは凄いですねえ!」
「そ、そう? というより、ミアさんは来たことがあるんだ」
「もちろん! お仕事のついでに、遊びに来たことがあります」
まあ……確かに寒村よりかは……いかにもミチミチに建物が壁の中に詰まってて街! ってアピールはしてある。
私の目が肥えているのが悪いなうんうん。
「ここだ、ここで止まれ」
連れてこられたのは少し広い空間だ。
たくさんの兵がいるから詰所付近ってことかな。
「では、手続きお願いしますね。事情聴取の間に、彼らの逮捕手続きもお願いします」
「あ、ああ……なんでキミのほうが詳しいんだ」
「まあ、慣れはありますよ、慣れは」
冒険者は人型の魔物を相手にする時が1番儲かるという話がある。
これはもちろんブラックなジョークだ。
2足歩行の魔物は強大という意味だけではなく賊を狩ると儲かるという話も含まれる。
拘束を変えようとしてしっかり手錠縛られていて困惑している。
取替作業は危険だから手伝おう……
私はミアさんと別室で座らされた。
当然っちゃ当然である。
全員身元不明なので。
「こんにちは」
「ああ」
「そういえば、あなたたちは領主様の兵ではない……であってるんですよね?」
「ん? そうか、外の者か。我々は大枠では領主様の部隊だ。しかし、領主様の私兵ではない。領主様から管理を任されている者が、市長を指名、その市長が選抜した警備や兵の担当が我々の隊だ」
なるほどなるほど親切だ。
親切だなと思ったら自身の隊のマークらしいものを強く叩いていた。
誇りなのね。
「良いですね!」
「褒めたって優遇はないぞ、袖の下で乱せるような相手と思ってもらうのは困るからな。では、まずは貴女のことからだ。身分証は?」
「これです」
私が冒険者証を見せると凄い訝しげな顔をされ……
あっ!
「……すみません、冒険者証なので、表示機に通して貰えれば」
「なるほど、すまんな……一切読めん」
そりゃそうである。
この国では1回も発行してもらっていない。
つまり言語は全部皇国語だ。
冒険者証を美しい宝石のような魔道具に通す。
薄ぼんやりと輝いたあと……
情報が彼の方に表示された。
偽装が出来ない内部の情報が。
「さて……何? は?」
兵は口をあんぐり開け固まってかまった。
そしてこちらをちらりと見てまた文面を戻す。
……?
確かに私は冒険者としてはまあ名が売れている方だ。
しかしあくまで一般的な表示する魔道具では冒険者のランクという外から見たらふわっとした何かしかわからない。
まあ信頼できそうだな〜と思われるぐらいだ。
ギルド員が驚いたりギルドの道具でさらに細かく見た際の伏せデータに各国の印があったりとそこらへんでは驚かれるかもしれないがギルドのニンゲンたちは偉いしそんなに……
まさか。
「え……英傑様……!?」




